全く逆の見方 司法試験合格者数の政府目標は1500人? いえいえ1500人にまで減少させるな!
- 2015/05/22
- 23:06
先日、法曹養成制度顧問会議に司法試験合格者数の政府案が提示されました。
その文章自体、非常にわかりにくいものであり、どのように理解したらよいのか、非常に苦しむものです。
先日の私の感想です。
「法曹人口の在り方についての検討結果 法科大学院制度を守るためだけの数合わせ?」
マスコミの報道の仕方は、「政府目標1500人」という書き方が多く、このような書き方をされると、1500人にどうやったら質を落とさずに近づくことができるのかという意味に理解していました。
私自身もそうなのかなという読み方をしました。
しかし、ある弁護士より全く逆の意味だというご指摘がありました。この取りまとめは、①これはさらに弁護士増員をはかるものだ、②しかし、このままでは1500人を切ってしまうという危機感を示しただけだ、③これまで輩出した法曹はすべて問題がなく、今後も増加させても問題はないがただ質への留意は必要だという程度のものだ、
というものです。
この取りまとめは趣旨が記載されていません。
従前の司法審意見書のように3000人を目標とすると明示されているものとは全く異なる体裁です。明らかに、わかりづらくしているのが特徴です。
当初、3000人を目標とされたことはよくわかります。当時は1000人程度の司法試験合格者数でしたから、増やすという以上はその目標値を上げたということです。しかし、これが先般、全く非現実的なものということから撤回されました。
実際にも2100人まで増加させた合格者数も昨年度は1810人にまで減少しました。一度も3000人に到達したことはありませんでした。
目標という言葉が使われたこと、それが撤回された意味もよくわかります。
では1500人目標とは?
そもそも1500人目標という言葉を使ったのはマスコミ報道で、取りまとめには「目標」の文字はありません。
しかも旧司法試験制度のもとで、既に1500人まで合格者数を増大させていました。
少なくとも現状では、1500人を超えているのです。
このままでは1500人を切るのではないかという危機感は、その取りまとめの中で表明されていますが、現状では1500人まで減少してしまう事態も想定せざるを得ない、しかし、目標とするところは、あくまで増加させることある、法曹需要はまだまだあるんだというのが取りまとめの趣旨だというのです。
要は、1500人にまで後退させるな、というところでしょうか。
なるほど、確かに、この取りまとめが出される前提として法曹需要に関する調査報告が出されていましたが、その調査報告では、まだまだ法曹需要があるんだという、しかも根拠とも言えない根拠でもってまとめたものですが、そのような意図的な調査報告書を法務省がまとめたことから、一定、増員を示す取りまとめが出されるのではないかと予想していました。間違っても1500人という数字は出てこないと予測していました。
しかし、報道では「1500人目標」??
少々、驚きました。
とはいえ、よくよく読んでみれば確かに1500人にまで減らすとは書かれていません。
しかも、これまで輩出してきた法曹の質には全く問題がないということを前提にしています。
危機感の根拠は、どこからくるのか、今年の法科大学院の実入学者数は2200人であり、減少傾向に歯止めは掛かっていません。実入学者数が1500人を切ることも現実的なことです。
そこまで減少しなくとも競争原理は全く働くなくなりますが、受験者全員合格ということにもなりかねません。ただ、法科大学院制度を推進する人たちは、それでも問題ないという立場です。
法科大学院においては、共通到達度確認試験(仮称)を導入し、その修了者の質を確保させる、だから司法試験も落とす試験ではなく試す試験で足りるという発想があるからです。
(共通到達度確認試験の導入は法科大学院関係者にとっては想定外でしたが、あまりに法科大学院間格差が広がってしまっためにやむなく導入するものです)
もともと法科大学院課程修了者の7~8割を司法試験に合格させる構想でしたから全員合格はむしろ望むところでしょう。
この取りまとめについての説明は、顧問会議でなされているはずですが、議事録が公開されていませんので確定的なものはわかりません。
とはいえ、ここまでわかりにくい文章にしているという趣旨はどこにあるのかということを考えると、やはり法科大学院制度を守り、さらに増員させたということにあるのかということを隠したいからということになります。
その趣旨は、日弁連が1500人という数字に共鳴したように、呉越同舟を狙ったものだからでしょうか。
今後、この取りまとめ案をもとに検討がなされれますが、顧問会議での議論状況等、注視しなければなりません。
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その文章自体、非常にわかりにくいものであり、どのように理解したらよいのか、非常に苦しむものです。
先日の私の感想です。
「法曹人口の在り方についての検討結果 法科大学院制度を守るためだけの数合わせ?」
マスコミの報道の仕方は、「政府目標1500人」という書き方が多く、このような書き方をされると、1500人にどうやったら質を落とさずに近づくことができるのかという意味に理解していました。
私自身もそうなのかなという読み方をしました。
しかし、ある弁護士より全く逆の意味だというご指摘がありました。この取りまとめは、①これはさらに弁護士増員をはかるものだ、②しかし、このままでは1500人を切ってしまうという危機感を示しただけだ、③これまで輩出した法曹はすべて問題がなく、今後も増加させても問題はないがただ質への留意は必要だという程度のものだ、
というものです。
この取りまとめは趣旨が記載されていません。
従前の司法審意見書のように3000人を目標とすると明示されているものとは全く異なる体裁です。明らかに、わかりづらくしているのが特徴です。
当初、3000人を目標とされたことはよくわかります。当時は1000人程度の司法試験合格者数でしたから、増やすという以上はその目標値を上げたということです。しかし、これが先般、全く非現実的なものということから撤回されました。
実際にも2100人まで増加させた合格者数も昨年度は1810人にまで減少しました。一度も3000人に到達したことはありませんでした。
目標という言葉が使われたこと、それが撤回された意味もよくわかります。
では1500人目標とは?
そもそも1500人目標という言葉を使ったのはマスコミ報道で、取りまとめには「目標」の文字はありません。
しかも旧司法試験制度のもとで、既に1500人まで合格者数を増大させていました。
少なくとも現状では、1500人を超えているのです。
このままでは1500人を切るのではないかという危機感は、その取りまとめの中で表明されていますが、現状では1500人まで減少してしまう事態も想定せざるを得ない、しかし、目標とするところは、あくまで増加させることある、法曹需要はまだまだあるんだというのが取りまとめの趣旨だというのです。
要は、1500人にまで後退させるな、というところでしょうか。
なるほど、確かに、この取りまとめが出される前提として法曹需要に関する調査報告が出されていましたが、その調査報告では、まだまだ法曹需要があるんだという、しかも根拠とも言えない根拠でもってまとめたものですが、そのような意図的な調査報告書を法務省がまとめたことから、一定、増員を示す取りまとめが出されるのではないかと予想していました。間違っても1500人という数字は出てこないと予測していました。
しかし、報道では「1500人目標」??
少々、驚きました。
とはいえ、よくよく読んでみれば確かに1500人にまで減らすとは書かれていません。
しかも、これまで輩出してきた法曹の質には全く問題がないということを前提にしています。
危機感の根拠は、どこからくるのか、今年の法科大学院の実入学者数は2200人であり、減少傾向に歯止めは掛かっていません。実入学者数が1500人を切ることも現実的なことです。
そこまで減少しなくとも競争原理は全く働くなくなりますが、受験者全員合格ということにもなりかねません。ただ、法科大学院制度を推進する人たちは、それでも問題ないという立場です。
法科大学院においては、共通到達度確認試験(仮称)を導入し、その修了者の質を確保させる、だから司法試験も落とす試験ではなく試す試験で足りるという発想があるからです。
(共通到達度確認試験の導入は法科大学院関係者にとっては想定外でしたが、あまりに法科大学院間格差が広がってしまっためにやむなく導入するものです)
もともと法科大学院課程修了者の7~8割を司法試験に合格させる構想でしたから全員合格はむしろ望むところでしょう。
この取りまとめについての説明は、顧問会議でなされているはずですが、議事録が公開されていませんので確定的なものはわかりません。
とはいえ、ここまでわかりにくい文章にしているという趣旨はどこにあるのかということを考えると、やはり法科大学院制度を守り、さらに増員させたということにあるのかということを隠したいからということになります。
その趣旨は、日弁連が1500人という数字に共鳴したように、呉越同舟を狙ったものだからでしょうか。
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