法科大学院の未修コースは、本来の法科大学院の中核であったはずなのに、その低迷振りは、もはや誰もが制度設計の失敗を認めざるを得ない状態ではないでしょうか。法科大学院制度を推進している方々の勇ましい口ぶりはともかく、内心では失敗は認めているのではないでしょうか。
2020年7月7日に開催された文科省法科大学院等特別委員会を傍聴しました(ネット配信)。
「
法科大学院等特別委員会(第97回)配布資料」
志願者数についての説明が文科省からありました。
2020年度は8,161人 昨年度が9,117人なので減少しているのですが、文科省の説明は、比較対象は一昨年度の2018年度の8,058人であり、これと比較すると底を打ったという評価でした。
2019年度は適性試験が廃止されたために志願へのハードルが減ったため、一時的に増加しただけということで比較対象ではないというのですが、適性試験がないのは今年度も同じであり、逆にいえば適正試験廃止の効果もほんとどなかったということでしょうか。
未修者コースについての議論がメインでした。
弁護士の酒井圭委員が提案した改革案を中心に議論がなされていました。
「
法科大学院未修者コース改革案」(PDF)
ICTの活用により社会人出身者にも受講可能なようにすることが大事だとしています。
【以下、抜粋】
「現在,夜間 LS が減少しており,就業を継続したまま LS への進学を希望する社会人学生を受け入れる体制がおよそ整備されているとはいえない状況にある。多様なバックグラウンドを生かし,法曹・有資格者として活躍する人材を確保するためには,時間に制約されない授業体制の構築が必須であり,これにより社会人からの法科大学院進学希望者を確保することが期待できる。
特に社会人から法科大学院への進学を検討する際に,未修コース 1 年次の法律基礎科目を,無理なく自分のペースで修学できる体制が用意されていることの意義は大きいであろうし,自身の適性を見極める意味でも,未修 1 年次は完全な兼業体制としながら修学したいというニーズも大きいと思われる。
以上の観点から,具体的には,以下の方法により未修 1 年次の法律基礎科目を中心に,オンデマンド方式による授業を実施することを提案する。」
2020年7月22日撮影 予備校の授業を受けているのとどこが違うのでしょうか。法科大学院であることの特色はすべて切り捨て去ったという提案です。オンデマンド方式では、そこには双方向でもなければ教員の存在も遠く、学友もいません。
もともと双方向である必要性も必然性もありませんでした。専門職大学院としては少人数での手取り足取りの教育が想定されていましたが、それを双方向と言ってしまえば、それでもいいのですが、そうした特色は一切、なくなることになります。
これらの提案を受け、委員の方々の発言がなされるのですが、発言の趣旨を商会すると、
●各法科大学院でこうした授業を用意することは困難
●誤解を恐れずにいえば、最適なものが1つあればいい
●拠点となる法科大学院が作成し、それを提携の地方の法科大学院で活用する
●法科大学院協会が人材を集めて作成すればいい
確かに未修コースの1年目は、既修の入学レベルに1年間で身につけさせるということにはなっています。未修コースの入試には法学の問題は御法度ですから(←やはりここに限界があるのでは?)、そうなると1年間という期間は全く法学を知らないという入学者に1年間で教え込む、ということになると、そこには最善の教えた方があるというのはよくわかります。
それぞれ法科大学院で工夫するということもあるのかもしれませんが(北大の法科大学院では民事法、刑事法の基礎ゼミが売りでした。)、法科大学院全体の到達点というものはあるはずで、一線級の学者が作り上げるということには大いに意義があります。
しかし、オンデマンド方式ということになれば一方的な配信です。
司法試験予備校との違いが出て来るでしょうか。司法試験予備校も基礎学力の引き上げという意味では相応の実績はありました。理解しやすいようにするという工夫です。
目指すところは同じなので、行き着くところではそこに大差なしということになることこそ必然だと思うのですが、いかがでしょうか。
そうしたことが未修コース、しかも社会人入学の志願者を増やすことにはなるとは思えません。
コロナの影響もあるかとは思いますが、やはり未修コース廃止も検討事項に入れるべきでしょう。
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なんていう需要はなかったし、制度設計を考えるのであれば、ここまでの惨状になってしまったのですから、政府(文科省)は現実から逃避してはいけません。
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