家庭裁判所の機能不全 子の奪い合いに無力、無責任 根底には司法予算の不足 犠牲になるのは子どもたち

　同居している状況で子を連れ去られたら？

　よく離婚後の共同親権権を主張する人たちから言われるのがこれ。
　これを未成年者拐取の罪で告訴したりするなどしていますが、これは捜査機関には相手にされていません。当たり前です。
　だからこれを犯罪とせよ、厳罰とせよと主張しているわけです。

　同居中の主たる監護者が子を連れて出ても全く問題ありません。これを監護の継続の観点から判断されます。夫婦として同居してやっていけない以上、主たる監護者が子を連れて出るのは当たり前中の当たり前。置いて出る方が無責任です。
　離婚後の共同親権権を主張する人たちが「連れ去り勝ち」（子を先に連れて出たら、それだけで親権者になれる）を主張しますが、全く事実に反します。少なくとも家裁はそのような現状を追認するだけの判断はしていません。

　しかし、です。問題はそこではありません。
　主たる監護者でない方の親が連れ去った場合です。
　こうした状況下では直ちに子が主たる監護者の元に戻されなければなりません。
　それを判断するのは家庭裁判所です。
　手続としては、子の監護者指定の審判、子の引渡審判、子の引渡審判前の保全の手続です。
　審判前の保全手続は迅速に行うことになっていますが、要件が厳しく、子の環境差し迫った危険な状況があるかどうか、違法な連れ去りかどうかということになります。
　しかし、実際問題、相手方の元にいる子が差し迫った危険な状況があるのであれば既に児相の所管であり、裁判所の保全手続を待つまでもなく子を保護しなければならない状況です。裁判所による保全手続の方が児相の保護基準よりは緩いのかもしれませんが、実際には変わりません。
　児相のやる気も社会問題になっていますが、家裁の場合には調査官の調査には何の強制力もなく、そのため当事者の協力の下で調査を進めますので、非常にゆっくりです。2～3か月は結論が出るまで時間は掛かります。結論（審判）が出ても当然のことながら負けた側には不服申立ができますから、それだけで2か月はさらに延びます。
　到底、迅速とは言えません。
　だからそうなると子の監護者指定も同時並行で進めることになります。
　とはいえ、そうであったとしても同じ進行ですから、迅速性は期待できません。

　さらにひどいのは審判手続として申し立てても家裁が付調停にしてしまうことです。申立があると家庭裁判所は事件審査に掛けますが、担当した裁判官と調査官がこの事件は審判手続で進めるのかどうかを検討しますが、裁判官が急ぎでないと判断した場合には職権で調停に付されます。
　これには理由を示す必要がありませんし、そのため不服申立の手段もありません。
　申立の記録上、一見して非監護親側からの申立であることが明らかで、特段の問題がなければそれでも良いのですが、そうでない場合にも調停に付することがあり、非常に問題があります。
　ことは子に関わることですから、迅速性が必要です。結果として子の監護者指定で結論が変わらなかったとしても迅速な処理こそが求められているのは当然です。
　子の監護者指定は、国家（裁判所）の責任においてなされるものであり、当事者に一般民事事件における主張・立証責任はありません。
（もっとも調査の端緒を提供しないと裁判所には調査の取っ掛かりがないので、当然のことながら申し立てた側は具体的な主張をすることになります）

　何故、裁判所が付調停にしたがるのか。背景にあるのは人員不足です。
　限られた人員を有効に利用するためと説明しますが、要は人材が足りない、優先順位があるんだからゴタゴタ文句言うな、というのが裁判所の本音です。
　札幌家庭裁判所（本庁）の調停事件は、調停委員に丸投げされるため、余計に時間が掛かります。裁判官（調停官）が立ち会った方が必要な事項のやり取りとなるため手続きとしてはスムーズですが、件数が多いため、それができず事実上の丸投げになります。

　面会交流に関しても同様の傾向があり、面会交流原則実施論の立場から（裁判所は建前として否定していますが、現実には有無を言わさず強制してきます）、面会交流を強く要求するのに、裁判所で実施する試行的面会は原則1回に限定しています。当事者から必要性を強く主張し、場合によっては2回目が設定されることもありますが、例外中の例外。これも裁判所はその必要性がない、前回実施したことから事情が変わり、その必要性が認められるかどうかで判断する、限られた人材の有効な利用というのですが、要は余裕がないからできない、と言っているだけのことです。

　少なくとも公職選挙法で規定するような100日裁判を法定しないとどうにもならないくらい家庭裁判所は時間が止まっています。ここに夏季休廷期間が入ると目も当てられません。裁判官はバカンスを楽しみます。子どもは置き去りです。子どもの人生など知ったことではありません。
　裁判官の中にはそれでもかなり無理をして期日を入れてくれたりすることもあります。それは裁判官個人の努力です。


2022年7月6日撮影

　しかし、これにも限界があります。事件が滞留しているなら残業しろ、というように思いますが、裁判官はともかく調査官、書記官は残業手当がつきますから人件費抑制から残業そのものが抑制されている状況にあります。

　どの裁判官も司法予算の抑制には従順ですから、予算を使うことには消極的。そこに責任感ってあるのかなと疑問に思うところです。最高裁は予算の抑制に積極的、そこに裁判官（現場）が物申すことはなく、そのシワ寄せはすべて紛争の渦中にある子に押しつけられているのが現状です。
　組織としての家裁はその能力も責任感もないということになりますが、本当にこれで良いのでしょうか。
　ますます子を巡る事件が増えているというのに。

「家裁による児相申立却下の判断の是非　最高裁、関係機関は検証し、その責任を明らかにしなければならない　裁判官の無責任な態度は許されない」

　ちなみに裁判所で実施している所持品検査ですが、札幌地裁では3000万円もの費用を使っていますが（札幌家裁では実施していません）、これも司法予算です。
　大いなる無駄遣いです。
「札幌高等・地方裁判所庁舎で行われている所持品検査　既に４年が経過　目的が不透明で年間３８６６万４０００円」



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