西田亮介氏の「雑な批判こそ権力監視を弱めてきた」の意味を分析

　前回の「西田亮介氏が意地になっているのさておき、権力の介入問題についてわざと混乱させようとしている」に引き続きです。

　私にとって西田氏が言っていることの意味でわかりづらいと思っていたのが「雑な批判こそ権力監視を弱めてきた」ということの意味です。
　「雑」ということについて、政権に対し、西田氏は緻密な批判をしてきたのか？？
　もっとわらかないのが「雑」だから「権力監視を弱めてきた」という意味です。
　現在もそうですが安倍政権以降、権力監視が弱まってきているのは事実です。
　その要因はこんな感じです。
　①与党は安倍一強の元で自民党という党内からの異論も封じられた。安倍氏が不在になった以降も同様に右派勢力が党内で幅をきかせている。
　②どんなに支持率が低下しようと岩盤支持層が低投票率と小選挙区制に支えられて安倍自民党は勝ち続けてきた。

もう少し言えば、その手の辻褄のあわない、雑な批判こそ権力監視を弱めてきたと思いますね。

— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) March 10, 2023

　「「問題ない」とも「これでよい」とも書いてないと思うんだよね。」というのは要は問題があるとは書いていないということの裏返しです。
　「雑な批判」だから意味がない、ならまだわかりますが、それを超えて「弱めてきた」ということになるとその趣旨が全くピンと来なかったのです。

　ただ段々と言いたいことがわかってきたような気がします。
　前回の続きでもありますが、西田氏は基本的に萎縮効果というものを認めてない、それを前提に批判するのは「雑」としてしまっているということです。
　この出発点が大分、ピントがずれているのですが、「雑」について、具体的な弊害は？という趣旨のことを述べているのは、現実にその影響、弊害があったのかというところに結びつきます。それがないのに批判するのは雑だという具合です。
　具体的な弊害というが問題が生じたらそれを批判するのは当然のこと、しかし、そうなる前提を作ろうとしているときにそれが批判の対象にならないとすることが不思議なのです。
　萎縮効果は人事などに手を突っ込んだら当然に生じるもの（西田氏は断言するのもおかしいと評しています。西田氏には萎縮効果については「注意」する必要がある程度の認識しかありません。）、だからその萎縮効果を与えるようなことはしてはいけない、この合意が憲法上の萎縮効果論です。放送、特にNHKの独立性を守るための方策も然りです。
　そうした方策などの慣行などを次々とぶち壊してきたのが安倍政権以降の自民党ですが、それ以前は曲がりなりにも建前は維持されてきたのです。
　従軍慰安婦に関する報道では政権への忖度が問題になった案件はありましたが。

　この萎縮効果自体、具体的な弊害ということになるのですが、西田氏の発想は「個別具体的」な弊害ということなのでしょう。
　しかし、萎縮効果論からいえば個別具体的な弊害が出てしまったら手遅れになります。
　何のために政権側が介入してくるのか、それ自体が問われるはずなのにそこはスルーするという思考は常識である萎縮効果論に真っ向から反するものであり、体制擁護の発想そのものと言って良いのです。西田氏の論旨はあまりにあからさまです。

　それから次に権力監視を弱めたというのがさらにわかりにくいのですが、萎縮効果論が眼中にない西田氏の発想からすると、恐らくは個別具体的な弊害が出たら、それを「適確」、「鋭く」批判することが監視を強めるということになるという発想なのかもしれません。
　しかし、やっぱり意味不明です。「弱める」というつながりが不明なのです。
　「左翼からの批判にしかならないから」ということなのでしょうか。
　こう考えると西田氏の発想が何だかつながってきたような気がします。


2023年1月1日撮影


　最初に私が西田氏について論じたのはこれです。
「「脊髄反射的反応」イメージ政治とは　共産党をターゲットに論じるのは筋が違う」
　元になった西田氏の論考は共産党がキャラクターを使った宣伝を始めると言うことに対する難癖でした。自民党についての論考もあるようですが、今ひとつ結局、何が言いたいんだかわからない主張なのですが、肝心要の批判はしない、ということがその要因のようです。
　西田氏にとっては自民党も共産党も一緒くたなのでしょう。自民党が酷いイメージ選挙で政権を保持していることは眼中外になります。こうして共産党批判から一般論に結びつけているのでしょうが、一緒くたにしてしまうために自民党にとっては痛くも痒くもありません。むしろ西田氏がイメージ選挙というものを共産党とも一緒くたにすることで自民党自体の問題を薄める効果を発揮してくれるだけ喜んでいることでしょう。
　西田氏の主張の問題点は、イメージ選挙についての懸念があるのはその通りだとしてもそれを共産党を題材に論じるのがセンスのなさがその背景にあります。
　福祉に敵対してきた自民党があたかも福祉をやっているかのようなイメージ選挙（個々の議員で言えばイクメンパパアピールがすごいです）を行うことと同列にしてしまっているからです。

　そうしてみてくると西田氏の論旨（権力監視を弱める）は何となくわかってきました。
　自分は左翼批判とは違うよという上から目線が根底にあるのですが、それはさておき、左翼的な批判は限界がある、だから個別具体的な弊害を指摘した批判をすれば多くの人たちの理解の元に権力監視になるのだ、ということでしょうか。
　という背景を考えてもやっぱり西田氏の言うところの「弱める」ということの意味は不明です。個別具体的な弊害が批判の対象となろうと、弊害が出てしまってからでは遅すぎということにもなりますし、それまでは批判の対象ではないということの方がピントがずれているからです。
　建前（慣行）を守るということも重要なのです。




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