先般、裁判官が偽証を見破り無罪判決が下されたことが話題になりました。
「
暴行無罪 目撃証言でっちあげ、LINEで浮上」(毎日新聞2017年3月25日)
「法廷で経営者の無料通信アプリ「LINE(ライン)」を検証した結果、客も巻き込んで事件をでっち上げていた可能性が浮上し、暴行を認める証拠がないと判断した。東京地検は控訴せず無罪が確定した。」
裁判官がスマホをその場で確認したということが素晴らしいと評価されたという事件です。
さて、この裁判では証人(被害者も含め)の偽証の疑いが濃厚という案件です。
この件について弁護士ドットコムに解説が掲載されました。
「
裁判官「スマホ見せて」法廷でウソの証言見破り無罪…虚偽証言の女性、罪に問われる?」(弁護士ドットコム)
「今回のようなケースで、仮に偽証罪で起訴された場合、どのような点がポイントになるのか。
「仮に、偽証罪で刑事訴追(起訴)された場合、今回の事件とは別の刑事事件になりますので、担当する裁判官も別の裁判官になる可能性が高いです。
裁判官が変われば判断(事実認定)も変わる可能性がありますし、LINEなどの証拠が、ことさらに記憶に反して偽証したことを裏付け得る確かな証拠かどうかが争われる可能性はあり得ます」
今回の偽証の核心になる部分は、確かに見てもいない暴行現場を見たと証言したのかどうかということになりますが、しかし、その前提として、この部分こそ重大な問題ではないでしょうか。(前掲毎日新聞より)
「公判で経営者は「元従業員に頬を平手でたたかれた」と主張。従業員も尋問で「ママが平手打ちされるのを見た」と答えた。経営者とこの従業員は互いに「親族ではない」と述べ、店員募集の看板を見て偶然働くことになったと説明していた。
ところが、尋問後に元従業員の弁護人が外国人登録の内容を法務省に照会した結果、2人は伯母とめいで中国にいた当時同居していたことが判明。尋問がやり直された。
2人は「他人だとうそをついた」と謝罪したものの、暴行があったとする証言は変えなかった。」
証言においては、その証人が被害者と他人か親族かなど、その属性も重要視されます。この場合、同居の親族であるというのが証人の属性であるのに、それをことさら秘匿して虚偽の証言をしたというものです。その虚偽の証言が露見したため裁判官は証人の証言の信用性を疑ったわけです。
最初から捜査機関もこの証人の属性がわかっていれば起訴されなかったかもしれませんし、担当した捜査員たちもそのように思っているのではないでしょうか。
この裁判では、法廷でスマホを確認しなかったとしても、あるいは確認して怪しいやり取りが発見されなかったとしても無罪にならなければならない案件です。
裁判官からみれば決定的な証拠を見つけたということになるのかもしれませんが、本来の刑事裁判の立証責任のあり方からすれば、
証人が属性という重要な事項についてことさらに虚偽の証言をしていたということで、その証人の証言をもとに有罪判決を下せるのかということが問われるわけです。
むしろ、その度胸がないが故にスマホを見せてというのであれば「名裁判」とはほど遠いものといえます。
江戸時代だったら名裁判官だったかも
さらに、この点が偽証罪に問われないというのであれば、何のための偽証罪なのかということになります。明らかに刑事裁判の根幹を揺るがすような偽証です。
証人の証言の信用生が問われ、無罪になることは多々あります。それらがすべて偽証罪に問われるべきものでないことはもちろんです。刑事裁判ですから、合理的な疑いを入れない程度に有罪立証がなされていなければならないからです。
自分が被害者である場合、同時に証人でもありますが、信用性が揺らいだ、偽証だということにはなりません。こんなことをしたら誰も被害の申告などできなくなってしまいますし、偽証罪に問うための立証責任(ことさらに記憶と反する証言をしたこと)は検察官にあるからです。
しかし、本事案のような偽証を黙認していては他の偽証案件に対する抑止になりません。検察はきちんと捜査すべきです。
こういった事件とのバランスで捜査しないといったら検察の姿勢が問われます。
「
捜査書類偽造、警部補ら起訴猶予 京都地検「悪質ではない」」(京都新聞2017年3月27日)
「京都地検は「捜査事項を省く意図で、一般人からの通報だった端緒を多目的検問としたが、虚偽部分はその点にとどまり、検挙実績をねつ造するなど悪質なものではない。発覚後は捜査経過を供述し、偽証の点も控訴審での証言で是正され、いずれも懲戒などの処分や措置が取られていることなどを考慮した」としている。」
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