Q 共同養育支援法(旧名称:親子断絶防止法)の「連れ去り」禁止の問題点はどこにありますか。
- 2019/12/31
- 21:04
Q 共同養育支援法(旧名称:親子断絶防止法)の「連れ去り」禁止の問題点はどこにありますか。
A 共同養育支援議員連名が押し進める共同養育支援法では別居にあたっての「連れ去り」を禁止しています。
「連れ去り」を禁止する背景に議連では、裁判所が離婚に伴い指定する親権者は、「連れ去り」もん勝ちという認識があります。要は家庭裁判所は、別居にあたって最初に連れ出した方が監護の継続性を理由に親権者として指定しているから、その別居時の「連れ去り」を禁止する必要があるというのです。
「求める立法」には次のように記載されています。
刑罰まで科せと主張するもので極めて強権的な制裁となっています。後にみるDV案件の運用の見直し(厳格な運用と精神的DVはDVにあらず等)とも相まって子を連れての別居は不可能になります。
ここでは子の視点は全くありません。あくまで子の「連れ去り」の禁止とそれに対する制裁という観点があるのみです。
別居時に子を連れて出ることを他方配偶者の同意を要件としてしまえば、これまで監護に関わってこなかった側の親に拒否権を与えることになります。
ここで問題になるのは、モラハラ系、DV系の配偶者の場合です。夫が子にも妻にも無関心でさっさと出て行ってしまうような場合は最初から問題にはなり得ません(それでも子が未成年者の場合には議連案は協議離婚そのものを禁止します)。問題なのは、相手配偶者を支配しようとするような夫婦関係の場合、別居にあたって主たる監護者をどちらにするのかについての合意ができなければ別居もできないということになります。夫婦関係は少なからず対等ではない関係があります。
このような夫の場合、最後まで離婚そのものに応じないという場合も少なくなく、そうなると、実質的に離婚が成立するまで別居もできないことになりますが、これがどれほどの苦痛を伴うのかということに想像力を働かせるべきでしょう。
しかも共同養育支援法を前提にするのであれば離婚後は共同親権になるのはともかく、議連案では主たる監護者を決めることになりますが、モラハラ夫と同居しながらの面会、養育計画を作成することになりますから、監護者を父にするとか(母側に監護のために父宅に来させる)、面会交流は自由にさせるなど思う通りに合意を得ることが可能になってしまいます。
これでは離婚とは言いながらも半結婚が継続するということにもなりかねません。
もっとも懸念されるのは、離婚を切り出すことさえ、断念してしまうだろうということです。今であれば子を連れての別居が可能です。その結果、弁護士や多くの第三者の支援を受けることも可能にします。
しかし、「連れ去り」が犯罪化された場合、子を連れて出れば刑罰が科せられるかもしれないとなれば、誰もが子を連れて出ることを萎縮してしまいます(逮捕されれればそれこそ子から引き離されます)。
このように特に問題なのは、DVやモラハラ系の配偶者によって抑圧されている場合です。何か言われるだけで萎縮してしまい、従属させられています。別居を前提にしなければ自らの意思表明さえても困難です。これでは離婚すら口にできないでしょう。私がこの共同養育支援法を「離婚阻止法」と考える由縁です。

議連では子の連れ去りとして刑罰まで要求していますが、上述したとおり、子を連れて出ることを萎縮させてしまうのですが、これは暴力を伴うDV案件でさえも子を連れて出ることを萎縮させてしまうというとんでもない内容なのです。
議連案は、他方でDV案件の運用では立証(ここで要求されているのは客観証拠の意味)できなければDV案件とするなと主張していますが、そうなると暴力行為があっても客観証拠がないような場合には、DV事案とは扱われません。暴力を受けたとして子を連れて出ても、DVによる暴力を立証できなければ「連れ去り」として逮捕されかねないリスクを判断しなければならないことになります。
すべてのDVに場合に客観証拠があるわけではなく、しかも議連案は暴力DV案件に限定されてしまっていますから、もはや子を連れて出ること自体を不可能にしてしまうのです。
このように、子を連れて出ることに対する萎縮効果はDVの中の暴力事案ですら絶大になります。
上述のとおり、配偶者と同居しながらでは弁護士に依頼して解決することも困難にする可能性があります。
同意がない以上、実際には別居ができません。乳児や幼児を置いての別居などできませんから別居自体を不可能にするのですが、このような状態で弁護士に依頼し、弁護士を交渉の窓口にしたところで無意味になります。つまり、相手方配偶者(夫)にしてみれば、弁護士などを交渉の対象とするよりは、同居している目の前に同居の配偶者(妻)を相手にした方がやりやすく、さらには配偶者(妻)にその依頼した弁護士を解任させればよく、それは同居しているのだから極めて簡単になります(これまでも別居した配偶者にコンタクトをとろうとするモラハラ配偶者は少なくなく、弁護士を解任させようと躍起になっていましたが、別居していると所詮は負け犬の遠吠えでしかなく、その「威力」は限定的でした。)。
家庭内のことですから外部にはわかりませんから、こうしたことは簡単なのです。特にDV系やモラハラ系の被害者が過度に抑圧されてきた場合に容易に夫の元に戻ってしまう場合もあることを想定すればわかることです。
何よりもそもそもの出発点が誤っています。裁判所は、「連れ去ったもん勝ち」のような運用はしていません。
監護の継続性とは、同居時のものからであって、別居時からのものでなく、離婚後の共同親権推進論者には全く理解されていないことが一番の問題です。
大きく誤解しているのか、敢えて虚偽の主張をされているのかという問題はありますが、家裁でいう監護の継続性は別居時からのもので判断しているという事実はありません。
「Q 離婚後の親権は、連れ去った側に有利な運用になっていませんか。」
こうした誤った評価を元に連れ去り禁止を規定するのは誤りです。
議連案は、こうした裁判所の運用とは無関係に刑罰をもって「連れ去り」を禁止せよと主張しているのですから、現状の不都合を是正するという次元を超えたものと言わざるを得ず、この共同養育支援法が離婚阻止法たる由縁です。
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A 共同養育支援議員連名が押し進める共同養育支援法では別居にあたっての「連れ去り」を禁止しています。
「連れ去り」を禁止する背景に議連では、裁判所が離婚に伴い指定する親権者は、「連れ去り」もん勝ちという認識があります。要は家庭裁判所は、別居にあたって最初に連れ出した方が監護の継続性を理由に親権者として指定しているから、その別居時の「連れ去り」を禁止する必要があるというのです。
「求める立法」には次のように記載されています。
先進諸国では、同意なく子どもを連れ去ることは、重い刑罰に処せられることが一般的です。連れ去りが損になる様なことはあっても、法的に得となる様なことは有り得ません。 日本の様に、最初の連れ去りは司法が結果として促進し、連れ戻しは逮捕される、この様なことが道義的にあって良いのでしょうか? これが法の正義でしょうか? 日本は諸外国から子どもの拉致大国と、極めて不名誉な呼ばれ方をされています。 アメリカでは日本を主たるターゲットとした経済制裁をも含む法案が準備されています。 各国は、日本の連れ去った者勝ちの様な状況を明らかな人権侵害とみなしています。 同意なく子どもを連れ去った場合には、子どもを元の場所に速やかに戻し、子どもの養育について話し合うべきです。それが実現できない際には、刑罰に処されるべきです。 私たちは日本での学校教育もしくはその後の社会人生活において、連れ去った者勝ちという様な考え方は一切学んできませんでした。連れ去った者勝ちに結びつく考え方は、日本人の道徳観に反していると確信しています。 ●父母は正当な理由がない限り、他方の親の同意なく、子の連れ去りをしてはならない。なお、正当な理由とは厳格かつ証拠に基づくものでなければならない。 ●子を連れ去った場合には、直ちに子を元の居住地に戻し、子の養育について話し合う。父母間で協議が整わない場合は、裁判所が、子の最善の利益に則り、これを判断する。 ●速やかに両親と子どもの親子交流を担保する。 ● 子の連れ去りを助長する監護の継続性を判断基準から除外する。 |
刑罰まで科せと主張するもので極めて強権的な制裁となっています。後にみるDV案件の運用の見直し(厳格な運用と精神的DVはDVにあらず等)とも相まって子を連れての別居は不可能になります。
ここでは子の視点は全くありません。あくまで子の「連れ去り」の禁止とそれに対する制裁という観点があるのみです。
別居時に子を連れて出ることを他方配偶者の同意を要件としてしまえば、これまで監護に関わってこなかった側の親に拒否権を与えることになります。
ここで問題になるのは、モラハラ系、DV系の配偶者の場合です。夫が子にも妻にも無関心でさっさと出て行ってしまうような場合は最初から問題にはなり得ません(それでも子が未成年者の場合には議連案は協議離婚そのものを禁止します)。問題なのは、相手配偶者を支配しようとするような夫婦関係の場合、別居にあたって主たる監護者をどちらにするのかについての合意ができなければ別居もできないということになります。夫婦関係は少なからず対等ではない関係があります。
このような夫の場合、最後まで離婚そのものに応じないという場合も少なくなく、そうなると、実質的に離婚が成立するまで別居もできないことになりますが、これがどれほどの苦痛を伴うのかということに想像力を働かせるべきでしょう。
しかも共同養育支援法を前提にするのであれば離婚後は共同親権になるのはともかく、議連案では主たる監護者を決めることになりますが、モラハラ夫と同居しながらの面会、養育計画を作成することになりますから、監護者を父にするとか(母側に監護のために父宅に来させる)、面会交流は自由にさせるなど思う通りに合意を得ることが可能になってしまいます。
これでは離婚とは言いながらも半結婚が継続するということにもなりかねません。
もっとも懸念されるのは、離婚を切り出すことさえ、断念してしまうだろうということです。今であれば子を連れての別居が可能です。その結果、弁護士や多くの第三者の支援を受けることも可能にします。
しかし、「連れ去り」が犯罪化された場合、子を連れて出れば刑罰が科せられるかもしれないとなれば、誰もが子を連れて出ることを萎縮してしまいます(逮捕されれればそれこそ子から引き離されます)。
このように特に問題なのは、DVやモラハラ系の配偶者によって抑圧されている場合です。何か言われるだけで萎縮してしまい、従属させられています。別居を前提にしなければ自らの意思表明さえても困難です。これでは離婚すら口にできないでしょう。私がこの共同養育支援法を「離婚阻止法」と考える由縁です。

議連では子の連れ去りとして刑罰まで要求していますが、上述したとおり、子を連れて出ることを萎縮させてしまうのですが、これは暴力を伴うDV案件でさえも子を連れて出ることを萎縮させてしまうというとんでもない内容なのです。
議連案は、他方でDV案件の運用では立証(ここで要求されているのは客観証拠の意味)できなければDV案件とするなと主張していますが、そうなると暴力行為があっても客観証拠がないような場合には、DV事案とは扱われません。暴力を受けたとして子を連れて出ても、DVによる暴力を立証できなければ「連れ去り」として逮捕されかねないリスクを判断しなければならないことになります。
すべてのDVに場合に客観証拠があるわけではなく、しかも議連案は暴力DV案件に限定されてしまっていますから、もはや子を連れて出ること自体を不可能にしてしまうのです。
このように、子を連れて出ることに対する萎縮効果はDVの中の暴力事案ですら絶大になります。
上述のとおり、配偶者と同居しながらでは弁護士に依頼して解決することも困難にする可能性があります。
同意がない以上、実際には別居ができません。乳児や幼児を置いての別居などできませんから別居自体を不可能にするのですが、このような状態で弁護士に依頼し、弁護士を交渉の窓口にしたところで無意味になります。つまり、相手方配偶者(夫)にしてみれば、弁護士などを交渉の対象とするよりは、同居している目の前に同居の配偶者(妻)を相手にした方がやりやすく、さらには配偶者(妻)にその依頼した弁護士を解任させればよく、それは同居しているのだから極めて簡単になります(これまでも別居した配偶者にコンタクトをとろうとするモラハラ配偶者は少なくなく、弁護士を解任させようと躍起になっていましたが、別居していると所詮は負け犬の遠吠えでしかなく、その「威力」は限定的でした。)。
家庭内のことですから外部にはわかりませんから、こうしたことは簡単なのです。特にDV系やモラハラ系の被害者が過度に抑圧されてきた場合に容易に夫の元に戻ってしまう場合もあることを想定すればわかることです。
何よりもそもそもの出発点が誤っています。裁判所は、「連れ去ったもん勝ち」のような運用はしていません。
監護の継続性とは、同居時のものからであって、別居時からのものでなく、離婚後の共同親権推進論者には全く理解されていないことが一番の問題です。
大きく誤解しているのか、敢えて虚偽の主張をされているのかという問題はありますが、家裁でいう監護の継続性は別居時からのもので判断しているという事実はありません。
「Q 離婚後の親権は、連れ去った側に有利な運用になっていませんか。」
こうした誤った評価を元に連れ去り禁止を規定するのは誤りです。
議連案は、こうした裁判所の運用とは無関係に刑罰をもって「連れ去り」を禁止せよと主張しているのですから、現状の不都合を是正するという次元を超えたものと言わざるを得ず、この共同養育支援法が離婚阻止法たる由縁です。
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