パワハラ防止法が成立しました。初めて企業にパワハラの防止を義務づけることになりました。
罰則がないということを問題にする意見(批判)もあるようですが、私は罰則を定めなかったことはやむを得ないことと考えています。
「
企業にパワハラ防止を義務化へ、違反なら社名公表も」(朝日新聞2019年5月29日)
「改正法は、パワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義。その上で、パワハラ防止策をとることを企業に義務づける。従わない企業には、厚生労働省が改善を求める。それにも応じなければ、厚労省が企業名を公表する場合もある。」
罰則の対象となるものとならないもの、その線引きが難しく罪刑法定主義の観点からの問題があるからです。
「
セクハラ対策に刑事罰は難しい 教育の問題であり、社会構造の問題である」
罰則がないことを批判する人たちは、これでもかという事例を持ってきますが、それほどひどい事例は、他の犯罪類型に該当するものであり(強制わいせつ、脅迫、強要、暴行など)、問題なのはそれを犯罪として立証できるのかどうかということに尽きます。
一般的に犯罪、犯罪でないものを明確化できないのは問題で、昨今、性犯罪は同意していない場合には成立するようにすべきという意見があることも承知していますが、同意がないこと、及び同意があると誤信もしていないことを検察側が立証しなければならない構造は同じで(確かに判決の中には、??という認定の仕方をしているものもあります)、そうでなければ疑わしきは罰せずということをやめ、同意が立証できない限りは有罪としてしまうよりないということになります。
論者によっては性犯罪には「疑わしきは罰せずは適用すべきない」と言ってしまっている人もいるくらいなので、実は根底にある発想は同じなのかもしれません。
「
『逃げられない性犯罪被害者 無謀な最高裁判決』(杉田聡編著)」
「この著書の中の堀本江美氏のコラムですが、「「疑わしきは罰せず」は、性犯罪の場合にあてはめてはなりません」とまで述べています(69ページ)。」

パワハラ以上に悪質なのがセクハラですが、罪刑法定主義を無視したような立法には問題があるわけで、従って、その防止には最初から限界があります。
とはいえ企業には防止を義務づけられたわけです。企業による黙認が許されないことはこれまでの裁判上でも争われ、企業の防止義務違反によって賠償請求が認容されてきたのですから、このパワハラ防止法があろうとなかろうと、企業は本来的にこうしたパワハラ、セクハラなどを防止するための方策を講じなければならないのは当然なのです。
もっとも社長がパワハラをやっているような会社では実効性がないということも聞きます。
しかし、そこは私は労働者側も受け身ではなく、労働組合を結成して職場環境を変えていくために闘うことこそ大事なことだと思います。
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