昨年、8月から10月にかけて集団強姦容疑で逮捕された5人全員が嫌疑不十分となり、被害者が検察審査会に不服申立をしました。
元になった事件の報道はこちら。
「
不祥事相次ぐ大阪府警で今度は集団強姦 不倫で依願退職の元警官がネット掲示板で共犯者募ったか」(産経新聞2015年9月7日)
今回の検察審査会への申立の報道はこちら。
「
元警察官らの集団強姦、被害女性が検審申し立て 「不起訴は不当」」(産経新聞2016年6月20日)
この事件が最初に報道されたときに思った感想は、ネットで集まってきた男どもは確かに嫌疑不十分ということもあり得るだろうなと思った点です。
この事件の特殊性は、5人に監禁された1人の女性が代わる代わる性行為を強いられたというものであり、被害者にしてみれば意思に反していることは明らかですから、問題になるのは、行為者にとって犯罪であることの認識、その女性の意思に反するものであることを認識しているかどうかになります。
ところが、首謀者以外は、低俗な掲示板をみて信用してやってきた男どもであり、それを信じたという弁解が虚偽であり、積極的に被害女性の意思に反していると認識していたと立証できない限りは故意がないということになりますから、嫌疑不十分というのはやむを得ない結論だったのではないか、私はそのような感想を持ちました。
ところで前掲記事をみて違和感があったのは、前掲記事のこの部分です。
「
申立書によると、5人は女性の抵抗が弱まったことなどから「同意があった」と弁解したという。」
抵抗が弱まったから同意があったと思ったというのであれば、それは明らかに違うでしょう。身体を拘束され、しかも男が5人いる中で監禁された状態ではそれ自体が抵抗不能状態を作り出していると評価できるわけです。
そこでさらに暴れて抵抗するなどした場合、その女性がどのような目に遭うのかを考えたら、普通は抵抗できません。
確かに刑事訴訟手続きでは、同意がないことを認識していたことを検察官が立証しなければなりませんが、その認定は、抵抗しなかった=同意ではありません。
この点、判例の抵抗できたはずだということをのみをことさら曲解して、抵抗しなかったことをもって同意したなどとされては、抵抗できない女性だっているという反論(批判)が加えられることがありますが、私からみれば刑事訴訟の観点からみればずれています。
抵抗できるような状態で抵抗しない、同意があったのではないかという疑いが払拭できない、あるいは被告人に同意があると思ったという供述の信用性を一概に否定できない、ということになれば、故意(同意がないことを認識していた)を認定するには合理的な疑いが残る、従って、故意が立証できない以上は無罪ということにならざるを得ない、ということです。
「
性犯罪で続く逆転無罪判決 被害者の供述の危うさ」
疑わしきは罰せずという刑事訴訟の大原則がある以上、ここはないがしろにはできません。
しかし、上記事案の場合は全く事情が異なり、抵抗できない状態に置かれているわけですから、抵抗が弱まったから同意があると思っていたという弁解を検察官がそのまま故意の認定に合理的な疑いを持ったとすれば、ずれているということになります。
事案から集まってきた男たちは、その女性の抵抗も演出だと考えていたような節もありますが、他方で抵抗しなくなったから同意があったという弁解では、やはり当初は同意がないかもしれないと思っていたことと表裏の関係がありますから、苦しい弁解ともいえます。
被害者側の検察審査会の申立書全体を読んでいるわけではないので、報道のみからの判断ということになりますが、被害者が不起訴処分に納得がいかないというのは当然、そうなると思います。
「
正当防衛を認めるべきなのはどのような場合か 正当防衛に関する雑感」
他方で、首謀者がどのような経緯で不起訴処分(嫌疑不十分)になったのかは報道からは不明ですが、首謀者なのですからまさか同意があったと思ったなどという弁解ではないでしょう。
この首謀者に関しては、他の集まってきた男どもに比べれば、さらに納得がいかないのも当然です。
私も首謀者までが不起訴処分になったのは驚いた覚えがあります。
ところで、首謀者以外の男たちがしたことは、下品そのものです。仮に女性に同意があったとしても下品です。そのような監禁状態の中で身体を拘束し、代わる代わる性欲のはけ口のように扱って喜んでいるということですから、妄想の世界だけでならまだしもそれを実行に移せてしまうこと自体、人間性が問われます。
仮に不起訴のままであろうと、起訴されて無罪になろうとも、やったことの社会的制裁を受けたことについては同情の余地は全くありません。
教員として教壇に立つ資格はありません。
「
警官集団強姦事件など2教諭を懲戒免職 大阪府教委」(産経新聞2015年11月6日)
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