DVと聞くと、真っ先に思い浮かべるのは暴力です。
暴力を振るっていないのに、妻からDV(暴力)だと言われ、その妻の偽証証言により傷害罪や暴行罪で逮捕されたり、有罪判決ということになればもちろん冤罪事件です。
ただ、こういった事件は聞いたことがありません。むしろDV事件なのに暴行、傷害などで立件されること自体、少ないのではないでしょうか。
DVによる立件は、裁判所からDV防止法による保護命令が出た後、その命令に違反することで立件されるという構図です。命令違反は個々の暴行、傷害より命令違反という形式的なことであるため立件が容易ですし、逆に言えば、立件しやすくするための制度といえます。国家(裁判所)の命令に違反するわけですから、捜査機関がこれを黙認するということも考えにくくなりました。
ところで、このDV防止法では暴力行為など生命、身体に重大な危害を受ける恐れがある場合に限定しています。上記のような制度趣旨からはこのように帰結されます。
暴力を伴わないDV(モラハラ(恫喝)による支配)については、保護命令、そして捜査機関の関与による立件のための前提(直接的な生命・身体への危険という刑罰を正当化するもの)を欠いていると考えられているわけです。
ところで、直接的な暴力が伴わなくても恫喝したり、あるいはネチネチと絡んでくるなどのモラハラ系、精神的なものもDVの一種です。これをされたら本当に精神が参ってしまいます。
DV防止法1条では
「この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第28条の2において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。」
と規定されていますが、離婚や面会交流の是非を考える上でDV防止法の定義に限定されてるべもものではありません。
2019年12月7日撮影 離婚後の共同親権の導入を主張する人たちは、何故か(というか必然なのですが)このようなモラハラ的、精神的DVの概念を否定します。
DV防止法による保護命令は、刑罰の前提となるものですから、上記のとおり範囲を限定しているというだけであって、それ以外のDVが問題なし、あるいは存在していないとしているわけではありません。刑罰を科さないというだけです。
従って、そのモラハラ的DVの問題は厳然と存在しているのです。
そうしたことも離婚の一要因になっている場合も少なくなくないのですが、それは離婚後の共同親権の導入を目論む人たちにとっては都合の悪い事実です。
単純に対等な当事者が性格の不一致ということで離婚することもあるでしょうが、少なくない夫婦が離婚手続きを裁判所に持ち込まなければならないという実情があります。協議離婚でも力関係を背景にしたものもあるわけで協議離婚だから対等というわけでもありません。
いずれにせよ、力関係が対等でないという事情があることは否定できるはずもないのですが、離婚後の共同親権制度を導入せよと主張する人たちは、何と対等であると言ってしまうのです。
「
離婚後に子の監護をしたいと言ったらモラハラ? モラハラ被害の女性を保護せよと言ったら女性をバカにしている?」
本当に驚きです。支配の構造を正当化させるためには、元夫婦が離婚後は対等ということでなければならないし、それを制度化するのが離婚後の共同親権制度ということがよくわかります。
しかし、いくら何でも家裁の実務はそこまでぶっ飛ぶことはできません。
だから家裁がいくら「面会交流原則実施論」の立場に立ちつつも問題がある場合には、例え狭義のDVでなくても面会交流を制限するのです。
面会交流原則実施論の問題点はこちらを参照
「
離婚後の共同親権の導入検討は危険な動き 子の福祉も害されかねない 離婚後の理想のために共同親権を押し付けるのは本末転倒」
ここでの制限は「冤罪」でも何でもありません。当然に制限されるべき事案だということです。自らが勝手に定義した狭い意味でのDV(暴力が伴い、客観証拠があるものに限定)に当たらない、だから「冤罪」と言っているだけでしかありません。
他方で、監護親の立場からみれば、まだまだ家裁の運用には大きな不満があります。それが「面会交流原則実施論」なのですが、DV被害者に相手方と会うことを前提とせざるをない面会交流の強要など論外なのです。それでは子に悪影響を及ぼすのは必至です。
民事事件として証拠を偽造するような案件があることも承知していますが、そうした案件があることで離婚後の共同親権制度の導入を正当化するものではないことはもちろんです。どんな事件にも内在する問題でしかないからです。
「
Q 妻が夫のDVをでっち上げて面会させないし、裁判所や警察も無批判にそれに従い、結果として面会交流ができていないという現実をどのように考えますか。」
「DV冤罪」は、離婚後の共同親権の導入のための印象操作です。
串田誠一議員(弁護士)が、DVなのに別居時に子を連れて出ることを「連れ去り」だと騒いでいますが、ひどいものです。そうした誤った言説に翻弄されているDV被害者がいるのも現実です。本当に罪深いと思います。
なお、この串田氏が金科玉条のごとくとりあげている「日弁連六十年史」は、日弁連の声明や意見書とは異なり、日弁連の見解ではありませんのでご注意ください。
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