全件検査? 検視、解剖体制はどうするのか 実現可能性を考えれば裁判員制度に関わっている場合ではない
- 2015/11/18
- 09:33
青酸カリによる不自然な連続死の事件を受け、警察庁は、全件で薬物によるものでないかの検視を行うという方針を発表しました。
「薬毒物検査、全ての遺体で…連続変死事件受け」(読売新聞2015年11月13日)
現場の警察官の判断で事件性の有無を判断することになりますが、この現場での判断ということになると、判断する警察官の能力とやる気に大きく左右されることになります。最初の入口でとんでもない方向に行くと、事件を看過してしまったり、とんでもないえん罪事件を作り上げてしまったりするわけです。
ここでは本来、事件化すべきなのにしない、という場合の問題です。
2007年6月に起きた時津風部屋の弟子であった少年が暴力行為によって死亡した案件ですら、現場の警察官は事件性なしで処理し、遺族の努力によって事件化されたものですが、この事件の報道に接したときは誰もが何故、現場の警察官は事件性を見抜けなかったのかということだと思います。
警察庁の資料ではこのようなものになっています。

2013年に扱われたもののうち
犯罪死体 514体
変死体 20,339体
その他 148,194体
計169,047体
となっていますが、その他に分類されてしまった場合が問題なわけです。
(読売新聞記事では2014年度では計166,353体となっています。)
警察庁が全件について薬物事案ではないかの検査を実施するとしたのは現場任せにはできなくなったということですが、検視体制、ひいては司法解剖の体制はお寒いものがあります。
今までの7倍もの数の検視を行うということになるわけですが、本当に可能なのかどうか、予算や人員の確保が急務です。
さらにそれが司法解剖が必要ということになると、もっと厳しい状況になります。
解剖医の不足です。
県によっては解剖医がゼロになったり(その後、補充されたとは思いますが)ということがたびたび報じられています。
「司法解剖医:鳥取でゼロに 4月、担当教授が県外に転出」(毎日新聞2015年3月24日)
「弘前大が司法解剖休止へ/担当の准教授転出、後任の応募なく/事件捜査に影響/青森県警、秋田、岩手に依頼へ」(Web東奥2015年2月11日」
2012年の数字ですが、解剖率は11.1%ということで諸外国と比べても極めて低い数字というのが現実なのですが(それでも年々、増加しています)、さらにこの割合を増やすことが求められているのです。

その解剖医の不足に拍車を掛けているのが裁判員制度です。
裁判員制度は、裁判員のための制度になっており、解剖医ですら裁判員のために奉仕しなければならない状況となっています。
「不審死と解剖 解剖医の不足を招いているものは?」
鑑定(解剖)医がここまでさせられるとなると、その事件では「手厚い」扱い(意味のある手厚い扱いではありません)ですが、他の業務に支障が出ないのでしょうか。
2010年5月13日(毎日新聞)の報道では、大阪地裁で殺人、死体遺棄事件の裁判員裁判で「精神鑑定書を証拠採用せず、鑑定書を作成した鑑定医を出廷させる訴訟指揮を執った。約五時間に及ぶ被告人質問のやり取りを傍聴し、19日の次回公判で分析結果を裁判員に説明してもらう。鑑定の文書より、口頭での説明を優先させ、裁判員に理解を促す珍しい試みだ」
2010年1月2日の産経新聞では、「大阪大学医学部教室の場合、20年前は2、3人で年間100体を解剖していたが、近年は2人で200体以上を解剖するなど負担が増えている。加えて、これまでは検察官に鑑定書で説明すればよかったが、裁判員制度以降は一般も理解しやすいように出廷しての説明が必要になり、裁判所に通う回数も増えたという。」
鑑定人(解剖医)の負担が増えることで、このような状態になります。不満が鬱積していることがよくわかります。
「再尋問で芹沢裁判長に表現の変遷を尋ねられた医師は、「所見に矛盾はない。裁判員にわかりやすくと、再三指導されていたので報告書では細部に触れなかった」と説明。「裁判員裁判になって仕事が増えた」「もう一度説明するんですか? いい加減にしてください」といらだちを見せる場面もあった。」(産経新聞2011年7月15日)
現状が上記状況に比べて改善されているとも思えません。身の丈にあったことをしなければ犯罪死が見過ごされてしまいます。裁判員制度が廃止されても誰も困りませんが、不審死が看過されるようなことはあってはなりません。現実を直視しましょう。
ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ
「薬毒物検査、全ての遺体で…連続変死事件受け」(読売新聞2015年11月13日)
現場の警察官の判断で事件性の有無を判断することになりますが、この現場での判断ということになると、判断する警察官の能力とやる気に大きく左右されることになります。最初の入口でとんでもない方向に行くと、事件を看過してしまったり、とんでもないえん罪事件を作り上げてしまったりするわけです。
ここでは本来、事件化すべきなのにしない、という場合の問題です。
2007年6月に起きた時津風部屋の弟子であった少年が暴力行為によって死亡した案件ですら、現場の警察官は事件性なしで処理し、遺族の努力によって事件化されたものですが、この事件の報道に接したときは誰もが何故、現場の警察官は事件性を見抜けなかったのかということだと思います。
警察庁の資料ではこのようなものになっています。

2013年に扱われたもののうち
犯罪死体 514体
変死体 20,339体
その他 148,194体
計169,047体
となっていますが、その他に分類されてしまった場合が問題なわけです。
(読売新聞記事では2014年度では計166,353体となっています。)
警察庁が全件について薬物事案ではないかの検査を実施するとしたのは現場任せにはできなくなったということですが、検視体制、ひいては司法解剖の体制はお寒いものがあります。
今までの7倍もの数の検視を行うということになるわけですが、本当に可能なのかどうか、予算や人員の確保が急務です。
さらにそれが司法解剖が必要ということになると、もっと厳しい状況になります。
解剖医の不足です。
県によっては解剖医がゼロになったり(その後、補充されたとは思いますが)ということがたびたび報じられています。
「司法解剖医:鳥取でゼロに 4月、担当教授が県外に転出」(毎日新聞2015年3月24日)
「弘前大が司法解剖休止へ/担当の准教授転出、後任の応募なく/事件捜査に影響/青森県警、秋田、岩手に依頼へ」(Web東奥2015年2月11日」
2012年の数字ですが、解剖率は11.1%ということで諸外国と比べても極めて低い数字というのが現実なのですが(それでも年々、増加しています)、さらにこの割合を増やすことが求められているのです。

その解剖医の不足に拍車を掛けているのが裁判員制度です。
裁判員制度は、裁判員のための制度になっており、解剖医ですら裁判員のために奉仕しなければならない状況となっています。
「不審死と解剖 解剖医の不足を招いているものは?」
鑑定(解剖)医がここまでさせられるとなると、その事件では「手厚い」扱い(意味のある手厚い扱いではありません)ですが、他の業務に支障が出ないのでしょうか。
2010年5月13日(毎日新聞)の報道では、大阪地裁で殺人、死体遺棄事件の裁判員裁判で「精神鑑定書を証拠採用せず、鑑定書を作成した鑑定医を出廷させる訴訟指揮を執った。約五時間に及ぶ被告人質問のやり取りを傍聴し、19日の次回公判で分析結果を裁判員に説明してもらう。鑑定の文書より、口頭での説明を優先させ、裁判員に理解を促す珍しい試みだ」
2010年1月2日の産経新聞では、「大阪大学医学部教室の場合、20年前は2、3人で年間100体を解剖していたが、近年は2人で200体以上を解剖するなど負担が増えている。加えて、これまでは検察官に鑑定書で説明すればよかったが、裁判員制度以降は一般も理解しやすいように出廷しての説明が必要になり、裁判所に通う回数も増えたという。」
鑑定人(解剖医)の負担が増えることで、このような状態になります。不満が鬱積していることがよくわかります。
「再尋問で芹沢裁判長に表現の変遷を尋ねられた医師は、「所見に矛盾はない。裁判員にわかりやすくと、再三指導されていたので報告書では細部に触れなかった」と説明。「裁判員裁判になって仕事が増えた」「もう一度説明するんですか? いい加減にしてください」といらだちを見せる場面もあった。」(産経新聞2011年7月15日)
現状が上記状況に比べて改善されているとも思えません。身の丈にあったことをしなければ犯罪死が見過ごされてしまいます。裁判員制度が廃止されても誰も困りませんが、不審死が看過されるようなことはあってはなりません。現実を直視しましょう。
ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ
- 関連記事
-
-
オウム元信者に対する逆転無罪判決 裁判員や被害者の声に違和感 2015/11/28
-
裁判員出頭率がさらに減少 当局の発表でも7割を切る! 2015/11/25
-
福岡の裁判員制度に反対する集会の報告がアップされました 2015/11/21
-
全件検査? 検視、解剖体制はどうするのか 実現可能性を考えれば裁判員制度に関わっている場合ではない 2015/11/18
-
福岡での裁判員制度に反対する集会の様子です 2015/11/17
-
福岡市での裁判員制度に反対する街宣行動 2015/11/16
-
裁判員制度に反対する福岡の集会に参加してきました 2015/11/15
-
スポンサーサイト