ストーカーに対する有効な対処はあるのか
- 2012/01/05
- 13:15
昨年末、2つのニュースがありました。
1つは、DV加害者に対し、郵便局員が女性の転居先を教えてしまったというものです。
もう1つは、DV加害者が、女性の母親と祖母を殺害した事件です。
どちらも共通しているのは、当初は警察が関与し、前者は家宅捜索、後者は「警告」をしていたというものです。
しかし、そのような警察もデモンストレーションは全く役に立たず、後者に至っては親族が殺されるに至ったというものです。
なお、ここで問題にするのは、DV被害者が被害に遭わないようにするにはどうすべきかという視点で論じるものであり、今回、逮捕された容疑者が有罪であることを前提にするものではないことをお断りさせて頂きます。
さて、一度、DV加害者につけ狙われた場合(要は、ストーカー行為です。)、事前に被害に遭わないような保障がなければ、保護としては意味がありません。
後者の事件では、有罪となれば、死刑または無期刑が予想されますから、そうなれば、現実にはDV加害者が出所することは、ほぼないでしょうから、三女は、身の安全は守られることにはなります。
しかし、それは、母と祖母が殺害されたという被害を受けた上でのことです。
死刑制度も抑止にはなっていないことがわかります。警察の警告などは、役所の仕事の一環に過ぎませんから、全く抑止にはなりません。
警察に相談して一番に言われることが、事件性がないということ、つまり、殴られたりしていないから警察は対応できないというものです。
このような警察の対応が、DV加害者をつけ上がらせ、重大事件を引き起こしていると言われて久しいですが、警察の対応はあまり変わっていないようです。
一昨年、石巻で起きた少年(DV加害者)による殺人事件(昨年、死刑判決)で、被害者が被害届の提出をためらい、他方で、警察が被害届の提出にこだわって適切な捜査を怠ったことに対する批判が起きたため、警察庁は、被害届という「形式」にこだわらずに積極的に処理するという「運用」にするということこを表明しました。
もともと、警察の捜査には、被害届は不要です。犯罪の端緒があれば捜査するのが警察の責務です。それを怠ってきたのが警察なのです。
しかし、今回の事件は、被害者側が要請しているにもかかわらず、警察が性懲りもなく、「被害届を1週間待ってほしい。」「容疑者を逮捕できない。」などと対応していたようです。
ましてや、「二度と暴力は振るわない。」と約束させていたとありますが、そこでいう「約束」には、何の意味もありません。約束を守らせる担保がないからです。
DV加害者に対し、「約束」させたから今後は大丈夫と思っているのであれば、あまりにお粗末というべきでしょう。
その意味では、警察の失態は大きいし、事なかれの体質は、すぐに変わるものではないのかもしれません。
問題は、当初から警察が毅然とした対応をしていれば、かかる犯罪は防げたのでしょうか。
防げる犯罪もあるかもしれませんが、防げない場合も少なくないのではないかもしれません。例えば、当初の暴力行為に対し、逮捕等により身柄を拘束し、有罪とされた場合、それで収まったのかという問題です。
このような暴行ないしは傷害の罪では罰金で終わることも多く、仮に懲役刑がついたとしても執行猶予、あるいは長期の実刑はありえず、いずれ短期間で自由の身になります。
そうなると、再び付け狙われる可能性があるばかりか、以前にも増して、ストーカー行為が増幅しているかもしれません。
DV被害者の立場からすれば、何か起きる前に、生涯に渡って拘禁しておいて欲しいと思うでしょう。いつどこで狙われて殺されてしまうかもわからないからです。
しかし、現実に予防拘禁制度を設けることは、戦前ならいざ知らず、現代社会では困難です。仮に、その予防拘禁が間違っていたら、何ら犯罪も犯さず、犯そうともしていない者を疑いだけで身柄を拘束されることになってしまうからです。ストーカーかどうかの判断基準、さらには、それを客観的に判別しうるのかという点が問題です。
さて、このようなストーカー行為に対し、有効な対処方法が見いだせるのでしょうか。
ストーカー行為は極めて現代的であると思われます。一昔前であれば、移動手段も限られていたし、何よりもストーカー行為を行うには時間と金がかかります。ストーカー行為は、一定、豊かになった社会でなければ実現できません。
またコミュニケーション能力の落ちた現代社会ならではの現象でもあります。
このような行為に対し、厳罰(死刑)でしか対処し得ないような社会、あるいは怪しいと思われる人を片っ端から予防拘禁しなければならないような社会では、いずれにせよ未来がありません。
社会の病理そのものを変えていく必要があります。
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1つは、DV加害者に対し、郵便局員が女性の転居先を教えてしまったというものです。
もう1つは、DV加害者が、女性の母親と祖母を殺害した事件です。
どちらも共通しているのは、当初は警察が関与し、前者は家宅捜索、後者は「警告」をしていたというものです。
しかし、そのような警察もデモンストレーションは全く役に立たず、後者に至っては親族が殺されるに至ったというものです。
なお、ここで問題にするのは、DV被害者が被害に遭わないようにするにはどうすべきかという視点で論じるものであり、今回、逮捕された容疑者が有罪であることを前提にするものではないことをお断りさせて頂きます。
さて、一度、DV加害者につけ狙われた場合(要は、ストーカー行為です。)、事前に被害に遭わないような保障がなければ、保護としては意味がありません。
後者の事件では、有罪となれば、死刑または無期刑が予想されますから、そうなれば、現実にはDV加害者が出所することは、ほぼないでしょうから、三女は、身の安全は守られることにはなります。
しかし、それは、母と祖母が殺害されたという被害を受けた上でのことです。
死刑制度も抑止にはなっていないことがわかります。警察の警告などは、役所の仕事の一環に過ぎませんから、全く抑止にはなりません。
警察に相談して一番に言われることが、事件性がないということ、つまり、殴られたりしていないから警察は対応できないというものです。
このような警察の対応が、DV加害者をつけ上がらせ、重大事件を引き起こしていると言われて久しいですが、警察の対応はあまり変わっていないようです。
一昨年、石巻で起きた少年(DV加害者)による殺人事件(昨年、死刑判決)で、被害者が被害届の提出をためらい、他方で、警察が被害届の提出にこだわって適切な捜査を怠ったことに対する批判が起きたため、警察庁は、被害届という「形式」にこだわらずに積極的に処理するという「運用」にするということこを表明しました。
もともと、警察の捜査には、被害届は不要です。犯罪の端緒があれば捜査するのが警察の責務です。それを怠ってきたのが警察なのです。
しかし、今回の事件は、被害者側が要請しているにもかかわらず、警察が性懲りもなく、「被害届を1週間待ってほしい。」「容疑者を逮捕できない。」などと対応していたようです。
ましてや、「二度と暴力は振るわない。」と約束させていたとありますが、そこでいう「約束」には、何の意味もありません。約束を守らせる担保がないからです。
DV加害者に対し、「約束」させたから今後は大丈夫と思っているのであれば、あまりにお粗末というべきでしょう。
その意味では、警察の失態は大きいし、事なかれの体質は、すぐに変わるものではないのかもしれません。
問題は、当初から警察が毅然とした対応をしていれば、かかる犯罪は防げたのでしょうか。
防げる犯罪もあるかもしれませんが、防げない場合も少なくないのではないかもしれません。例えば、当初の暴力行為に対し、逮捕等により身柄を拘束し、有罪とされた場合、それで収まったのかという問題です。
このような暴行ないしは傷害の罪では罰金で終わることも多く、仮に懲役刑がついたとしても執行猶予、あるいは長期の実刑はありえず、いずれ短期間で自由の身になります。
そうなると、再び付け狙われる可能性があるばかりか、以前にも増して、ストーカー行為が増幅しているかもしれません。
DV被害者の立場からすれば、何か起きる前に、生涯に渡って拘禁しておいて欲しいと思うでしょう。いつどこで狙われて殺されてしまうかもわからないからです。
しかし、現実に予防拘禁制度を設けることは、戦前ならいざ知らず、現代社会では困難です。仮に、その予防拘禁が間違っていたら、何ら犯罪も犯さず、犯そうともしていない者を疑いだけで身柄を拘束されることになってしまうからです。ストーカーかどうかの判断基準、さらには、それを客観的に判別しうるのかという点が問題です。
さて、このようなストーカー行為に対し、有効な対処方法が見いだせるのでしょうか。
ストーカー行為は極めて現代的であると思われます。一昔前であれば、移動手段も限られていたし、何よりもストーカー行為を行うには時間と金がかかります。ストーカー行為は、一定、豊かになった社会でなければ実現できません。
またコミュニケーション能力の落ちた現代社会ならではの現象でもあります。
このような行為に対し、厳罰(死刑)でしか対処し得ないような社会、あるいは怪しいと思われる人を片っ端から予防拘禁しなければならないような社会では、いずれにせよ未来がありません。
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