高齢者の車の事故の原因は高齢者でも安心して運転できる車が開発されないから？ 車社会の転換こそ必要だ

　高齢者による自動車事故が社会問題化する中で、私は一定年齢以上になれば運転免許を強制的に取り上げるべきであるという見解です。
　車社会を転換するチャンスでもあります。車が売れればいいという発想で経済成長を考える時代は終わりです。

　2016年11月15日付の朝日新聞の天声人語に次のような主張があります。
「「お年寄りだから一斉に運転免許を取り上げろといった議論には賛成できません」と話すのは東京の弁護士、外岡潤さん（38）。（略）「問題の本質は、高齢になっても安心して運転できる車が一向に開発されないこと。」」
「暗証番号を正しく入力しないと動かないエンジン。柔らかい素材のバンパーやボンネット。急に踏み込むとブレーキがきくアクセルペダルなどが育ちつつある」

　本当にこれが本質なのでしょうか。このような「安心して運転できる車」とはどの程度のものをイメージしているのかはこの文章からはわかりませんが、問題なのは、そこまでして車を運転させたいのかということです。
　安全性が高まるのはいいですが、現実には交通事故の減少したのは、運転者の安全意識の高まりです。交通戦争と言われていた時代は、発展途上国並の安全意識しかなく、ひどすぎたわけです。
　今なお飲酒運転であったり、無謀運転があとを絶ちませんが、全体としての運転のモラルは向上しています。一時停止違反だったり、道路交通法の理解の足りない運転手もまだまだ多くいますが、モラルが向上していること自体は間違いありません。
　そのような中で高齢者による事故が増えているし、これはモラルの問題ではなく、運転技能に問題があったり（適格な瞬時の判断能力も含む）、認知症などが引き起こすのですから、個人のモラルに委ねるとういうことはできません。
　「安心して運転できる車」が開発されるまで高齢者による事故は黙認せよというのでしょうか。



　高齢者による高速道路の逆走は典型的なものですが、最近は合流地点に柵が立てられ、逆走しにくいようになりました（そのため高速に合流するときのタイミングをはかる距離が短くなってしまったのですが）。しかし、逆走は根絶できていません。
　日本では若年層の車離れは顕著になっており、このまま車を製造し続けるとか、道路行政ばかりに比重を置くようなやり方は、早晩、破綻します。
　高齢者（60歳以上）の自動車保有率は2016年3月末で63.8％ですが、36.2％の世帯では車がないことになります。車なしで生活されている方々も大勢いるということです。
参照
「年齢階層別の乗用車普及率をグラフ化してみる(2016年)(最新)」

　70歳以上、80歳以上となれば、さらに保有率は下がるでしょう。
　高齢者の免許を禁止すべきという主張に対しては、弱者に冷たいなどという批判も寄せられたりもしましたが、車移動をしている高齢者こそ少数であり、多くの高齢者は公共交通機関を利用しているのです。
　都市部と過疎地ではもちろん差はありますが、買い物に不便だとか、日常の足だなどと主張には全く道理がありません。犠牲者を出してまで高齢者、特に80歳以上の高齢者に運転を認めなければならない理由などないのです。ただ便利だからというだけの理由で車を手放せない、自らの身体、判断力の衰えを自覚できていないのですから、その方が問題でしょう。

　根本的な問題として、車社会という発想を何故、転換できないのでしょうか。
　地球環境の問題を考えても、これからは公共交通機関の時代です。
　札幌市が一度、廃止された市電を復活させたことにも大きな意義がありました。車が売れればいい、それが経済成長だという発想では、今後の地球環境を考えて行く上でも問題です。
「公共交通機関の復権を目指す　札幌市電　仙台の地下鉄」

「相次ぐ高齢者による交通事故　このまま放置しておいて良いのですか。自動車業界に媚びるのではなく、車優先社会を転換させませんか」


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