生後24時間以内の赤ちゃんの死を虐待死というには違和感がある

　先般、厚労省が公表した、幼児虐待に関する調査結果について、その分析には非常に違和感があるものでした。
「虐待死:１１１人が生後１カ月未満　０３年から１３年」（毎日新聞2014年9月19日）
「＜虐待死＞生後２４時間内９４人…望まない妊娠や経済的問題」（毎日新聞2014年9月19日）

　要はここでいう虐待死が一番、集中しているのが、産後まもなくの赤ちゃんであり、その赤ちゃんを産んだ未成年の母親が殺したというものです。
　厚労省の分析は、前掲記事では、「厚労省は、生まれて間もない子供は暴力などの影響が大きく出る▽出産を前向きに受け止められない母親は周囲の支援を受けようと思えないまま孤立する−−などが乳児の虐待死が多い要因とみている。」というものです。

　しかし、これを虐待死とひとくくりにしてしまうのは、私は乱暴ではないかと思います。
　このような事情の中で推測されるのは、①出産までの間、産婦人科医の診察も受けていない、②その子の父親である男とは、とうの昔に縁が切れている。③未成年でありながら、親も含め相談相手がいない、という状況です。
　本来であれば中絶すべき状況であり、その未成年であったその母親もそうしたかったはずです。
　しかし、現実には妊娠してしまったことを誰にも相談できないまま、中絶可能な期間も経過し、しかも経済的にも中絶費用を捻出することも厳しかったものと思われます。
　もともと、母親になるだけの覚悟がないといえば当然のことで、相手の男も父親になるだけの覚悟など微塵もないものです。
　仮に、これで妊娠したからという理由だけで入籍するのが「できちゃった婚」ということになるわけですが、親になる覚悟はおろか結婚する覚悟すらない場合ですから、ほぼ夫婦関係は破綻します。
　それはともかくとして、男にも父親になる覚悟はない場合、ほぼすべて未成年の女の子だけにしわ寄せがいくことになります。
　周囲も妊娠に気づかないことも多いとも言われているようであり、未成年でありながら、周囲に誰にも相談できず、孤独と不安の中に追い込まれていたのではないか、そんなふうに思うわけです。

　産み落とした24時間以内の虐待死ですが、刑法上は殺人罪ないしは保護責任者遺棄致死罪に問われることになりますが、殺人罪に問われる場合であっても量刑自体は、堕胎罪の量刑との均衡が言われています。出産の前後で大きな違いがあるとはいえないからです。その意味では量刑上も、通常の幼児虐待におけるような殺人、傷害致死の場合とは質的に異なっているともいえます。

　従って、このような生まれたばかりの赤ちゃんに対するものと、物心ついた幼児に対する虐待と同列視してみても意味があるとは思えません。
　未成年者の妊娠、出産については、別途、教育の中で検討していかなければならないもの、あるいは産婦人科医に気軽にかかれるだけの医療体制を作ることだし、そこには中絶も含めるべきでしょう。この未成年の母親による虐待死は、多分に中絶の方法をどのようにして確保するのかという問題だからです。
　未成年者が費用の面だけで望まない出産を強いられること自体は、何としても回避させてあげたいものです。
　あるいは根本的に望まない性行為だったのかもしれません。そこには相手が避妊に協力しない場合も含まれます。
　私にはまだ未成年という人生経験も未熟な状況の中で、非常に大きな孤独と不安の中で過ごしてきたことが憐れでなりません。

　これは虐待死という範ちゅうに含めることは、実態に合わないばかりか、より一層、この未成年であった子を追い詰めはしないでしょうか。
　その子にも足りない部分はあるだろうけれど、幼児に対する虐待と同レベルで考えるべき問題ではなく、もっともっと配慮があって然るべき問題といえ、厚労省の発想では、なお一層、追い詰めていくだけになることを危惧するものです。


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