引退を表明した上田市長 あなたがオリンピック招致を言うべきではありません

　上田文雄札幌市長は、4選不出馬を表明、来年4月には退任となります。
　しかし、不可解なのは、その退任表明後に札幌オリンピック招致を「決断」したことです。
　以前より上田市長は、 札幌オリンピック招致をやりたがっていました。
「札幌市長ご乱心！　札幌にオリンピック招致!?」
「札幌オリンピック招致に異議あり！　カネの無駄遣いにしかならないことは止めるべき」

　私は、そのときは上田市長は4選を目指すために財界の機嫌取りをしているものとばかり思っていました。冬季オリンピックの再招致は、上田市長が市長になった頃からの夢だったそうですが、最近になって言い出したのは選挙目当てにしか見えなかったからです。
　しかし、4選不出馬を表明しました。
　猪瀬前東京都知事のように、自分が目立ちたくてしょうがない人とは違ったという意味ではよいのですが、ならば何故、今、自分が退任することを決めた後に招致決断表明なのでしょうか。
　昨年の北海道新聞による世論調査でも札幌市民の賛否は賛成が上回るものの、圧倒的な支持があったとは言えない状況でした。
　「冬季五輪招致　札幌市民の賛成64％　巨額の不要負担に懸念も」（2013年12月3日）
　「北海道新聞社が11月30日と12月1日に実施した全道世論調査のうち、札幌市が検討する冬季五輪招致についての札幌市内の賛成は全道平均の69％を下回り、全道６地区別で最低の64％となった。上田文雄市長は招致について「市民論議を踏まえて検討する」として来年度中にも決断する意向だが、慎重な判断が求められそうだ。」

　昨年からどのような議論がなされたのかは、目に見える形ではよくわからいのですが、とにかく上田市長は「決断」してしまいました。
　少なくない反対意見をどのように考慮したのかが問われます。

　このようなオリンピック招致というこことになると、大宣伝されるのが「経済効果」です。
　このような宣伝の前に、反対という声が掻き消される、あるいは声に出させないという状況が出現します。賛否に迷っていた人たちを、消極賛成（要は反対しないという程度）にまで引き込む手段でもあるのが「経済効果」というフレーズなのです。
　「経済効果」とか「波及効果」という言葉だけが独り歩きし、それによって、いかにも札幌市民の一人一人に恩恵があるかのような印象が振りまかれます。実際には、「経済効果」とはカネが動くだけのことに過ぎませんから、そもそもこれによって生産性が上がるというものではないのです。
　そして、それがマスコミによって振りまかれれば、輿論誘導などいかにもたやすく行えることになります。
　東京オリンピック招致は、まさに反対する者は非国民のような扱いでした。
「東京オリンピックに賛成しないのは非国民！」
　国威発揚のために利用されるオリンピックならでは現象です。

　実際にオリンピック招致に成功したとして、オリンピックが札幌で開催されたとしても、その「経済効果」なるものがどの程度の検証できるのかは不透明です。
　結局は、どれだけの外国人が札幌に来たのかとか、その程度のものです。
　経済効果と言う場合の青写真は、企業が増収となり、そこから法人税等の納税額が増える、ということがまことしやかに言われますが、現実には札幌市の財政支出を上回る税収等があるはずもなく、結局はどのように赤字を補填していくのかということにならざるを得ないでしょう。
　しかも、日本社会は、そのような「赤字」になっても誰も責任を負わないというのが特徴です。
　今、盛んに煽られている「経済効果」という言葉には、この責任の文字は含まれません。

　札幌オリンピック招致の是非は、来年4月の選挙の争点になることはないでしょう。個々の札幌市民の反対の声は相当数、あると思いますが、財界や労働界のような組織だったところはこぞって賛成に回るでしょうから、こういった市民レベルの声は本当に政治に届きにくい、届かないということになります。
　今、立候補を予定している上田市長の後継とされる秋元克広副市長、前回、落選した本間奈々氏は、いずれも招致の立場をとるものと思われます。
　札幌オリンピック招致反対の有権者の声が選挙の中で表明できない、されないことになります。

ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ