これからの司法と法曹のあり方を考える弁護士の会 今週の一言
- 2016/09/05
- 13:08
これからの司法と法曹のあり方を考える弁護士の会の今週の一言ですが、担当は私です。
これからの司法と法曹のあり方を考える弁護士の会ホームページ
2016年9月4日 「人材養成をはき違えた文科省、日本の教育行政は悪循環の極致」(PDF)
文科省が関わってきた専門職大学院などが最悪の状況を迎えています。
以下、本文(PDFと同文です)
人材養成をはき違えた文科省、日本の教育行政は悪循環の極致
2016年9月4日 猪野亨
日本の将来は少子化を前提とした人材養成として考えていかなければならないことになる。文科省は、2003年、グローバル化社会に対応できる人材の養成ということで各種専門職大学院制度を立ち上げた。法科大学院の開校は2004年4月であり、専門職大学院の草分けとなった。
その法科大学院制度は曲がり角に来ている。志望者が激減し、閉校(募集停止)も相次ぎ、法曹を目指す学生は予備試験に流れている。
もともと法科大学院制度は、法曹需要が国際化の中で大きくなるということから専門職としての人材養成のための法科大学院制度がクローズアップされたものである。しかし、法曹需要もなく、司法試験の合格率低迷とも相まって、法科大学院志願者は激減し、法科大学院の淘汰が始まった。
専門職大学院の失敗は法科大学院だけではない。会計大学院をはじめ、ほとんどの専門職大学院で入学者数が低迷している。これまで開設された専攻数は192であったが2015年7月時点で162まで減った。内訳の大半は法科大学院であるが、それだけでなく、全体の在学者数も2011年の21,807人から2015年の16,623人まで減少している。
2015年12月から中教審大学分科会・専門職大学院ワーキンググループが開催されている。ワーキンググループの報告書(案)ではこの惨状を前にして「科学技術の進展や社会・経済のグローバル化はますます進展。また、我が国においては、急速な少子高齢化が見込まれる。このため、国民一人一人の労働生産性を向上し、持続的な経済成長を図ることが必要であり、高度専門職業人養成の必要性は一層増大。」として方向性は絶対に間違っていないことを強調する。
そして、今後の方向性は「各専門職大学院における人材養成像について社会(出口)との共通理解を得ることが必要。また、排出した人材についての社会の受け入れ体制を作っていくことも必要。」だそうだ。出口が見えていないのだ。
大学も全入時代と言われて久しい。
一方で義務教育での35人学級の実現すら財務省は拒否している。本来は25人学級を実現し多くの子どもたちが基礎学力をつけるために必要な予算はつけない。基礎学力を欠いた学生に高度専門職業人養成を施すことよりも、全体の基礎学力を上げた方がはるかに生産性は上がるだろう。小学生からの英語必修も基礎学力を欠いていては修得できる生徒も限られるため、英語教育を小学生に前倒ししても全体のレベルアップにはつながらない。
そこにあるのはグローバル化社会という掛け声のもとで目に見えた政策ばかりを打ち立てる文科省とそこにしか予算を出さない財務省の最悪の教育行政の姿だ。現在の政治体制の下で、法科大学院制度だけが「改善」されることはないだろう。
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日本の将来は少子化を前提とした人材養成として考えていかなければならないことになる。文科省は、2003年、グローバル化社会に対応できる人材の養成ということで各種専門職大学院制度を立ち上げた。法科大学院の開校は2004年4月であり、専門職大学院の草分けとなった。
その法科大学院制度は曲がり角に来ている。志望者が激減し、閉校(募集停止)も相次ぎ、法曹を目指す学生は予備試験に流れている。
もともと法科大学院制度は、法曹需要が国際化の中で大きくなるということから専門職としての人材養成のための法科大学院制度がクローズアップされたものである。しかし、法曹需要もなく、司法試験の合格率低迷とも相まって、法科大学院志願者は激減し、法科大学院の淘汰が始まった。
専門職大学院の失敗は法科大学院だけではない。会計大学院をはじめ、ほとんどの専門職大学院で入学者数が低迷している。これまで開設された専攻数は192であったが2015年7月時点で162まで減った。内訳の大半は法科大学院であるが、それだけでなく、全体の在学者数も2011年の21,807人から2015年の16,623人まで減少している。
2015年12月から中教審大学分科会・専門職大学院ワーキンググループが開催されている。ワーキンググループの報告書(案)ではこの惨状を前にして「科学技術の進展や社会・経済のグローバル化はますます進展。また、我が国においては、急速な少子高齢化が見込まれる。このため、国民一人一人の労働生産性を向上し、持続的な経済成長を図ることが必要であり、高度専門職業人養成の必要性は一層増大。」として方向性は絶対に間違っていないことを強調する。
そして、今後の方向性は「各専門職大学院における人材養成像について社会(出口)との共通理解を得ることが必要。また、排出した人材についての社会の受け入れ体制を作っていくことも必要。」だそうだ。出口が見えていないのだ。
大学も全入時代と言われて久しい。
一方で義務教育での35人学級の実現すら財務省は拒否している。本来は25人学級を実現し多くの子どもたちが基礎学力をつけるために必要な予算はつけない。基礎学力を欠いた学生に高度専門職業人養成を施すことよりも、全体の基礎学力を上げた方がはるかに生産性は上がるだろう。小学生からの英語必修も基礎学力を欠いていては修得できる生徒も限られるため、英語教育を小学生に前倒ししても全体のレベルアップにはつながらない。
そこにあるのはグローバル化社会という掛け声のもとで目に見えた政策ばかりを打ち立てる文科省とそこにしか予算を出さない財務省の最悪の教育行政の姿だ。現在の政治体制の下で、法科大学院制度だけが「改善」されることはないだろう。
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