日弁連の法曹人口問題に対する検証結果 逃げの一手は将来に禍根を残す

　日弁連の法曹人口問題に対する検証結果について、2022年3月の理事会で承認され、公表されたのがこれです。

「法曹人口政策に関する当面の対処方針～司法試験合格者数の更なる減員に関する検証結果～」

　これが日弁連の「対処方針」と呼ばれているものですが、この一番の趣旨はは第1項にあります。

　現時点において、司法試験の合格者数に関して、更なる減員を提言しなければならない状況にはない。
　もとより、プロセスとしての法曹養成において質を確保するためには、司法試験の合否の判定についても、近年の合格者数の維持を所与の目標とすることなく、司法試験法第１条に基づいて引き続き厳正に実施されるべきである。


　1月の修正により「もとより」以下が入ったものですが、その経緯は最初の「現時点において、司法試験の合格者数に関して、更なる減員を提言しなければならない状況にはない。」だけでは会内の反対が多かったからです。

　対処方針では、「現時点」において、更なる減員を提言しなければならない状況にはないというように、あくまで現時点に絞っています。
　将来的には日本の人口は今後、減少の一途ですから、このままの増員ペースで良いはずがないのは自明のことで、そこには触れないというのが日弁連執行部の検証のスタンスです。

　札幌弁護士会の検証結果はこちらです。
「法曹人口（司法試験合格者数）の検証結果（札幌弁護士会）」
　札幌弁護士会では2011年11月、司法試験合格者数については1000人にまで減少させるべきという意見書を出し、それから10年近くが経過し、司法修習の終了者の就職難も解消されてきたことから、改めて検証を行ったものです。
　2021年5月に公表した提言書では、今後の日本の人口減少や弁護士需要に鑑みるならば1000人にまで減員する必要があるという結論に変更はないと結論付けています。


2022年3月19日撮影


　日弁連の言うように「現時点」というは全く意味がありません。
　今、弁護士になれば普通は43年間は弁護士であり続けます。一旦、増加したものを減らすということはできず、司法試験合格者数の減員による効果が生じるのは43年後になります。
　その意味では「現時点」という考え方は、極めて危ういものであり、それは「減員しない」という意思表示にほかなりません。
　ところで「もっとも」以降が加わりましたが、これも司法試験合格水準に達していなければ現状の1500人ではダメと当たり前のことを言っているに過ぎず、さらなる減員は求めないということに変わりありません。
　この文言は、「法曹養成制度改革の更なる推進について」（平成27年6月30日）で示されたものと同趣旨のものです。
「新たに養成し、輩出される法曹の規模に関するこの指針は、法曹養成制度が
法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある。」

　この政府の方針は、1500人を目標とし、しかし、そのために数ありきではないとしたものであり、後者は当然のことを述べたに過ぎません。日弁連の対処方針の第1項の「もっとも」以下も同様のものであって、これがついたことによって1500人ありきではない、としたというのはそのとおりであったとしてもさらに減員を提言するものでないことははっきりしています。
　とにかくこれは1500人を死守したという日弁連執行部の強い決意の表れといえます。
　これも自明のことですが、背後にはさらに司法試験合格者数が減員となった場合には法科大学院制度が成り立たなくなるという危機感があります。

　法科大学院制度死守のための1500人維持という方針、果たして本当にこれで良いのでしょうか。




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