今井一氏は単なる9条の改憲主義者 悪質なすり替え論法に欺されるな

　北海道新聞2017年5月28日付朝刊に「解釈改憲　国民投票で決別」と題して今井一氏の見解が掲載されています。
　要約すると以下のようになります。
①私は原理主義的な護憲派だ。9条に手をつけずに自衛隊を武装解除するのが筋だ。
②既に自衛隊が存在することによって立憲主義が蔑ろにされてきた。
③安倍氏の発案（憲法9条3項に自衛隊を明記）では2項と矛盾する。
④2項に自衛のための戦争とそのための戦力を保持するという改憲案を作って国民に信を問うべきだ。国民が認めれば憲法と現実に乖離がなくなる。
⑤このような国民投票は立憲主義と国民主権を守るための次善の策だ。
⑥護憲派に案が否決されたら自衛隊の武装解除を進めるのかと問いたい。
⑦護憲派は9条が改正されることを恐れているが、大切なのは主権者の多数の医師を憲法と政治に反映させることだ。
⑧但し、国民投票法の改正は必要だ。今のままでは資金力がある方が断然有利だからだ。

　一見してわかることは、この今井氏は立憲主義について全く理解していないということです。
　国民の意思というのですが、立憲主義は、時の多数が「改憲」であっても改憲させない、つまり改憲のために大きなハードルを設けています。つまり、瞬間的な「多数」で改憲されることを防ぐということも立憲主義の要請です。
　それを国民主権などというのですが、これでは単純多数決と変わりません。
　結局、今井氏は何が言いたいんだろうか、というところなのですが、要は上記①に収れんされるのだと思います。
　まさに今井氏にとっての「原理主義」とは文言と現実が乖離しているのが許せない、だからどちらかに合わせればいいんだというレベルの発想だということです。しかも、現実に合わせて憲法を変えるでは、はっきりと立憲主義とは無縁です。

　今井氏にとってはその乖離さえなければ気持ちすっきりということなのです。それを端的に示しているのが⑥です。文言に反するんだから「武装解除するのか」というのです。

　しかし、反対多数で否決された場合、反対していた人たちにそれを問うてどうするの？
　仮にあなたの珍論が否決されたからといって、自衛隊武装解除政権が誕生するわけではないのですよ。それは選挙で選出されなければなないということくらいわからなのでしょうか。
　否決は現状維持だということです。

今井氏は、憲法改正の論議を学級会レベルで考えているとしか思えない



　だから、この今井氏が求めているものは端的に自己満足です。
　政治の世界がどうこうではなく、自分が満足できるかどうかだけだということです。

　一番、ひどいのは、発議するのは国会、というよりも自民、公明、維新だよという現実はまるで無視している点です。これら政権側が、あなたの珍論で国民投票を行うとでも思っているのでしょうか。
　⑨についても滑稽で、今、改憲勢力によってなされようとしているのは、現行の国民投票法です。
　権力側が、自ら敷いたルールによって改憲しようとしているときに、国民投票は賛成なんて改憲派を後押しするのですから、ひどいものです。

　今井氏のツイッターの紹介文をみて、なるほど合点がいきました。
「ジャーナリスト。大学での専攻は哲学。81年に民主化運動が高揚するポーランドへ。戒厳令下のワルシャワに潜入して３度拘束⇒国外退去処分に。バルト３国の独立、ソ連邦解体の是非を問う国民投票を皮切りに国内外の住民投票、国民投票取材を重ねる。衆参両院の憲法調査特別委員会に５度にわたり参考人招致され、国民投票の制度と実態を解説」

　国民投票、住民投票万能主義の様相です。
　立憲主義の理念がまるで分かっていないことがよくわかります。国民投票ですべて決着するなら憲法などいらなくなります。しかし、この発想自体、全体主義的なのですが、今井氏はわかっているんだか、いないんだか。

　今井氏の論理でいえば、自民党憲法改正草案に示された9条及び9条の２について国民投票にはかり承認されればＯＫということになりますが、それが自民党の改正草案ではダメで、何故、あなたの珍論でなければダメなのかといことの説明はつかないでしょう。
　もっといえば安保関連法が成立したという現状に合わせるのであれば自民党の改正草案の方が乖離が少ないのではないですか。

　今、現実に求められているのは、安倍政権がさらなる軍事大国化のために憲法9条そのものを「改正」しようとしていること、それをどのようにして阻止するのかということなのですが、「国民投票で～」などと言って、憲法9条の「改正」に反対する国民を何とかして安倍政権の改憲論に引き寄せようとしているのです。
　このような今井氏の論法に欺されてはいけません。

「憲法改正のための議論が大事？　時代にあった憲法に変えていく必要という詭弁　枝野幸男氏、対案は現行憲法」


ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ