高齢者の車の運転による重大事故 車依存社会のつけは続く

　高齢者による車の事故が目立つようになりました。高齢化社会の中で高齢者の割合が増えているというだけでなく、認知症などの別の大きな問題を抱えていることが特徴です。

　高齢者が免許を更新するためには70歳からは高齢者講習を受けること、75歳以上は講習予備検査と高齢者講習等を受ける必要があります。
　しかし、現実には認知症の高齢者による重大な交通事故が後を絶ちません。

　認知症の症状が見られる場合には当然のことながら運転免許は返上してもらわなければならないのですが、そのような状態になってしまったら自ら自主的に返上することは期待できません。
　では家族の責任でしょうか。特に同居家族は、その高齢者が認知症の症状が出ていることは日々、実感していることでしょうから、本心から運転をやめてもらたいと思っているはずです。しかし、親族が認知症になった身内（多くは高齢の男性と思われます）から免許証を返上させることは容易ではなく、また車のキーを取り上げても、認知症の高齢者が大騒ぎをするため、困り果てていることは容易に想像がつきます。
「認知症徘徊の列車事故訴訟、二審判決を見直しか　最高裁」（朝日新聞2015年11月10日）
　この事案でも家族は疲労困憊状態だったと思います。

　これだけの社会問題になっているのですから、家族任せにその責任を押しつけていてはダメなのです。既に到来した高齢化社会の中では、認知症の問題について、個々の家庭に対してその介護も含め、その責任を負わせるということ自体に無理があります。
　ましてや高齢者介護を「嫁」に担わせようとすること自体が時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ません。
「時代の流れは夫婦別姓、最高裁は時代の要請に応える義務がある」

　高齢者が車を運転するためには、任意保険を義務づけたらいいという意見も読みました（義務づけられれば「任意」とは言えなくなりますが、便宜上「任意保険」と言います）。
　あまりに単純なご意見なのですが、全く現実的ではありません。義務づけられることになれば、保険会社として保険加入にあたって認知症かどうかの診断を義務づけることになるかもしれません。更新時も同様でしょう。その結果、結局、高齢者に義務づけたとしても認知症であれば保険加入を拒否されることでしょう。
　義務を前提にして無条件に高齢者が入れる「任意」保険ということになれば、今の若年者の保険料が高額であるのと同じく、保険料は高額になることが予想されます。今でも60歳以上は保険料がアップしていますが、さらに高額になることと思います。
参照
「自動車保険の値上げについて」（価格com自動車保険）

　何よりも、認知症の高齢者には義務ということを観念できるとも思えず、任意保険が義務化されても、加入せずに運転してしまうことでしょう。義務が観念できない以上はそうなります。それに備えて政府保障事業のような制度にでもするということでしょうか。
　いずれにしても賠償させ補償されればよいというものではなく、高齢者が運転しなくてもよいという環境作りこそ重要です。
　公共交通機関において高齢者の無料化（低額化）は必須です。免許保有者は免許の返上が条件、免許を保有していない高齢者は公共交通機関当然に無料化（低額化）とすれば、高齢の早い段階から免許の返上を促すことに役立ちます。
　地方においてもＪＲのローカル線廃止や路線バスの廃止は、買い物難民を生み出していますが、これも是正されなければなりません。
「ＪＲ北海道による赤字ローカル線の廃止　北海道の第1次産業の衰退を憂う」

　もともと車の運転に固執する高齢者は、それよりも大分、前から車依存に陥ってしまっています。
　車依存社会の克服こそ重要なのです。
「自動車依存社会のつけ　高齢者による事故」


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