婚活の過程で一緒に食事をしてご馳走になったが、交際を断ったらあとから半額負担？

　弁護士ドットコムに興味をひく記事がありました。
「婚活デート後にお断りしたら「デート代を支払ってください」、支払う義務は？」

　婚活サイトで知り合った関係で食事に行ったが、その費用7000円は男性が支払った。
　女性が後日、交際を断ると、男性が「不誠実だ」として半額の費用を請求してきた。女性は居場所も知られていることから怖くて半額払うとラインで伝えた。
　支払義務があるかというものです。
　ここでの弁護士の回答はオーソドックスのもので、その回答自体に問題があるわけではありません。
　合意が成立している以上、女性に半額の費用の支払義務があるというものです。

　しかし、何か違和感があります。本当にこのような合意に拘束力を認めるべきなんだろうかというものです。
　合意が法律上、有効であるならば、この男性は訴訟提起して強制的に女性から3500円を回収できることになります。
　あとから払うと言ったことが本当に法的保護に値するものなんだろうかということです。
　男性側の請求根拠は「不誠実」というだけで、何らの法律上の根拠はありません。女性側が最初から欺すつもりで奢らせたというのであれば、詐欺ということにもなるかもしれませんが、事案としては食事はしてみたものの、やっぱり交際することは無理だったというレベルです。
　もちろんどの程度、最初から無理かもということは問われますが、だいたいはグレーであり、最初から欺すつもりということは額や内容からしても考えにくく（そうであれば複数回、繰り返すのではないかと思われます）、男性側の請求は言い掛かりレベルと言わざるを得ません。
　そのような中で払うと言ってしまったからといって、その合意は単なる贈与契約です。和解契約という評価もあり得なくもありませんが、そもそも全く支払義務のないところから出発していますから「互譲」もありえず、和解契約と考えることにも違和感があります。
　脅迫的な恐ろしさがあれば脅迫による取消も可という上記弁護士の回答にはなっていますし、実際にもこのような請求をしてくる人は後から何をされるかわからないという意味で私も怖いと思います。とはいえ端的に合意の拘束力を否定してもよいのではないかと思います。

やっぱり恐ろしい!


　贈与契約では書面にした場合には確定的意思があるとされ、それによって相手方もその贈与契約が履行されるものという期待のもとに行動するから書面による場合には取り消せないとしたものです。
　しかし、ライン上のやり取りですから書面によるというよりは口頭による会話という評価の方が実態にあっていると考えられますし、しかも3500円が支払われるということについての男性側の期待も保護に値するようなものでもないからです。
（逆に高額であれば脅迫的要素が強くなるでしょう。）

　私は、この女性にはいずれにしても支払う義務はないと考えます。

　もっとも、この女性にも落ち度があるのではないか、気が進まない相手であれば食事にも行かなければいいではないかという意見も聞こえてきそうです。
　しかし、最初から交際する気は全くないという場合ならともかく、相互に知り合うために食事に行くことまでも否定できるものではないし、その場の雰囲気から全額、男性が支払ったとしても特段、女性が責められる場面でもありません。
　この女性に経済力があり、「自立」した女性ということであれば確かにどのような結論であろうとも折半すべきだったとも言えなくもありませんが、実際には女性の方が所得が低く、食事をする店舗も男性が決めていることが多いのですから、その費用は婚活のための費用であって、男性負担だったとしても女性を責める事情にはあたらないと思います。
　少なくとも、後から半分、返せというのは筋違いも甚だしく、やっぱり交際を断って正解な相手だったということを男性自ら証明してしまったようなものです。
　だから断られたんだという自覚もなく、後日になって折半を要求することこそ問題であり、女性に問題があるような事案ではありません。
　もっとも、女性に見る目があれば、最初から断れたということは言えなくもありませんが、それは人生経験の中で身に付けていくべきものであって、女性を非難する事情にはあたりません。


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