組み体操（人間ピラミッド）の問題は「程度の問題」ではない 宮島繁成氏の見解を批判する

　大阪府八尾市で起きた、人間ピラミッドにおける落下事故により、人間ピラミッドの問題は日本全国に行き渡りました。
　常識レベルの問題として、何故、人間ピラミッドなどを強制するのかについての疑問が拡がり、人間ピラミッドを禁止せよという声も大きくなりました。

　しかし、そこに異論を唱える見解が出てきました。
「巨大ピラミッドで負傷者「組体操は禁止するべき」との意見も・・・弁護士はどう見る？」（弁護士ドットコム）

　弁護士の宮島繁成氏の見解ですが、「要は程度問題」としています。
「組体操に限らず、スポーツはもともと危険なものですし、日常生活でも危険なことはたくさんあります。組体操だけを『危険だからやめろ』ということは言えません。」
　しかし、現実には八尾市だけでこの10年で小中学校４４校のうち３６校で１３９人が骨折していたというのですから明らかに異常です。
「組み体操事故：大阪府八尾市１０年で３６校１３９人骨折」（毎日新聞2015年10月16日）
　宮島氏はスポーツには危険がつきものというのですが、宮島氏がいう「程度の問題」というのであれば、明らかに異常な程度に達していると言わざるを得ないと思うのですが、この点についてはどのように説明するのでしょうか。

　さらに、宮島氏は「なぜ組体操が行われているかといえば、チームワークや達成感などを学ぶ目的がある」からとしていますが、問題なのは、そのような目的のために何故、人間ピラミッドなのかが問われているという視点がすっぽりと抜け落ちている点です。
　しかも、人間ピラミッドの問題は、その団結力とか達成感などという言葉が独り歩きし、どんどんと大型化していってしまったことが一番の問題の核心です。
　誰も2段の人間ピラミッドをやってみても「達成感」はないし、だからこそ大型化したのです。
　恐らく大阪市教育委員会が規制した5段でも、言われているような「達成感」はもはや得られないでしょう。既に9段だ、10段だとやっているときに5段だけですか、ということになるのは想像がつきます。
　しかもこの達成感というものがくせ者で、危険と表裏であればあるほど高揚していくのですから、歯止めがきかなくなります。
　今回の問題も誰も止めるよう発言する教員がいなかった、嫌だと思う生徒の声なき声が全く無視されてしまっているという点です。
「未だに人間ピラミッドとは驚きと同時に人間性を疑う　誰も止めようとは言えない社会」

　それから特に達成感の押し付けこそ問題だということです。その「達成感」で喜んでいるのは一部のスポ根の愛好者だけです。
「教育現場が狂ってる　団結力、達成感を押し付ける全体主義思想　組み体操の狂気」
　この歪んだスポ根の発想が教育現場を歪めているのです。一部のスポ根の発想の人たちの自己満足のために「団結力」や「達成感」を押し付けられるなんて、まっぴらです。宮島氏の意見は、この「達成感」の検討が全くないのですから、検討としては明らかに不十分です。

　宮島氏の補償問題に対する見解も納得がいくものではありません。
「たとえば慰謝料や後遺障害に基づく損害で障害見舞金を超える部分などは、公立学校の場合は、国家賠償法の要件を満たせば市町村などに賠償請求できます。」
　要は国賠法上の要件を満たさない限り、賠償請求できないということですが、これほど危険な行為をさせておきながら、学校側に落ち度がなければ賠償しなくていい、などということに誰が納得しますか。しかも、過去の裁判例でも認められた例があるなどというに至っては、裁判までしなければならないんですか、ということです。
　スポーツに危険がつきものと言ってみても、それこそ危険に関する程度の差は歴然としています。それを敢えてさせるというのであれば、無条件に全額補償しなければ、人間ピラミッドなど実施する資格はありません。
　宮島氏の見解は、法的問題と政策実施の問題をごちゃごちゃにしてしまっている点で非常に問題です。


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