司法試験 能力担保に合格率は関係ないという主張 医学部を例に出すお粗末さ

　司法試験の合格者数は1500人を割り込んだ状態が続いていますが、それでもとにかく1500人は維持したという願望は司法試験委員会からは伝わってきます。
　合格率は年々上がる一方。それは受験者数が減少しているにも関わらず一定数は合格させる以上、そうならざるを得ません。

　そこで危惧されているのが合格水準を下げてでも合格者数を確保しているのではないかということ。一艇の競争倍率があってこそ選抜機能は発揮されるわけですからこの命題自体に誤りはありません。

　しかし、それに難癖をつける一部の法科大学院制度の信奉者たちがいます。

　医師国家試験だって合格率が高くても誰も不思議には思わない、司法試験も旧司法試験と違って今では法科大学院制度があり、そこで教育を受けてきたんだから合格率なんて関係ないでしょ。

　このような発言はつい最近も聞きました。どこで聞いたかは言いませんが、それを聞いたとき、私は何でこんな大ウソを言うんだろうと思いました。
　医師国家試験と司法試験は全く位置づけが違います。その違いを知らないのか知っていての発言なのか、いずれにしても大ウソであることにかわりはありません。

　医師養成数というのは医学部の定員をもって規定されます。
　医師数の検討は医学部の定員、新設などによって論議されていることからも自明のことなのです。
「医師「不足」と医学部の定員増と新設」
「東北に医学部新設で震災「復興」？」

　なので、本来100％の合格率でなければならないのに、合格率が低迷している医学部は本来は大問題なわけです。臨床教育そっちのけで医師国家試験対策をしているという本末転倒な状況が言われて久しいですが、医師養成は医学部とは一体のものです。


2022年3月4日撮影


　しかし、法曹養成は違います。法科大学院課程修了が司法試験受験要件となっていますが、司法試験合格者数とは連動させていません。予備試験という別ルートまであります。
　司法試験は司法修習を受ける前提としてのいわば入所試験です。
　司法制度改革審議会意見書も3000人を目標にすると提言しただけであって、法科大学院の入学者数と司法試験合格者数を一致させるとも述べていません。いずれは7～8割が合格できるようにすると述べられているだけです。
　そもそも7～8割を合格させることができるようにすると言っている時点で司法試験合格者数と法科大学院の入学者数が連動していないことは、はっきりしています。
　医師の場合は本来、全員合格して当然の制度設計です。それでも不合格者が一定数いることの方が問題なのであって、この要請制度は似て非なるものなのです。
　この違いを弁護士が理解していないというのはお粗末としか言いようがありません。

　もっともこの司法制度改革審議会意見書がどのような構想をもっていたのかというのは全く不明です。法曹需要が有り余るほどあって、法曹志望者も沸いて出てくるという前提に立っていたからです。
　それはともかく大事なことは法科大学院の入学定員をもって司法試験の合格者数とはしなかったことです。
　合格率の上昇が持つ意味を考えなければなりません。そこでは選抜機能は果たされていないということです。




ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ