企業（組織）内弁護士の増加は弁護士需要とは違う 単なる就職先探しではない 日弁連は弁護士（法曹）像について検証すべき

　弁護士といえば独立した職業というイメージは今は昔。今や日弁連もそうですが、企業内弁護士の増加を両手を挙げて「絶賛」しています。
　このほど、企業内弁護士の所得が増加しているというアンケート調査結果の発表がありました。
「企業内弁護士「約3000人」、21年連続増　年収も増加傾向」（弁護士ドットコム）

　年々増加といっても現在3000人程度、司法試験合格者数を急増させたことが背景にあるのであって企業側の需要があったからの増加ではありません。
　司法試験合格者数を2000人を超えたときは司法修習終了者の就職難と言われていた時代でそんな弁護士（法曹）需要などなかったことが露呈してしまい、司法試験合格者数3000人という閣議決定も修正せざるを得ない状況にもなりました。

　この企業内弁護士の「増加」について、Schulzeさん、さすがの分析です。素晴らしい。
「弁護士ドットコムにJILA会員アンケート結果の記事、企業内弁護士の「年収増加傾向」は本当か？」（Schulze　BLOG）
　それが弁護士ドットコムが「企業内弁護士「約3000人」、21年連続増　年収も増加傾向」なんていう見出しで報じるものだから、その裏を暴露されてしまったという具合です。

　もともと企業に需要があったのかといえば、ないわけではないでしょうが、司法制度改革審議会が想定したような需要はなかったし、これからも同様かと思います。
　消費者金融の企業内弁護士は需要というのか、かつては社員を支配人登記して対応していた消費者金融もありましたが、それから比べると組織内弁護士は需要なのかもしれません。
　組織内弁護士と顧問弁護士との役割は違うとは言われています。
　とある携帯電話会社の組織内弁護士とやり取りしたとき訴訟対応はしないと言っていました。
　完全に組織の一員です。
　そこでの弁護士（法曹）像は何なのかとということ抜きにした需要論も全く意味がありません。


2019年3月10日撮影


　日弁連が今年3月に公表した対処方針では弁護士の需要論が中心でした。つまり司法修習終了者の就職口があるかどうかという観点から将来増加する見込みであるということを前提に検証したものです。
「法曹人口政策に関する当面の対処方針～司法試験合格者数の更なる減員に関する検証結果～」（日弁連）
「日弁連の法曹人口問題に対する検証結果　逃げの一手は将来に禍根を残す」

　現時点で1500人より減員を求める状況にはないと結論付けるものですが、そこでの特徴はまだ需要があるというほとんど具体性のないもので、企業内弁護士の増加もその１つに上げています。
　組織内弁護士ばかりが増えていくことはどうなのかという問題は弁護士（法曹）像を考えるにあたって避けては通れない問題です。
　この対処方針では何よりも弁護士（法曹）像が検討されていないのが致命的な欠陥なのです。



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