日弁連(宇都宮健児会長)は、2012年3月の理事会で、「
法曹人口政策に関する提言 」を承認し、発表しました。
主文自体が長いので、以下は、その骨子となりますが、
① 弁護士のアイデンティティは、高度の専門性と公益的性格にあり、それから導かれる「質」を確保するためには、必要な水準に達しない者にまで弁護士資格を付与することがないように、司法試験の合格者数を、法曹養成制度の成熟度に見合うものにすべきである。
② 司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定)のうち「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」との指針を示した部分は、現状ではもはや現実的ではなく、抜本的に見直す必要がある。
③ 司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである。
司法試験合格者の減員は法曹人口の減少を意味するものではなく、増員ペースの問題である。1500人にまで減員しても、2027年頃には法曹人口5万人、2053年頃には63000人程度で均衡する。1000人に減員しても、2043年頃には同約49000人に達し、2053年頃には42000人程度で均衡する。
④ 将来的な法曹人口は、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しながら、検討されるべきで、司法試験合格者数についても定期的に検討すべきである。
この提言の中で一番、重要なのは、「
まず1500人にまで減員し 、」とあるところです。
これは、「当面1500人程度まで」となっていたものを、会内の批判の声が強かったことから、「当面」を「まず」、「程度」を削除し、より強い表現にしたものです。
さらには、1000名にした場合も触れていることが特徴です。これまでの日弁連の法曹人口に関する提言の主文に1000名という数字が出たことはありません。
この「まず1500人」を表明したことは、2000名の状態で放置できる状態ではないということの表明です。
さらなる減員は、その状況を見てからというのが、なお日弁連内の激増推進派の影響力を見せつけているところですが、少なくとも、この「まず1500人」を打ち出したことは、
さらなる減員を視野においてあるものであり 、これまでの日弁連からみるならば、非常に画期的なことです。
そして、何よりも、2002(平成14)年の3000人を目標とした
閣議決定の見直し を求めていることです。
現状の司法試験年間合格者数は、2000名強となっていますが、この数字がとにもかくにも維持されているのは、この閣議決定があるからです。
宇都宮現執行部となってから、2年が経ちましたが、ようやく
目に見える形で日弁連の意思統一を成し遂げた と言えるでしょう(もちろん、さらなる前進が必要です。)。
この間の出来事といえば、昨年3月の理事会では「相当数の減員」というように、激増推進派の影響力をもろに受け、非常に中途半端な提言にしかなりませんでしたが、さらに1年を掛けて、「まず1500人」、そしてさらなる検証への道筋が付けられたのは、宇都宮現執行部の誕生、政権交代があったからこそです。
しかも、この提言に対しては、
東京弁護士会、第一東京弁護士会は、1500名以下は認めないという意味での留保付意見、 第二東京弁護士会は、数を明示すること自体に反対 という態度です。
一昨年に派閥候補山本剛嗣氏が日弁連会長になっていたら、今回の提言は絶対に存在しなかったものと言えます。
また、この提言を日弁連が実施していくにあたって、派閥候補の帰属先は、この提言に対しては快く思っていないことは明らかですので(というよりも
派閥の意向そのものです 。)、派閥の領袖(山岸憲司氏)が日弁連会長になった場合には、この1500名の提言の実現のための実のある運動は、絶対に行いません。
(二弁は激増推進、尾崎純理氏の推薦母体としては、全くぶれていません。ぶれたのは尾崎純理氏の表面上の公約のみです。東弁、一弁は、山岸憲司氏が1500名という数字を出さなければ宇都宮健児氏に勝てないのは明白ですが、そのあたりの利害から出された意見といえます。)
今回の「法曹人口政策に関する提言」(まず1500人)を実現させるための運動を、今後の2年間において担うべきなのは、誰か、まさにこれが来るべき日弁連会長再選挙の争点 といえます。
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