日弁連では3月11日に臨時総会が開催されます。
さて、その決議案ですが、招集請求者たちの決議案と日弁連執行部の決議案がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
招集請求者案は次のとおりです。
決議の趣旨
1 司法試験の年間合格者数を直ちに1500人、可及的速やかに1000人以下にすることを求める。
2 予備試験について、受験制限や合格者数制限など一切の制限をしないよう求める。
3 司法修習生に対する給費制を復活させるよう求める。
これに対する執行部の案は次のとおりです。
前段については少々長いので省略します。
1 まず、司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること。
2 法科大学院の規模を適正化し、教育の質を向上させ、法科大学院生の多様性の確保と経済的・時間的負担の軽減を図るとともに、予備試験について、経済的な事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の途を確保するとの制度趣旨を踏まえた運用とすること。
3 司法修習をより充実させるとともに、経済的事情によって法曹への道を断念する者が生じることなく、かつ、司法修習生が安心して修習に専念しうるよう、給付型の経済的支援として、給費の実現・修習手当の創設を行うこと。
第2項は、明らかに異なります。執行部は法科大学院制度は法曹養成の中核と位置付けていて、それを出発点にして予備試験を考えることから、予備試験を何らかの形で制約すべきということになります。
これに対し、招集請求者案は、予備試験の制約一切するなと言っています。
第3項は、似て非なるものということになります。
この経緯は、この間、日弁連によって押し進められた給費制復活のための運動によって一定程度、司法修習生に対する経済的支援が具体化するのではないかという見通しに対する評価の問題があります。
この間、過半数の国会議員からの賛同が集まったということで日弁連会長声明がありました。
「
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明」
「司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、この間、当連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているが、先日、同賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。」
従前の「給費制」という形ということになれば、またさらに実現に向けてはハードルが上がります。
今、対外的に何を日弁連として表明するのかという違いの問題です。
さて一番の問題は
第1項です。
執行部案の目指すべき方向は、まずは1,500人ということであり、昨年度の司法試験合格者数が1,810人でしたから減員の方向性は招集請求者案と同じだというのが決議案からの私の理解です。
その後は1,000人を目指すのか、その時点で検証を求めるのかという違いはありますが、
少なくとも1,500人への減員方向であることに変わりはありません。
ところが、鈴木一派からは「違う」という主張を聞きます。どこが違うのかというと決議案そのものではなく、他の日弁連執行部の言動を問題にしたり、法科大学院制度を擁護していることや、特に「法曹養成制度改革推進室作成の法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)」に対して抗議しなかったということを上げるのです。
問題にしているのはこの日弁連会長声明です。
「
法曹養成制度改革推進室作成の法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)に関する会長声明」
しかし、だから決議案が違うベクトルを向いているというのですか?
何だかこじつけがひどすぎます。上記声明でも以下のように記載されています。
「しかしながら、他方で、本取りまとめ案には、これまで司法試験合格者を毎年1,800人ないし2,100人程度の規模で輩出してきたことについて「一定の相当性」があるとし、また、「直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ」るとするなど、1,500人程度を上回る規模の司法試験合格者数をも視野に入れたかのような記述も含まれている。
前述した法曹養成制度の深刻な状況と、この間の法曹志望者減少の推移を踏まえると、当面の司法試験合格者数について1,500人程度を上回る規模とすることは、現実的な基盤を欠き、現状に対する危機感を欠如したものと言わざるを得ない。」
というように1,500人以上とすることについては批判的見解を含めています。
しかも鈴木一派が問題にしているのは、あくまで
執行部の姿勢の問題であって決議案の内容の問題ではありません。
決議一本で執行部の姿勢が変わることはありません。それはどちらの決議も同じです。
仮に執行部の姿勢そのものを変えたければ、会長選挙に勝つことが求められます。
この点においても臨時総会招集請求者たちは、何の見通しも持っていません。
要は口だけで、決議さえ上がればいいというだけの発想であって、何の具体的な展望もないということです。
「
日弁連:司法試験合格者数1000人を求める臨時総会招集請求についての反対意見」
このような状況の中で、鈴木秀幸氏のような「
反スタ」理論が飛び出してきて唖然とさせられたわけです。
「
鈴木秀幸氏の珍論 自民党議員は司法試験合格者数1,000人以下で同意している、妨害しているのは日弁連執行部!?」
是が非でも日弁連執行部とは違うということを言いたいがために執行部の姿勢の問題を歪曲したにすぎず、また実際の運動を前提としていないということも露呈しているわけで、このような総会招集請求者たちの決議が可決されても何も変わらないどころか、運動は終末を迎えます。
この決議案は食えないから何とかしてくれというだけのもので、一体、誰に向けて何を獲得したいのかも想定されていない、駄文だからです。
その問題点についてはこちらをご覧ください。
「
日弁連臨時総会請求者たちの決議案 鈴木秀幸氏に問う、これって本当に日弁連であげろっていう決議ですか」
運動に分裂だけを持ち込むことを目的としたこの招集請求者案には断固、反対を表明します。
ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
- 関連記事
-
スポンサーサイト