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捜査関係事項照会に対する公立図書館等の対応に関する意見
2020年12月24日01:48
捜査関係事項照会に対する公立図書館等の対応に関する意見

                                2020年(令和2年)12月23日
                                札幌弁護士会 会長 砂 子 章 彦

意見の趣旨

 当会は、捜査機関に対し、図書館利用者がいかなる図書に関心を持ち、いかなる図書の貸し出しや閲覧をしたかという情報を取得する場合は、刑事訴訟法218条に基づく捜索差押等の手続を取ることを求めるとともに、各公立図書館、各大学図書館に対し、令状を伴わない捜査関係事項照会に応じて、利用者に関する上記情報を提供することのないよう求める。

意見の理由

2017(平成29)年4月、苫小牧市立中央図書館が苫小牧署の捜査関係事項照会に応じ、特定の図書館利用者の貸出履歴などを情報提供していたことが2018(平成30)年10月頃、報道された。その後、北海道内のみならず、全国各地において、同様の事例が確認され、相次いで報道された。
 図書館の利用に関する照会は、利用者のプライバシー権に関わる重要な問題である。
 そこで、当会は、2020(令和2)年3月、実態を調査するため、札幌弁護士会管内の市町村の基幹図書館及び大学図書館合わせて102館に対して、令状によらない捜査関係事項照会を受けたことがあるか、アンケート調査を行った。
 回答があった43館のうち10館が、捜査機関から捜査関係事項照会を受けたことがある、と回答し、そのうち5館は照会事項に対して回答した、と答えた。
 回答の内容は、①特定個人の貸し出しの有無及びその履歴、②特定個人の登録情報及び利用履歴、③特定図書の貸し出しにかかる詳細、④特定個人の図書館資料複写申請書の有無など、極めて多岐にわたっていた。
 また、各図書館からは、照会に回答するか否かに関して厳しい判断を迫られているとの声や、統一的な対応基準を求める意見なども寄せられた。

 全国の公立図書館、学校図書館などが加入する公益財団法人日本図書館協会は、「図書館の自由に関する宣言」(1954(昭和29)年採択、1979(昭和54)年改訂)において、以下のとおり定めている。

「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

  第1 図書館は資料収集の自由を有する
  第2 図書館は資料提供の自由を有する
  第3 図書館は利用者の秘密を守る
  第4 図書館はすべての検閲に反対する

 図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。」

 さらに、1994(平成6)年11月に採択されたユネスコ公共図書館宣言は、公共図書館は、「教育、文化、情報の活力であり、男女の心の中に平和と精神的な幸福を育成するための必須の機関である」と謳う。
 公共図書館は、住民であれば誰でも無料で等しく利用が可能であり、社会教育の場として、利用者の知る権利(憲法13条)、学問の自由(憲法23条)、教育を受ける権利(憲法26条)を保障している。
また、図書館を通じて、政治・経済を含めた広範な分野の情報を入手できることで参政権(憲法15条)を実質的に保障している側面もある。
 このように公共図書館は、知の源泉として、日本国憲法に深く背景をもつ社会教育施設であるといえる。図書を読み、知見を得て、新たな世界に触れ、自らの考えを形成することは、民主主義社会の発展においてきわめて重要な役割を果たしている。
 歴史を振り返っても、日本が国際連盟を脱退した1933(昭和8)年、図書館令が改正され、国策に沿わない図書の利用が禁止され、図書の閲覧票が憲兵隊による思想調査の対象とされるようになった。わが国において、自由に図書を読むことができない時代があったことは深く記憶されなければならない。
「図書館の自由に関する宣言」に謳われた「図書館の自由」は、図書館利用者が自由に本を読むことができるか否かに直結している。捜査機関による捜査関係事項照会に対する回答が行われることは、「図書館は利用者の秘密を守る」との図書館の任務が侵害されている状況といえる。

 捜査機関が、捜査関係事項照会を行う根拠は「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と定めた刑事訴訟法197条2項である。
 一方、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律8条1項は、「行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない」と定め、地方公共団体の個人情報保護条例にも同様の規定が置かれている。
 総務省は、捜査関係事項照会は、同条の「法令に基づく場合」に該当し、個人情報の利用提供禁止の例外にあたるとしている。
 しかし、図書館利用者がいかなる図書に関心を持ち、いかなる図書の貸し出しや閲覧をしたかという情報(以下、「図書館利用情報」という。)は、当該利用者の思想や信条を推知させうるもので、内心に関わる極めてセンシティブな情報である。
 こうした図書館利用情報は、憲法13条に基づき保障されるプライバシー権や、憲法19条によって保障される思想・良心の自由により保障されるものであり、これを本人の同意なく開示することは、プライバシー権及び思想・良心の自由を侵害するものである。
 したがって、捜査機関が犯罪捜査のために利用者の同意なく図書館利用情報の開示を求めることは、強制処分として令状主義に服するものというべきであり、捜査機関は刑訴法218条の規定による捜索差押として行われなければならない。

 当会は、社会における図書館の重要性が広く共有され、利用者一人一人のプライバシー(憲法13条)及び思想良心の自由(憲法19条)が守られ、図書館が社会においてさらに発展的な役割を果たしていくために、北海道警察が図書館利用情報に関して安易に令状を伴わない捜査関係事項照会を図書館に行っている現状、さらに、こうした捜査事項照会に応じている公立図書館、大学図書館が存することを憂慮し、意見の趣旨のとおり述べる。
                                           以上

弁護士会②


※一部誤りがあり、訂正しました。
意見の理由第2項
 (誤)「図書館の自由に関する宣言」(1954(昭和29)年採択、1971(昭和46)年改訂)
 (正)「図書館の自由に関する宣言」(1954(昭和29)年採択、1979(昭和54)年改訂)



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