北海道（北海道教育委員会及び北海道札幌聾学校）提訴に対する侮辱コメントについて

「本日、北海道（北海道教育委員会、北海道札幌聾学校）に対し、訴訟提起しました。」
　本訴訟に対する誤解もあるようです。
　以下のコメントですが事実に基づかない、ある意味では悪意をもったコメントが「元ろう学校教員」を名乗って出されましたが、これはあからさまな当事者に対する侮辱です。そのため当方において説明をしておきます。

https://news.yahoo.co.jp/profile/comments/16589273433356.ddff.09664

元ろう学校の教員ですが、心が痛くなるような内容でした。確かに聾の教員以外で日本手話ができる人はそうそういません(コーダの方はいると思いますが)。ろう者の中でさえ、育った環境によっては日本語対応手話しかできない人も沢山います。逆に育った環境で入学当時は日本手話しか分からない児童も確かにいます。 過去の教育方法などもあるためか、難聴者はろう者としてのアイデンティティをとても大切にしています。しかし、特別支援学校の教員も専門性を高めようと必死に研修や研究を行っていて、ろう学校も同様です。 この児童の担任が伝えようとする努力を怠っているのであれば問題ですが、この記事を読む限りでは問題を履き違えているように感じてしまい、とても悲しかったです。

　この「元ろう学校の教員」を名乗る方がどの学校のいつの時代なのかは全くわかりませんし、「元ろう学校の教員」ということ自体が本当かどうかもわかりませんが、現在の北海道札幌聾学校の状況をご存知でコメントされているのでしょうか。
　必死に研修や研究を行っているとされていますが、この間、北海道札幌聾学校では研修は保障されていません。
　研修とは、研修と称したものを定期的に座学で学べば良いというものではなく、日々の研修が重要となります。しかし、北海道札幌聾学校ではこの間、教員が日本手話に堪能な講師（元教員）の助言を受けたいと申し出ても学校外で労働時間外で行うよう言われています。授業の様子を撮影した動画は校外持ち出し禁止ですから、実際の授業の状況を前提に教えを請うこともできません。

　人材不足も顕著です。昨年度、一昨年度と日本手話に堪能な教員が2名、立て続けに定年退職を迎えました。定年後の再雇用を要求してきましたが、道教委側はこれを拒否してきました。
　現実に人材が不足しています。
　そのため日本手話が堪能でない教員を充てざるを得なくなっている現状があります。
　今回の問題点は日本手話に関して一定の水準に達しないのに担任に選任されたことです。日々の研修でどうにかなるというレベルではありません。
　実際に堪能でない教員を充てられてしまった場合、「この児童の担任が伝えようとする努力を怠っているのであれば問題ですが」と述べるのですが、日本手話ができない以上、日々の授業はどうするのかという観点がこの「元ろう学校教員」からは完全に欠落しています。努力という気合で乗り切れるようなものではありません。英語で行う授業で英語がかたことしかできないのに「努力」で乗り切れるのでしょうか。問われているのはその点です。児童は練習台ではありません。教える側に日本手話について一定の水準があるのが当然の前提です。その前提がなければ授業自体が成り立ちません。
　学校側との協議の一部を述べると、次のようになります。
　担任を変えることはできないが、補助教員をつけることで授業を行うことでどうか。但し、全体のブログラムからはすべてには補助教員を就けることはできないとして若干は補助教員がつかない授業は残るが、と提案されました。
　一部には補助教員がつかないとはいえ、この対策案であれば大きな前進でした。担任を変えられないのは建前としてはこちらにとっては形式論でしかなく、補助教員という名目であろうとその日本手話に堪能な教員が対応するというのは大きな改善です。そういったやり取りの中で、とりあえずそれで実行してみようということになりました。
　ところが、補助教員が主に受け持つのかと理解していたら、ただ補助教員がついているだけで、実際には授業の遂行を受け持つことはありませんでした。
　そこで、当方としては、補助教員が授業を受け持つと理解していたが、それでは話が違うのではないかと協議しましたが、学校側は、授業の中の難しいところはその補助教員にやってもらう、授業の主はあくまで担任だ、担任を変えることはできないと述べ、むしろ形式論に終始していたのは学校側でした。さらには、学校側は、その担任だって日々の授業の中で学ぶんだということを言ってきました。
　しかし、一定の水準がなければ教員にとっての「学ぶ」ということの意味が違います。生徒は研修の道具ではありませんし、補助教員が一部を代わって行うなどというものは授業の組み立てを事前に十分に練らなければなり立ち得ないこと、補助教員による通訳を介して行われるのであれば、それは大幅な時間のロスであり授業が「半分」になってしまうと指摘し、補助教員が実質、担当するよう要求しましたが、学校側は拒否し、話は平行線を辿りました。
　しかも、その後、人事上の都合ということで補助教員も削減されました。
　その結果の提訴です。つまり授業が成り立っていないわけです。

　この「元ろう学校の教員」という方は、本提訴に対し、「問題を履き違えている」とクレームを付けるのですが、履き違えているのは、この「元ろう学校教員」です。
　悪意をもってこのようなコメントをされるのは、当事者に対する侮辱ともいえるもので一言しました。




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