1994年に小選挙区(比例代表並立制)が導入され、1996年には、小選挙区による選挙が実施されました。
従前は、中選挙区制でしたが、この選挙制度がやり玉に挙げられ、小選挙区制が導入されたものです。
当時は、中選挙区制こそが汚職を生むだとか、自民党の派閥政治を助長しているのだという言われ方がしていました。決まり文句は、長年、中選挙区制のもとで選挙をやってきたことから、中選挙区制は制度疲労とか、政権交代を可能にするとか、いう主張でした。
このような主張は、御用政治評論家を中心に繰り返され、マスコミも同様に中選挙区制土度自体に対する批判を展開していました。
しかも、小選挙区制度に反対するのは、政治改革に反対するのか! といわんばかりに、小選挙区制に反対することイコール悪のような言われ方をされました。
自民党の汚職問題など、政治、とりわけ自民党に対する国民の不信が大きくなってきていたときであり、中選挙区制度のもとで、非自民党政権である細川内閣が誕生、この細川政権が小選挙区制を導入させました。
とはいえ、自民党も下野したとはいえ、かねてからの小選挙区制度は、比較第一党が政権を取れる制度として、その導入は悲願だったわけです。
小選挙区制導入にも紆余曲折がありました。
この細川内閣には小選挙区制そのものに反対する勢力が日本社会党を中心にありましたが、
小選挙区250、全国一区比例区250の与党案が参議院で秘訣され、
細川首相と自民党総裁河野洋平氏のトップ会談により、
小選挙区300、全国8ブロック比例区200というように、小選挙区制に比重を置いた、また比例区も分割されるという意味では、これも大政党に有利な形で決着がつきました。
もともと、小選挙区制の導入を求めていたのは財界です。
小選挙区制による二大政党制を実現し、より財界の利益になる政党はどちらかということを競わせ、財界の利益を計ることがその目的です。
そればかりでなく、構造改革を求める財界としては、自民党の利益誘導政治に対しても改革の対象としていました。そのため、小選挙区制の導入により、党中央本部の公認権限を強化し、党本部の方針に反した議員(候補)を排除する仕組みが必要でした。それが選挙区に1名しか公認し得ない小選挙区制ということになります。
この小選挙区制により、党本部の権限は一段と大きくなり、その象徴となったのが、小泉純一郎元首相による郵政民営化を争点とした2005年の衆議院選挙です。
郵政民営化に反対した自民党議員を公認せず、党が決定した候補を公認したことにより、小選挙区制度の持つ意味がより明瞭になりました。
その後、民主党がこの小選挙区制度により政権を獲得したことによって、形上は二大政党になったわけです。
もちろん、比例区がありますから、少数政党も多少は議席を獲得しますし、一定の組織票を持つ公明党が選挙協力により一定の議席数を獲得することはありますが、基本的には、二大政党制といえます。
しかし、民主党の政権獲得は、財界にとっては、構造改革に明らかに反する部分も持ち合わせた鳩山政権の誕生であり、手放しでは喜べない存在でした。
この民主党を本格的な保守政党に変質させることが次の目標になります。
財界は、鳩山政権を失脚させることに成功しましたが(
野田民主党政権の末期と小沢叩きに奔走させられたつけ)、その後の民主党政権(菅、野田両政権)は、消費税大増税、TPP参加、子ども手当等の見直しなど構造改革路線に見事なまでに転換しました。
ここに財界が望んだ二大政党制の下地が出来上がったわけです。
自民党は、野党に転落してから、「保守」(反動)色を一段と強めました。政権与党だかったら、多くの派閥が存在し、その中で政策の違いなども出てくることがあり、振り子原理による統治は従来の自民党の統治手法の1つでした(反動政権の後は、多少、穏健な首相を担ぐ、その行き来の中で徐々に右傾化させていく統治手法)。しかし、
野党となってしまえば、そのような「統治手法」が出てくる場面はなく、結局、今回の消費税大増税法案に対する自民党の造反は、「欠席」1名のみでした。 これに対し、民主党内小沢グループが反旗を翻したということになります。
もともと、小沢一郎氏も主導して完成させた小選挙区制度ですが、その結果、民主党政権を実現させたともいえます。
しかし、今回、小沢グループが反旗を翻したことで、民主党は一気に瓦解の道を辿ることになりました。
政権公約であるマニフェストを完全に反故にしてしまったのですから、国民(従来の民主党支持層)から離反を招き、支持率を下落させているのは当然のことですが、民主党から除名された小沢グループの議員のいる選挙区に別の党公認候補を立てるというに至っては、さらに瓦解の道を早めるだけの結果になります。
そのような「分裂」は自民党にこそ有利になるからです。先の小泉元首相による郵政選挙のときも同じように「刺客候補」は野党である民主党を有利にするだけという声もありましたが、そうはなりませんでした。当然です。小泉内閣の支持率が高かったからです。
これとは全く事情の異なる野田首相が同じことをやっても、自民党を利するだけの結果になることは明らかです。
そうでなくても、次の選挙では民主党は激減は避けられないのですから、
もはや二大政党政治の一翼としての「大政党」とは言い難い存在に陥ることは必至です。
その意味では、小沢グループが民主党を飛び出さなければ、財界が狙った二大政党はなお存続していたことでしょう。
一旦、下野した民主党が、今度は、自民党を上回る構造改革路線を示し、財界、マスコミにしっぽを振り、政権獲得を目指すか、あるいは政権獲得ができなかったとしても、財界向けの公約によって、自民党をさらに構造改革路線に追いやることを可能にするからです。
これが阻止されたという意味では、小沢グループの行動は、高評価が与えられて然るべきものなのです。
もちろん、それが即、小沢グループ(「国民の生活が第一」)の支持に結びつくかは、別問題です。
各マスコミは、早速、世論調査をしているようですが、
読売新聞(2012年7月15日)
小沢新党に「期待しない」82%…読売世論調査 産経新聞(2012年7月16日)
「小沢新党」支持率は3・7% 産経・FNN世論調査 消費税増税問題を小沢叩きによってすり替えてきたマスコミにとっては、小沢新党に対する世論調査の結果が、このような数字になって出てきたことに安堵していることでしょう。
もちろん、マスコミによるすり替えだけではなく、小沢氏の人柄への評価も入りますから、消費税増税反対=小沢新党支持にはなりませんが。
今回の政治の混乱から教訓として引き出すべきことは、民主党の崩壊が国民の声を聞かなかったことにある(
民主党が瓦解していくことの意味 国民の声を無視した末路)ばかりでなく、小選挙区制度そのものが問題であったということです。
財界の意向に沿った、国民不在の政党にとって有利な小選挙区制度を廃止するだけでなく、
国民の多様な声を反映させるためにこそ、全国一区比例代表制度を導入すべきです。
(もちろん、比例区だからといって、無所属の個人の立候補を禁止する理由はありません。)
中選挙区制度ということを言っていては、それこそ時代錯誤です。以前にあれだけ中選挙区制は「制度疲労」などと御用評論家やマスコミを挙げて批判していた制度です。何故、その制度に戻すのか理由がありません。
(もとより中選挙区制の方が小選挙区制度よりも何倍も優れています。だからといって、そこに止めておく必然性はありません。)
比例代表制こそ、一番の民主主義にかなう合理的な制度です。
一票の格差の問題も生じません。また、地元への利益誘導政治もなくなります。
もちろん、一定の得票数以下の政党には議席を与えないなどという阻止条項(足きり条項)など入れるべきではありません。比例代表制は、少数意見を聞くところに意味があるのですから、一定数以下で切り捨てるのは本末転倒です。
なお、比例代表制になると、多数の政党が国会に議席を持つことになり、なかなか政治が決まらない、などという批判がありますが、民主主義である以上、議論をしてもらわなければ困ります。
決まらないから決めてしまうでは、全体主義、ファシズムの思想そのものでしょう。比例代表制に反対する理由は、少数の声を嫌う理由ばかりで、全体主義者、ファシスト以外では、考えつきません。
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