横浜国立大学法科大学院が募集停止を決めました。首都圏の国立大学では初の募集停止となり、神奈川県に法科大学院はなくなることになります。
これまで神奈川県には、関東学院大学、神奈川大学、桐蔭横浜大学にも法科大学院がありましたが、既に募集停止となっていました。
横浜国立大学法科大学院の入学者数は、次のような状態です。
平成30年度 定員 25名
志願者数 33名
受験者数 28名
合格者数 18名(競争倍率1.56)
入学者数 9名
競争倍率も2倍を切るような形で「合格者」を出していますが、入学者数を確保することもできない状態では早晩、募集停止は時間の問題だったと言えます。
横浜国立大学にはもともと法学部はないところへ未修者コースに力を入れるということでスタートしましたが、未修者コースの低迷は横浜国立大学の司法試験合格率にも反映しています。
平成29年度で14.9%
決定的な要因となったのは、本年3月に法科大学院等特別委員会において、法科大学院制度の改革の方針で未修者コースを切り捨てを決めたことが一番、大きかったのではないでしょうか。
「
法科大学院制度改革 法科大学院等特別委員会の議論に危機感なし 法曹コースは失敗する」
法科大学院等特別委員会でのとりまとめは、低迷する未修者コースを切り捨て、予備試験に流出している優秀層を法曹コース(いわゆる3+2)によって法科大学院に志願者を取り戻そうとする法科大学院上位校のための改革であることを鮮明にしました。
このような政府方針のもとでは未修者コースに力を入れても、もはや内部の努力によっては如何ともしがたいところまで来てしまったということです。
今後、政府において未修者コースを再生するための努力をすることはないでしょう。法科大学院等特別委員会での議論を聞いていても、委員の中から未修者コースや地方についての理念が語られることもありましたが、座長がならば対案を示すべきと一蹴されています。
法科大学院等特別委員会では、提起された法曹コースですら、具体的な内容が決まっていない状態であり、既修者コースですら生き残りをかけているときに、さらに未修者コースの改革案を提起するだけの状況にはありません。未修者コースを切り捨てることによって浮揚を図ろうとしているのです。

神奈川県弁護士会では横浜国立大学法科大学院への支援に力を入れていたということですが、募集停止は衝撃だったようです。
「
神奈川県内も法科大学院ゼロ 弁護士会「県民にマイナス」」(カナロコ2018年6月6日)
「県内の法科大学院に講師派遣などで協力してきた県弁護士会も、落胆を隠せない。村松剛副会長は「学生のころから地元を知り、密着してきた人材の供給源が途絶えることは弁護士会にとっても、県民にとってもマイナス」と嘆く。
とりわけ横浜国立大はもともと法学部がなく、法科大学院設立時に県弁護士会に全面的なバックアップを要請した経緯があった。ある弁護士は「地域に根差した特色ある人材を育成したいとの要望で協力した。『学生が集まらないからもうやめます』ではなく、もう少し何とかならなかったのか。大学側の熱意の不足に、怒りを持っている人もいる」と明かした。」
未修者コースを切り捨てるという政府方針の下では、もはや如何ともしがたく、しかも法科大学院志願者は、東京の法科大学院に集中している現状に鑑みるならば「地元」といってみてもそこにはベッドダウンとしての横浜の姿があるだけです。
横浜国立大学法科大学院の募集停止は、未修者コースの終焉を示す象徴になるのかもしれません。
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