法科大学院の志願者、入学者が激減していることは周知の事実です。平成30年度は志願者が8,058人、実入学者数は1,621人にまで減少しました。
入学者数が減少の一途をたどっているにもかかわらず、政府には危機感がありません。
法曹養成制度改革推進会議は、2015年6月30日は、「法曹養成制度改革の更なる推進について」を決定しました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hoso_kaikaku/ ここでは平成30年度までの期間を集中改革期間として位置づけて法科大学院制度を中心に制度改革が論じられるはずでした。
そこでとりまとめられたのが「法曹コース」とされる学部3年、法科大学院2年とするいわゆる「3+2」でした。
法科大学院等特別委員会(第86回) 配付資料の中の資料3-1
この特徴は、法科大学院に対する志願者の激減の原因を経済的、時間的負担があるからと分析する点にあります。通常、司法試験に合格するまで最短でも学部4年、さらに既修者コース2年で計6年を要するだけでなく、法科大学院は国立大学でも年間授業料は他の大学院よりも高額に設定されていますから、その分析自体は間違いではありません。
しかし、それだけではありません。新規登録弁護士の就職難や過剰が言われている中で、既に学生の中では法曹が1つの職業としては敬遠されてしまっているからです。単に経済的、時間的負担だけが原因でないことは自明のことだと思うのですが、こうした議論はほとんどなされていません。
それで結局、提起されたものが法曹コースです。3年掛かって提案されたものがこの法曹コースですが、あまりに危機感が足りません。この3年間でも志願者離れは続いていました。
しかもまだ法曹コースの具体的な制度設計が決まっていないのです。
上記法科大学院等特別委員会で配布された資料のうち、「
【資料3-2】法曹コースの制度設計について(検討資料)」がそのための検討資料です。
来年入学の1年生が法曹コースの対象になるというのに、未だに制度設計が具体化されていないという状況です。7月頃には確定される見込みのようですが、改革の目玉というわりにはあまりにスピード感がありません。
札幌弁護士会では、この法科大学院等特別委員会のまとめた基本的な方向性について意見書を出しました。
「
「法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」に対する意見」
このとりまとめの問題点をまとめていますので、是非、ご一読ください。

毎日新聞でもこの法曹コースにういて報じられていました。
「
政府 法学部「3年卒」検討 法科大学院「失敗」に危機感」(毎日新聞2018年5月18日)
ただ、ここで報じられているような秋の臨時国会でも立法化という議論は全く聞いたことがありませんでした。法曹コースを実現する上での必要な立法改正ということになるのでしょうが、これまでの法科大学院等特別委員会の議論からは、ほとんど見えてこなかったものです。既に骨子は決まっているということでしょうか。
与党の「法曹養成制度に関する与党検討会」からも提案がなされていると報じられており、「4月にまとめた緊急施策で、法曹コース導入に向けた学校教育法改正に加え、優秀な法科大学院生は在学中に予備試験なしで司法試験の受験を認めることも打ち出した。」とされています。
この提案については入手はできませんでした。文章としてまとめられていないと聞いています(毎日報道時点)。内容はかなりドラスティックなもので、法科大学院課程を修了しなくても受験できるというもので、法科大学院課程修了を受験要件としてきたことが転換されることになります。全く法科大学院に入学しなくても良いというわけではないので、制度そのものの廃止ではありませんが、制度への危機感の表れと言っても良いでしょう。予備試験ルートと変わらなくなるともいえ、法科大学院側はこうした改革には抵抗を示すものと思われます。
法曹コースは、優秀な層は、早期に司法試験が受験できるということを売りにしていますが、それは予備試験に流出している層を何としても食い止めるための法科大学院上位校の危機感に対応するためのものであり、かなり矮小化された提案といえます。これでは、予備試験受験者層からいかに法科大学院上位校に引っ張ってくるかという次元のものであって、法曹志望者全体を増やそうというものからはほど遠く、パイの奪い合いでしかありません。
この法曹コースで法曹養成制度が機能するようになるとは思えませんが、一番の問題は、政府(文科省)にこの失敗に対する危機感が全くないところにあります。
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