消費税大増税と整備新幹線の認可

　消費税法案が衆議院本会議で可決されると、何故か、翌日には、北陸、長崎、北海道の各整備新幹線の建設が認可されました。
　まだ消費税法案が参議院を通ってはいないとはいえ、この時期に整備新幹線の建設の認可とはかなり露骨です。
　もともと、民主党のマニフェストでも、このような無駄な公共事業は削減の対象でした。どう考えても、グローバル化した企業にとって、北陸、長崎、北海道各新幹線が必要とは思えません。特に長崎、北海道両新幹線などは、観光客誘致などと言っているのですから、いかにもローカル新幹線なのであって、明らかな無駄使いなのです。
「北海道新幹線は、北海道の利益になるのか？」

　民主党のマニフェストは、反構造改革の部分とその財源のために無駄を省くという部分というものが入り混ざったものでした。
　2009年9月、民主党鳩山政権が誕生し、新自由主義者の前原誠司国交相（当時）が八ッ場ダム建設中止や、北海道新幹線についても白紙にしました。
　もちろん、建設中止体は無駄な公共事業をなくすことであり、地方の切り捨てでありません。大手ゼネコンが儲かるだけのもので、地元には多少のおこぼれがあるだけだからです。
　大手ゼネコンのために無駄な公共事業を続けるよりは、それを福祉政策に支出すべきものです。
　整備新幹線の建設も同様です。このような無駄な公共事業に使うよりも、福祉政策に使う方が国民の利益にかないます。

　もともと、新自由主義（構造改革）を求める財界は、このような無駄な公共事業についても敵視していました。
　しかし、構造改革を断行しようとする野田政権が、ＴＰＰを断念するばかりでなく、このような無駄な公共事業を再開しようとするは、これ自体も一種の路線転換ということになります。
　消費税増税自体は、構造改革に不可欠のものであり、大企業の負担軽減のための財源です。決して、無駄な公共事業を遂行するための財源ではありません。
　しかし、前述したとおり、民主党鳩山政権によって、八ッ場ダム建設中止を決めると、地元や関係する知事らの猛反発が出ました。
　さらには、整備新幹線の建設を巡っては、地元からの「強い」要請が続きます。
　地元の反発はありましたが、このような無駄な公共事業を中止することに対する国民の支持は決して小さなものではなく、本来であれば、それを地元に対する説明のもと、中止を維持すべきでした。
　ところが鳩山政権が倒れると、その後に政権の座についた菅直人は、これまで福祉政策を撤回するだけでなく、無駄な公共事業とされたものを再開していきます。
　一見すると構造改革には無駄と思える公共事業を何故、再開したのか。
　経団連は、整備新幹線建設認可を2009年に求めているようですが（経済危機からの脱却に向けた緊急提言（2009年3月9日））、それ以降は整備新幹線建設に対する言及は、北陸新幹線の大阪までの開通を求めるだけで（第38回北陸地方経済懇談会後の共同会見における米倉会長発言要旨2011年11月8日、第37回北陸地方経済懇談会後の共同会見における米倉会長発言要旨2010年10月26日）、長崎、北海道両親幹線についてはコメントがありません。新幹線技術の輸出の項目があるだけです。

　民主党の2009年のマニフェストにも新幹線の文字はありません。本来的には無駄な「コンクリート」であり、建設中止としたいところなのでしょうが、その時点でマニフェストに記載すれば地方票が離れるだろうという、集票との関係では微妙な問題だからと思われます。

　ところが、野田内閣は、整備新幹線建設を認可しました。
　１つには、財界とマスコミの支持を受けようが、現実には構造改革だけを断行することによって国民の支持は離れていきます。それゆえに財界とマスコミの支持だけでは政権基盤を確保することはできません。特に地方の財界からの支持はなくなってしまいます。
　そのため、旧来の自民党が用いていた手法、地方に対する利益分配政治の一部復活させることでした。
　もう１つには、そのような財源についても消費税大増税で埋めてしまおうということです。すべてのつけは、国民に回してしまおうというのですから、あまりに乱暴です。
　ところで、野田内閣にとっては、その支持率からみても、民主党支持率からみても、この整備新幹線の建設を進めたからといって、地方の支持を回復できるとは思えません。
　要は死に体となった野田内閣が、最後の悪あがきをしている状態です。麻生内閣の定額給付金と同じです。
　死に体となった政権が、どのような大盤振る舞いをしようと、それによって支持を回復できるはずがないのですが、さらに大きなツケを将来の国民に残すことになりました。

　札幌などの地方は、整備新幹線建設認可によって、一部の者がはしゃいでいます。
　高橋はるみ知事は、「長年の悲願である札幌延伸の正式決定は、北海道にとって歴史的な出来事であり、道民のみなさまと喜びを分かち合いたい」（北海道新聞2012年6月29日夕刊）だそうです。
　しかも、出来上がる予定は、2035年だそうですが、予定は当然に遅れるもの、北海道新幹線ができたころには、引退しているか他界しているような年寄りたちが自分たちの頭の中に描いた妄想を膨らませているだけで、借金だけを後世に残す、しかも消費税大増税とともにですから、悪質としかいいようがありません。



ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。


にほんブログ村


人気ブログランキングへ