米国社会にみる国が二分された状態 この対立の根底にあるのは持てる者と持たざる者 日本社会の縮図でもあるのだ

　トランプ氏が米国大統領選挙を制して次期大統領に「内定」しました。
　移民排斥、イスラム教徒の入国禁止など極右政権そのものなのですが、このような政権が誕生してしまったことについては、私たちは是非とも教訓にしなければなりません。
　トランプ氏がＴＰＰに反対を明言しているのは、それが国益には適わないものという認識があるからです。トヨタ自動車などがやり玉に挙がっていることからもＴＰＰによって利益を得るのは日本などであって、米国ではないとでも考えているのでしょう。
　実際にも米国の労働者層のＴＰＰへの反発は強いようであり、クリントン氏もトランプ氏ほどではないにせよ、ＴＰＰへの反対を表明していました。
　オバマ政権がＴＰＰを推進しようとしたことは、支持率が下落傾向にあったオバマ政権にとって、恐らくＴＰＰ推進こそが米国の財界の支持を取り付けることになると考えたからなのかもしれません。
　日本にとってもそうですが、ＴＰＰは決して、国の利益を上げるためのものではありません。その国の中にあるグローバル企業の利益を確保することこそＴＰＰの狙いです。
　国家間の対立とみるのは誤りです。社会主義国家が自国の利益のためというのであればまだ理解できますが（ベトナムのように）、資本主義国家におけるＴＰＰは単にグローバル企業の利益のためでしかありません。
「稲田朋美氏　TPPによって労働力が不足？　だから雇用を流動化させよという暴論　TPPの対立は国家間の問題ではない」

　ＴＰＰに反対するトランプ氏が当選しましたが、しかし、米国では、今、トランプ氏に対する批判デモが大きくなっています。排斥対象とされた層が怒りを表明しているわけです。
　トランプタワーに対する警備も物々しくなりました。
「「反トランプ」全米に拡大＝ＮＹで１万人デモ、深刻な分断－大統領選」（時事通信2016年11月10日）
「デモは、ペンシルベニア州フィラデルフィア、首都ワシントンなど、民主党支持層の多い州や都市を中心に行われ、若者や中南米系など、それぞれ数百人から数千人が参加した。「団結する時だ」というトランプ氏の呼び掛けに反し、深刻化する米国社会の分断を改めて印象付けた。」

「トランプ・タワー上空の飛行禁止＝米」（時事通信2016年11月11日）
「同ビルから半径約４キロの区域では、軍用機を除き、地上から約９００メートル以下の飛行が禁止される。」

　二分された社会の背景には言わずと知れた格差社会があります。米国の格差は日本の比ではありません。
　米国大統領選挙のような総取りと同じように富の独占が進んでいます。マネーゲームの勝者というだけしかなく、本来であれば、このような富の独占こそが破られなければなりません。労働者を搾取し、マネーゲームによって富を収奪したこの富裕層こそが倒されるべき対象なはずです。
　ところがトランプ氏支持者たちは、さらに虐げられている移民などに向けて牙を向けたわけです。これ以上、自分たちの権益を脅かされたくないという層ということになるのですが、これでは富裕層の思う壺です。
　トランプ氏はＴＰＰこそ反対を表明していますが、企業向けの減税を打ち出しています。その根底にあるのは結局は持てる者への政策だけです。
　アメリカンドリーム的な米国流の価値観が根底にあるのでしょうが、それにしても牙を向ける先が移民であったり女性だったり、異教徒だったりというのはかなり病んでいます。
　ナチスがユダヤ人を排斥した状況と非常に似通っているわけです。ナチ党の支持層は貧民層ではなく中産階級でしたが、トランプ氏の隠れ支持層がリベラル層にあるというのも同じような状況が米国にも横たわっているということです。
「トランプ氏の当選にみる投票行動の危うさ　日本も同じ状況になりかねない」

　トランプ氏の矛先は日本にも向けられ、日米軍事同盟における「応分の負担」を求めています。安倍自民党政権は、喜んでその要請に応えようとするでしょうし、だからこそ南スーダンへの派兵もその一環ということになるわけです。

　先般、安倍自民党は、国会のＴＰＰ承認について強行採決をしました。財界の利益に忠実な安倍政権ではあるのですが、同時に米国にも忠実であろうとしています。
　このように見ると一番、最悪なのが安倍政権ということになるのですが、アベノミクスも崩壊した今、これ以上、安倍政権が支持される理由がみつかりません。
　大企業のような富める者であれば格別、そうでない持たざる者が安倍自民党を支持しても自分の首を絞めるだけです。
　米国の排斥されている側こそ、多くの日本国民が置かれた立ち位置なのです。

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