柔道による死亡事故がゼロ？ だから武道必修化が問題なしとなるのだろうか。

　2012年4月から武道必修化が始まり、ほとんどの中学校で柔道が選択されていると言われています。
　この事実上の柔道必修化には、死亡事故に繋がるという多くの懸念が示されていました。
「武道必修化は愚策そのもの」
「授業の柔道で死亡したり、後遺症が残ったときの責任」

　武道必修化から2年以上が経過しましたが、今日まで死亡事故はゼロ件ということのようです。
　この内田良先生のブログで知りました。
「柔道事故　死亡ゼロが続いていた――マスコミが報じない柔道事故問題「改善」の事実」
「柔道の死亡　なぜ減ったのか――「頭部外傷」への関心が重大事故防止のカナメ」

　何故、マスコミが報じないのかという視点にはにわかに賛同しがたいのですが、それはさておくとして、今、現時点でゼロだからいいのだろうかという疑問がすぐに沸いてきます。
　内田先生は、その分析として頭部外傷への対策を挙げています。
　内田先生の分析は、「死亡事故が減った最大の理由は、死亡の原因が「頭部外傷」にあることが柔道指導者に認知され、頭部外傷に重点を置いた対策が徹底してとられたこと」とあります。
　しかし、内田先生のブログからは、どのような対策がとられてきたのか、わかりません。

　諸外国の柔道で死亡事故がまずない状態の中で、日本だけが突出していたということになれば、根本的なところの指導がなっていないということにならざるをえなくなります。
　問題になるのは、学校の中でこのような対策が徹底されていたのかということと、その徹底した結果、事故が防がれているということでなければ、そもそも指導方法の改善の問題とはいえず、単に偶然、死亡事故がゼロだったということともいえます。
　確かにマスコミ報道により柔道の死亡事故が社会問題化したことにより、多少の緊張感が現場の体育教師にも伝わったことも、結果改善の理由の１つとしてはあるのかもしれません。

　しかし、問題は死亡事故だけではありません。死亡に至らない事故も問題です。
「武道必修化の１年　道内骨折10人は少ない？」
　骨折事故のようなものは当然に起きています。体育の授業の中で起きた事故件数としては、決して少なくないのではないでしょうか。
　それが骨折で済んだから良かったようなものの、そうでなければどうするのでしょう。
　「大丈夫、最悪でも死には至らないから！」
ということでよいはずがありません。
　特に体育の授業での必修化は部活動と違って強制です。
　やる気にならない生徒がいることは当然の前提です。その点は部活動のように自発的にやりたいという生徒が集まる場とは根本的に場面を異にします。
　実際には柔道もどきのダンスを踊って時間をやり過ごす生徒もいるでしょうし、逆にこのような緊張感のなさが大けがを招くかもしれません。
　死亡事故ゼロ＝武道必修化とはならず、所詮、体育の授業で必修としてやらせることにムリがあるのです。

　武道必修化そのものは精神鍛錬的なものであり、安倍総理（第1次安倍内閣のときに導入された）が大好きな精神論でしかないのですから、必修化して行う意味は最初からないのです。
　それこそ取り返しのつかない大事故が起きる前に武道の必修など止めるべきでしょう。
　武道は、スポーツの中でも特殊なものであり、これを個別の生徒たちが思想的、感情的に嫌っても当然だし、それを授業の中で必修化すること自体が愚策なのです。
　他のスポーツを楽しむということで何故、いけないのでしょうか。


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