3月11日、日弁連では臨時総会が招集され、執行部案と招集請求者案が審議されます。
招集請求者案については、このブログでも重点的に批判してきました。このような案が通っても、司法試験合格者数の減員を実現する観点からは有害でしかないからです。
「
日弁連臨時総会 招集請求者案を批判する その2」
「
日弁連臨時総会請求者たちの決議案 鈴木秀幸氏に問う、これって本当に日弁連であげろっていう決議ですか」
では、日弁連執行部案はどのように評価すべきでしょうか。
主文はこのようになっています。
1 まず、司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること
2 法科大学院の規模を適正化し、教育の質を向上させ、法科大学院生の多様性の確保と経済的・時間的負担の軽減を図るとともに、予備試験について、経済的な事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の途を確保するとの制度趣旨を踏まえた運用とすること。
3 司法修習をより充実させるとともに、経済的事情によって法曹への道を断念する者が生じることなく、かつ、司法修習生が安心して修習に専念しうるよう、給付型の経済的支援として、給費の実現・修習手当の創設を行うこと。
招集請求者案との一番の違いは、2項の予備試験の扱いだけです。
1項も違うんだと招集請求者たちは強弁していますが、詭弁です。減員方向へのベクトルは全く同じです。こういう詭弁を弄しているから、この招集請求者たちは多数派にはなれないのです。
それはさておき、確かに予備試験の扱いは全く違います。
ところで予備試験という制度が導入されたのは、司法制度改革審議会の意見書でもって法科大学院制度の設立の提言と同時に予備試験制度まで提言されたからです。
予備試験が提言された理由は、まさに日弁連執行部案で言っている「経済的な事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の途を確保する」ためです。
この提言の趣旨からは、「経済的な事情等により法科大学院を経由」できない人たちのための予備試験ということにはなるのですが、制度導入の検討にあたっては法務省は、一切の制限をしないということで制度案を出してきました。
「
第3回法曹養成検討会2002年2月5日」
「法科大学院を経由しなかった理由は、人によって様々であり、当該個々人にとっては、いずれも「やむを得ない事由」により法科大学院を経由しなかったということになりかねず、また、
実際問題としても、出願を受けた際、それらの事情について、個別的な認定を客観的に行うことは極めて困難であることなども是非御考慮いただいて、予備的な試験の受験資格を制限することは相当ではないと我々としては考えておりますし、お願いしたいところでございます。予備的な試験が、法科大学院を経由しない者にも法曹への途を確保するために設けられる試験である以上、現行の司法試験と同様に、だれでも受験できる開かれた試験として位置づけるべきであります。したがって、仮に改革審意見が提言するように、資質、能力についての適切な審査を行う場合でも、受験資格という受験前の審査ではなく、試験を受けさせた上で、試験の中で問うのが相当であると考えております。」
参照
「
司法試験予備試験と法科大学院制度」
経済的事情によって制限するということは技術的に不可能なのです。
従って、客観的な事情によって制限しうるとすれば年齢だけです(25歳以上に制限するなど)。暴論としては法科大学院生には認めないという制限論もありますが、そうなれば誰も法科大学院に進学しなくなるだけのことです。
もう1つあり得るとすれば法科大学院は大学を卒業していることを前提としていますから、大学を卒業していない者への門戸という意味合いはあり得るところです。旧司法試験の1次試験もそのような意味合いもありました(大学教養課程を終えていれば1次試験は免除)。
ただ年齢による制限は、どう考えても経済的事情以外の事情ということにならざるを得ず、どうみても合理的な制約とは言い難いものです。
それから旧1次試験との対比にはなりますが、予備試験には教養科目もあり、学生生活を終えた層にとってはまず突破不可能な試験になります。
そうなると予備試験をそのまま残すか廃止かのどちらかにならざるを得ないのですが、現状で予備試験を廃止してしまってはますます法曹志望者の激減は目に見えています。だから、法曹養成検討会議でも予備試験には手をつけられなかったのです。
こうやってみてくると、日弁連執行部案の第2項は、全く実現性のないものを掲げているということになります。
その意味では、私は日弁連執行部案に対しては、積極的に反対する理由はないとは思っています。あとは積極的に賛成できるかどうかだと思っています。
執行部案が可決された場合のメリットは、執行部が提案したものである以上、司法試験合格者数減員のための運動を執行部こそ積極的にイニシアチブを取らなければならない「制約」になるということです。
そうなれば、日弁連執行部はもうサボタージュは許されません。
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