文化の日が「明治節」へ？ 五箇条の御誓文などと時代錯誤の極致 王政復古の大号令が待ち遠しい!?

　11月3日は文化の日です。この文化の日の目的は、国民の祝日に関する法律によれば「自由と平和を愛し、文化をすすめる日」となっています。
　日本国憲法が公布された日を記念とした日でもありますが、もともとの由来は、明治天皇の誕生日、いわゆる明治節です。
　戦前も明治節として祝日でしたが、学校を休んで遊べる日ではありません。
　みな登校し、君が代を歌い、天皇制を賛美するための日でした。
　それが戦後、文化の日になったわけですが、明治節を形を変えて温存させたものです。日本国憲法が公布に合わせて文化の日が制定されたわけではありません、むしろ、この日に合わせたとみるのが自然です。
　憲法公布を祝うよりも、明治節に主眼があったのです。


　さて、この文化の日を名実共に「明治の日」に変えようとしている勢力があります。
　「明治の日推進協議会」です。
　ここでのやり取りが報じられています。
「「明治の日」制定求め、自民議員ら国会内で集会」（朝日新聞2016年11月2日）
「明治天皇の誕生日である１１月３日を「明治の日」にしようと、祝日法改正運動を進める団体が１日、国会内で集会を開いた。明治維新から１５０年の節目にあたる２０１８年の実現に向け、超党派での国会議員連盟発足を目指しているが、国会議員の参加は１４人で、うち自民党以外は２人にとどまった。」

　自民党内の立ち位置からして稲田朋美防衛相や古屋圭司選対委員長（自民党）が中心メンバーのようですが、やっぱりという面々です。
　稲田防衛相に至っては、神武天皇を持ち出して明治の偉業の精神だそうです。
　中には、聖徳太子の17条憲法やら五箇条の御誓文まで持ち上げているという自民党議員もいるというのです。

　ここに今上天皇から「王政復古の大号令」が出されれば言うことなしです。
　彼らは小躍りすることでしょう。

実はあまり馴染みもない明治天皇　側室もあった大昔の人



　しかし、本当に明治の精神に戻りたいなんて思っている国民はいるんでしょうか。
　思い起こすのは、中村草田男の俳句です。

　降る雪や 明治は 遠くなりにけり

　既に明治生まれの方々は数えるほどでしょう。私が小学生の頃でしたが、最後の慶応生まれの方が亡くなったという話も聞いたりもしました。それから40年も経過したわけです。高校生の頃だったでしょうか、ＮＨＫの番組の中で高齢の方が、「おじいさんに聞いた話では、おじいさんの子どもの頃には天保の飢饉があって大変だった」と述べていました。そのときは江戸自体も遠くはないんだなあと漠然と思っていました。
　何よりも私が子どもの頃は、時代劇がたくさん制作されていましたが、今や時代劇も死に体です。既に水戸黄門も打ち切られて久しく、あとはＮＨＫで制作される大河ドラマくらいでしょうか。
　武士が登場して刀を振り回してはいるものの、どこか江戸時代を舞台にした現代劇になっています。
　水戸黄門ですら当初のものと後になってくると大分、様変わりです。私も小学生の頃は、再放送も含めよく見ていました（私が知っているのは二代目の西村晃さんまでです）。葵の印籠をみせて「水戸光圀公なるぞ」とやれば、すべてひれ伏しておしまいというパターンですが、過去の再放送をみたとき「徳川光圀」を名乗ったり、悪人を切り捨てたりと、非常に権威的で私は結構、カルチャーショックを受けたものです。その水戸黄門も視聴者のニーズに合わせて変わっていったということですが、しかしそれでも高齢者層で終わりでした。
　時代劇も明治生まれや戦前生まれの人たちにはとても愛着があっただけで、それ以上は承継されていかなったということです。

　今や「明治は 遠くなりにけり」なのです。
　明治節の復活を待望している人たちって、一体、何を考えているのでしょう。
　明治維新によって「強国」となったかつての栄光の再現を夢見ているのか。でもその「強国」と言ってみたところで、国内の人民を犠牲にし、アジアへの侵略を繰り返してきただけの好戦国家でしかないのですが。


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