新たに弁護士になった新人が地方に行く時代は終わった 15年前とは違う

　司法試験合格者数はいよいよ1500人を切った状態になりました。受験者数が激減しているのですから当然のことです。政府目標は1500人ですが、現状で達成できる見込みはありません。
　司法試験合格者数はさらに減員すべき状況にあります。
「司法試験合格者数をさらに減員することを求める会長声明」（札幌弁護士会）

　ところで、最近の傾向ですが、地方の小規模単位会に新規入会がない、あるいは1人とか2人などの現象が起きています。
　弁護士白書2020年版からのものです。
　札幌会以外の登録者は近年はほとんどありません。





　札幌以外はほぼ増減がありません。その前の段階で倍増したりしていましたから、司法試験合格者数の増員が始まった頃に比べれば、今なお「増加」した状態が維持されているとはいえます。
　しかし、今後、新たに入会者が維持されていく見込みは全くありません。
　そのため地方小規模単位会では新規登録弁護士を雇用したくても応募がないという声も聞きます。
　年俸などの条件面はともかく、弁護士業務を行う場所は重要な選択要素です。弁護士の場合、その土地で営業の基盤を作らなければなりませんから、そう簡単に移転ができません。釧路で開業したけれど、ダメだったから東京に行くか、ということなら、最初から東京で開業する方が間違いなく経済的には「得」になります。
　弁護士の稼動期間はおおよそ４３年とされています。弁護士人口の将来推計はこの４３年を前提にして作成されています。
　今、釧路市、函館市に事務所を構え、その後４３年はその地にいることが想定できるかどうかが問われているわけです。
　北海道の過疎化の進行は極めて早く、４３年後の釧路市、函館市の状況を想像することは困難です。おそらく地元の弁護士も数十年先に展望は持てないのではないでしょうか。
　この状況は北海道特有のものではありません。首都圏以外は、同じ状況があります。地方の都市に新規で登録する弁護士がいるかといえば、まずいません。若干、地元に戻る弁護士がいるくらいではないでしょうか。
　最近は弁護士業界に限らず、東京志向が強く、この流れは変えられません。

　地方に弁護士が行かないから弁護士を増やす、という発想が通用したのは１５年前までです。今はもう通用しません。
　地方の高齢化は、当然にその地域の弁護士の高齢化も招きます。若い弁護士が増えないのは司法試験合格者数が足りないからではありません。
　司法試験合格者数を１５００人では地方に弁護士が行かないから２０００人にしたからといって何も変わりませんし、１５００人の司法試験合格者数を維持しなければならない理由にもなりません。



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