今年の司法試験合格者数は1,583人 法科大学院擁護の数字 それでも法科大学院制度の低迷を抜け出すこと不可能だ
- 2016/09/07
- 00:33
今年の司法試験合格者数が発表になりました。
昨年より267人少ない1583人です。
合格率にして22.9%という数字で、もっとも低い合格率となりました。
平成27年度 23.1%
平成26年度 22.6%
平成25年度 26.8%
平成24年度 23.5%
平成23年度 23.5%
平成22年度 25.4%
政府の法曹養成制度改革推進会議は昨年6月30日に法曹人口の在り方についての検討結果をまとめていますが、そこでは次のように述べられていました。
「法曹養成制度の実情及び法曹を志望する者の減少その他の事情による影響をも併せ考えると、法曹の輩出規模が現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない」
としつつ、
「司法試験合格者数でいえば、(中略)1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」
るとしていました。
この取りまとめ自体はいかようにも解釈できるものでしたが、大方は1500人は死守するんだという決意の表れという理解でした。
「全く逆の見方 司法試験合格者数の政府目標は1500人? いえいえ1500人にまで減少させるな!」
簡単に死守してしまいました。しかも83名も多いという状況です。これでは「目標」でも何でもなかったことになります。
一部の噂では1,500人までの減員は今年で達成できるなどというものもありましたが、そこまでは到達しませんでした。
日弁連理事会でも執行部からそのような報告がありましたが、あまりに楽観敵な観測だったといえます。
日弁連の談話でも引き続き1,500人に減員するよう求めていくとあり、楽観的な観測が外れたことを暗に認めるものとなりました。
「平成28年司法試験最終合格発表に関する会長談話」
日弁連執行部が楽観的な観測をしていた背景の1つには受験者が大幅に減少したこともあると思います(それ以外の「根拠」もあったようですが、今となってはその「根拠」もむなしく響きます。)。
今回1583人とまだ1500人への減員へはまだまだという状況ですが、今年の受験者数は、昨年度に比べても1,117人も減少しており(受験者数6,899人)、これでは、いくら何でも従来の合格者数は出せない、つまり例年通りの合格者数としてしまうと司法試験の選抜機能を放棄するに等しくなるからです。
そのような中で合格者数が減ったのは当然のことなのですが、それ以上に合格率まで下がったのは、これ以上、増員は無理という限界まで来ているのは明らかなのですが、問題はその限界を超えてしまって合格者数を出したのではないかということです。
予備試験の合格者数が235人と過去最高となり、その分、法科大学院修了者の合格者数が目減りすることになりました。
法科大学院修了者による合格者数は、過去最低の1,348名です。
1,500人で切った場合、85人が不合格になります。
総合点 人数 累積数

予備試験か法科大学院修了者かは、成績表からはわかりませんが、割合からいっても多くは法科大学院修了者になります。1,300人を切ってしまうことになりますが合格率は確実に2割を切ります。
法科大学院制度が司法試験のための専門職大学院であることからすれば、本来であれば100%近い合格率でなければ存立は厳しくなります。
現状ですら22.9%の合格率ですが、それが2割を切ったということになれば、もはや法科大学院の負のイメージを払拭することは不可能になります。
今年の合格者数の持つ意味は、法科大学院制度の維持のために1,500人を遙かに超えたところに合格基準を設定させざるを得なかったことによって無理矢理に出された数字と評価できます。
しかし、このような小細工をしようが、もはや法科大学院制度を制度として維持することは不可能です。
文科省は平成30年までが制度の改善期間だとして未だに悠長な「検証」をしていますが、単なる時間稼ぎ以上のものにはなりえないことは明白です。
今、制度として廃止しなければ、もっと悲惨なことになります。
単に文科省や大学の利権の問題でなく、法曹制度そのものが崩壊しかかっているのです。
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昨年より267人少ない1583人です。
合格率にして22.9%という数字で、もっとも低い合格率となりました。
平成27年度 23.1%
平成26年度 22.6%
平成25年度 26.8%
平成24年度 23.5%
平成23年度 23.5%
平成22年度 25.4%
政府の法曹養成制度改革推進会議は昨年6月30日に法曹人口の在り方についての検討結果をまとめていますが、そこでは次のように述べられていました。
「法曹養成制度の実情及び法曹を志望する者の減少その他の事情による影響をも併せ考えると、法曹の輩出規模が現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない」
としつつ、
「司法試験合格者数でいえば、(中略)1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」
るとしていました。
この取りまとめ自体はいかようにも解釈できるものでしたが、大方は1500人は死守するんだという決意の表れという理解でした。
「全く逆の見方 司法試験合格者数の政府目標は1500人? いえいえ1500人にまで減少させるな!」
簡単に死守してしまいました。しかも83名も多いという状況です。これでは「目標」でも何でもなかったことになります。
一部の噂では1,500人までの減員は今年で達成できるなどというものもありましたが、そこまでは到達しませんでした。
日弁連理事会でも執行部からそのような報告がありましたが、あまりに楽観敵な観測だったといえます。
日弁連の談話でも引き続き1,500人に減員するよう求めていくとあり、楽観的な観測が外れたことを暗に認めるものとなりました。
「平成28年司法試験最終合格発表に関する会長談話」
日弁連執行部が楽観的な観測をしていた背景の1つには受験者が大幅に減少したこともあると思います(それ以外の「根拠」もあったようですが、今となってはその「根拠」もむなしく響きます。)。
今回1583人とまだ1500人への減員へはまだまだという状況ですが、今年の受験者数は、昨年度に比べても1,117人も減少しており(受験者数6,899人)、これでは、いくら何でも従来の合格者数は出せない、つまり例年通りの合格者数としてしまうと司法試験の選抜機能を放棄するに等しくなるからです。
そのような中で合格者数が減ったのは当然のことなのですが、それ以上に合格率まで下がったのは、これ以上、増員は無理という限界まで来ているのは明らかなのですが、問題はその限界を超えてしまって合格者数を出したのではないかということです。
予備試験の合格者数が235人と過去最高となり、その分、法科大学院修了者の合格者数が目減りすることになりました。
法科大学院修了者による合格者数は、過去最低の1,348名です。
1,500人で切った場合、85人が不合格になります。
総合点 人数 累積数

予備試験か法科大学院修了者かは、成績表からはわかりませんが、割合からいっても多くは法科大学院修了者になります。1,300人を切ってしまうことになりますが合格率は確実に2割を切ります。
法科大学院制度が司法試験のための専門職大学院であることからすれば、本来であれば100%近い合格率でなければ存立は厳しくなります。
現状ですら22.9%の合格率ですが、それが2割を切ったということになれば、もはや法科大学院の負のイメージを払拭することは不可能になります。
今年の合格者数の持つ意味は、法科大学院制度の維持のために1,500人を遙かに超えたところに合格基準を設定させざるを得なかったことによって無理矢理に出された数字と評価できます。
しかし、このような小細工をしようが、もはや法科大学院制度を制度として維持することは不可能です。
文科省は平成30年までが制度の改善期間だとして未だに悠長な「検証」をしていますが、単なる時間稼ぎ以上のものにはなりえないことは明白です。
今、制度として廃止しなければ、もっと悲惨なことになります。
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