法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用って本当にできるのだろうか? 続き
- 2016/07/17
- 21:00
前回の「法科大学院教育におけるICT(情報通信技術)の活用って本当にできるのだろうか?」に引き続いてICT利用について考えてみたいと思います。
既に多くの都道府県で法科大学院が廃止されており、全国に点在しているだけという状況です。

北海道は全て黄色く塗られていますが、法科大学院があるのは札幌だけであり、全道からの通学は明らかに無理です。
九州でいえば福岡県、それも福岡市にあるだけというのと全く同じです。
北海道に居住していても札幌圏以外であればやはり法科大学院に行くことは居住地を離れる必要が出てきます。
そのためのICT利用かと思っていたのですが、昨日、検討したように、どうも違うようなのです。旭川市や釧路市にサテライトが開設されて、そこで受講できるようなイメージではないということです。
地方の法科大学院では実入学者数が激減しています。地方の法科大学院は国立大学が中心ですが、それでも実入学者数は極めて少ないのです。
2016年度

このまま実入学者数が減少していけば法科大学院が売りにする双方向性授業などが成り立たなくなります。おそらく現状でも厳しいものと思われます。
ICTの活用というのは、こういった地方の法科大学院の生き残り策というのがその実情ではないでしょうか。東京の上位校の授業がそのまま教授できるというのがある意味では売りにもなるからです。
それによって、その法科大学院が設置された地域では、かろうじて法科大学院を残すことが出来るという程度のものということになります。地方居住者にとっての利便はそれだけということになります。
既に募集停止をしたところが、「再開」するなどというのは極めて厳しいものがあります。
ICT利用といってみても法科大学院としての体裁を整える以上、相応の教員を確保しなければなりませんが、既に補助金が大幅に削減されてしまったから募集停止を決めたのであって、今さら募集を再開できるほどの財力があるとも思えません。
ましてや一旦、募集停止をしておきながら再開するなどということに対して、モチベーションが上がろうはずもありません。
結局、いくつか残った地方の国立大学の法科大学院の延命のためのものではないのかと考えざるを得なくなります。
ただそれでも地方の居住者の場合、いずれかの法科大学院に在籍しなければならず、やはり通学圏内でなければ、居住地を離れることは必須になります。
例えば、釧路市に在住の人が北海道大学法科大学院に在籍するためには札幌に転居が必要だということです。東京の法科大学院に行く場合よりは週末に釧路市との往復が可能ということくらいがメリットとして残ります。
このICT利用のためのコストも相応のものになると予想されていますが、結局のところ言われているほどの法科大学院制度の危機(特に適正配置)を打開できるようなものにはなり得ないのではないか、そのように思います。
ワーキンググループはまだ第1回目が終わったばかりであり、その第1回の議事録も公開されていないので、今後のワーキンググループの動向は注視しますが、既に結論は見えたのではないかと思います。
ICT利用は、全国の適正配置のための対策にはなり得ないということです。
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北海道は全て黄色く塗られていますが、法科大学院があるのは札幌だけであり、全道からの通学は明らかに無理です。
九州でいえば福岡県、それも福岡市にあるだけというのと全く同じです。
北海道に居住していても札幌圏以外であればやはり法科大学院に行くことは居住地を離れる必要が出てきます。
そのためのICT利用かと思っていたのですが、昨日、検討したように、どうも違うようなのです。旭川市や釧路市にサテライトが開設されて、そこで受講できるようなイメージではないということです。
地方の法科大学院では実入学者数が激減しています。地方の法科大学院は国立大学が中心ですが、それでも実入学者数は極めて少ないのです。
2016年度

このまま実入学者数が減少していけば法科大学院が売りにする双方向性授業などが成り立たなくなります。おそらく現状でも厳しいものと思われます。
ICTの活用というのは、こういった地方の法科大学院の生き残り策というのがその実情ではないでしょうか。東京の上位校の授業がそのまま教授できるというのがある意味では売りにもなるからです。
それによって、その法科大学院が設置された地域では、かろうじて法科大学院を残すことが出来るという程度のものということになります。地方居住者にとっての利便はそれだけということになります。
既に募集停止をしたところが、「再開」するなどというのは極めて厳しいものがあります。
ICT利用といってみても法科大学院としての体裁を整える以上、相応の教員を確保しなければなりませんが、既に補助金が大幅に削減されてしまったから募集停止を決めたのであって、今さら募集を再開できるほどの財力があるとも思えません。
ましてや一旦、募集停止をしておきながら再開するなどということに対して、モチベーションが上がろうはずもありません。
結局、いくつか残った地方の国立大学の法科大学院の延命のためのものではないのかと考えざるを得なくなります。
ただそれでも地方の居住者の場合、いずれかの法科大学院に在籍しなければならず、やはり通学圏内でなければ、居住地を離れることは必須になります。
例えば、釧路市に在住の人が北海道大学法科大学院に在籍するためには札幌に転居が必要だということです。東京の法科大学院に行く場合よりは週末に釧路市との往復が可能ということくらいがメリットとして残ります。
このICT利用のためのコストも相応のものになると予想されていますが、結局のところ言われているほどの法科大学院制度の危機(特に適正配置)を打開できるようなものにはなり得ないのではないか、そのように思います。
ワーキンググループはまだ第1回目が終わったばかりであり、その第1回の議事録も公開されていないので、今後のワーキンググループの動向は注視しますが、既に結論は見えたのではないかと思います。
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