本日、法曹人口の在り方検討結果について政府案が示されました。
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それにしても意味が分かりづらい文章です。
要約してみると、
①この間、1800人ないし2100人の年間司法試験合格者を輩出してきたが、その多くが社会の中で法的需要に対応した活動の場を得ている。
②他方で、法的需要は、社会的・経済的な外的諸事情によって流動的な要素もある。
③法曹志望者が減少している。
という元では、司法試験の合格者数を1500人程度までに縮小する事態も想定せざるを得ない。
といいながら、「しかし」で続けます。
①全国に法の支配を実現するという理念の下で、法曹の活動領域の拡大やアクセスの容易化が必要だ。
②直近(昨年度)でも1800人の合格者が輩出されている。
という現状のもとでは1500人に規模が縮小したとしても社会の需要に応えるためにさらに多くの法曹が輩出できるようにすべきだ。
但し、法曹の質の確保を考慮せず達せられるべきものではないことに留意する。
以上がこの取りまとめの骨子になります。
さて、ここで言いたいことを分析しますと、背景にあるのが司法試験合格者のレベルの低下です。この取りまとめでは、水準は維持されているように書かれていますが、少なくとも前年比では200人の減員せざるを得なかったこと(「直近でも1800人の有為な人材が輩出」と表現)があるように思います。
そうすると、読み方としては、最後のところの「法曹の質の確保を考慮せず達せられるべきものではないことに留意する」というのは、1500人を達成するにあたっても、この質を考慮せずに達せられるべきではないと読むべきものなのかどうかです。
何故、一読してわかる文章にしないのか不思議ですが、それはさておき、こうみると、従前の厳格な基準で司法試験の合否を判定した場合、1500人程度が達せられなくても仕方ないという趣旨にも読みます。
それが「1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を勧め、更にはこれにとどまることなく」からつながっているのかどうかですが、やはりわかりづらい文章です。
朝日新聞の見出しは、「司法試験合格者「1500人程度を維持」政府案」
日経 「司法試験合格 年1500人に 政府案、当初目標から半減」
北海道新聞 「司法試験合格1500人目標」
この理解は、目標というのは下げる目標ではなく、到達の意味での目標と理解するのが素直でしょうから、そうであれば私の理解も同じです。
といいながら、いきなり司法試験の合格者数が1500人以下になるとも思えません。
議事録がまだ公開されていないために、この提案の意味がよくわかりません。
議事を傍聴している日弁連執行部の声明はこのようなものです。
「
法曹養成制度改革推進室作成の法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)に関する会長声明」
全体としては、法的需要が未だ顕在化していないものであるにも関わらず、それがあると強弁していること、増員の理念は間違っていないなどと未だに司法審意見書の路線に固執していること、法科大学院制度を守るべく、「引き続き法科大学院を中核とする法曹養成制度の改革を推進する」とあり、そのための司法試験合格者数を1800人は確保したいというように読み取れます。
さて、今年9月に合格発表ではどのくらいの人数になっているのでしょうか。
続編です。
「
全く逆の見方 司法試験合格者数の政府目標は1500人? いえいえ1500人にまで減少させるな!」
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