女性専用（優先）車両の問題など トランスジェンダー（女性）について 理解増進法を考える

　先般、トランスジェンダー（女性）に関して述べました。
「橋本愛さんは謝罪する必要はなかったし、差別に名を借りた糾弾行為こそ暴挙だ」

　このトランスジェンダー（女性）問題では公共交通機関の女性専用（優先）車両についてどのように考えるのでしょう。
　心は女性だからという理由だけでこの車両に乗り込むというのはもちろん趣旨から逸脱しているでしょう。
　日常的に痴漢被害のターゲットにされてきた女性であるが故に混雑時に男と一緒に乗りたくないというのは心情としてとてもよく理解できます。
　この女性専用（優先）車両に対して「男を差別するな！」と声高に叫んでいる人たちが一部にいますが、論外です。性的羞恥心などがその根底にあるのだから、別途、配慮するのは当然なのに、それが理解できないということ自体が問題で、従って「差別だ！」という主張は取るに足りません。単なる嫌がらせです。

　さて、トランスジェンダー（女性）だからということだけで女性専用（優先）車両に乗り込むのは違いますね。「心は女だ、女性専用（優先）車両に乗せろ」という主張は聞いたことがないので大した問題にはなっていないのかとは思いますが（女性専用（優先）車両以外はすべて共用）、女性専用（優先）車両の目的からいってもそうした主張には問題を含みます。性的羞恥心などの問題ではやはり重要なのは安心感です。
　そうしてみると女性トイレも同様で、共用にすれば解決するという問題ではないということです。
　差別禁止だと言い出したら、女性専用トイレ自体が差別だとか、あるいは女性専用（優先）車両自体が差別だということになりかねません。
　そこに求められているのは相互理解です。

　もともと性自認はそれぞれが自身に合った性であることを認めよ、ということです。そうした人たちを差別するな、嫌悪することなく相互に理解を増進してくことです。
　そこには相互に相手方への配慮がなければなりません。
　お互いに偏見を煽るようなことがあってはなりません。
　過激な運動が誤りであることは論を待ちません。ここは言葉だけでいえば安部晋三氏の発言はその通りなのです。
「「ＬＧＢＴ法整備、小手先にやれば逆に差別助長」　ゲイ公表の元参議院議員、松浦大悟氏」（産経新聞2023年3月9日）
「ＬＧＢＴ問題について、安倍元首相に呼ばれて直接お話しさせてもらったことがある。その際、安倍氏は「キリスト教文化圏のような激しい同性愛差別は日本になく、急進的な運動を日本で展開しても分断を生むだけじゃないか」とおっしゃった。同じ思いだ。」

　だからといって松浦大悟氏が言うような憲法改正は必要ありませんし、それを目指すべきものでありません。憲法9条問題とは関係がありません。改正せずに可能なのに改憲しなければならないとすれば改憲まで同性婚は実現しないことになります。それと分断は別問題です。婚姻は当事者の問題であり、同性婚が実現したからといって他人が迷惑する話ではありません。婚姻制度はあくまで将来を約束した当事者がそれぞれを伴侶とすることに法的意味を与えることにあります。
　単純に破綻主義を採り入れてすぐに離婚を認める、というのは婚姻制度とは相容れなくなくなります。婚姻関係に入るということは相応の責任が伴うということです。その責任の根源には人に老いと死があります。人に老いと死がなければ婚姻制度には大きな意味がなくなります。いつでもいくらでもやり直しができることになるからです。
　アラブ世界での男尊女卑が根底にありますが、例えば、妻はある程度、年齢が高くなったら離婚され、夫は若い女と再婚、これではあまりに女性の地位は低くなります。夫（男）の側にとっての婚姻制度は、妻に不貞をさせない拘束を得る一方、妻側のメリットは全くありません。せいぜい扶養されるというくらいでしょうが、だからといってその代償として支払わされるものは決して小さくはありません。
　どう考えても対等な婚姻関係（制度）ではありませんが、これと比較すればわかるとおり、当事者（憲法の表現は両性）の平等に根ざした制度は弱い立場の者を法的にも保護するためのものなります。一方的な破棄（人生の約束）は許さないというものです。
　そうした保護を当事者に与えるのが婚姻制度であり、そこには男女差の問題は生じません。同姓同士であろうと異性間であろうと求められるものは変わらないということになります。
　憲法改正が熟するまで待つこと自体は全く意味がなく、理解増進法とともに法制化すれば済む問題です。


2023年1月2日撮影



　但し、トランスジェンダー問題は上記のようにはくくれません。
　何をもって男性、女性なのかということはその人がどう考えるのかによるところが大きく、差は大きいものと思われます。
　もともと性別の意識の差は社会的に作られてきたところが大きく、生物学的な違いとは異質なものがあります。
　俗にいう男らしさ、女らしさです。その型にはめられようとするとき、息苦しさ、生きづらさにつながっていくのでしょう。
　その意味ではLGBTの中のTの問題は特殊です。
　さらに大きな理解増進が必要になります。
　ただいずれにせよ、生物学的な男女の差を無視したようなやり方は無理です。
「「LGBT理解増進法」の何が「問題」なのか」（ニッポン放送2023年3月4日）

　ここで紹介されているこの事例は重大です。
「アメリカの水泳界には、トランス女性であるリア・トーマス選手がいますが、彼女はアメリカの大学の水泳選手権で金メダルを獲りまくっているのです。身長は190センチあり、身体はまったくの男性です。手術はしておらず、その上から女性用の水着を着ているのですね。そして女子更衣室でも男性器を隠さずに歩いているそうです。他の女子選手が「何とかして欲しい」とコーチに頼んだのですが、「我慢するしかない」と言われてしまった。裁判で訴えられたらコーチ側が負けてしまうからです。」

　あくまで他人の領域に入らないというのが相互理解の大前提です。性自認を認めることが即、トランスジェンダー（女性）として何をしてもいいということは意味しません。上記水泳選手の例がその典型です。
　一部では、トランスジェンダーを容認したら男根のまま男が女湯に入ってくるという主張をしている人たちがいます。しかし、それは明らかに偏見を煽っているだけです。
「トランス女性の入浴めぐるデマ、差別助長のヘイト投稿で「傷つき、外出も怖い」　当事者らが声明」（弁護士ドットコム）

　但し、女性トイレもそうですが、女性専用車両も同じく、そこは常に性被害にあってきた女性が性的に安心できる場でなければなりません。
　トランスジェンダー承認が米国のような状況は誤りであることを明確にしなければなりません。
　上記記事の最後の部分は疑問なしとはいえません。
「トランスジェンダー女性の場合も、こうしたゾーニングが適用されるが、「事業者が誰にどのようなサービスを提供するかは、その事業者の判断になり、協議や調整が必要となってきます」と述べ、現実的にはトランスジェンダー女性が女湯に突然入ってくることは極めて少ないとした。」

　何故、「突然入ってくることは極めて少ない」ということになるのかがわからないわけです。ダメなものはダメで、トランスジェンダーを認めたら男が女湯に入ってくるという偏見を煽っているのは別として、女湯に入ってくることの口実にされないかという懸念はあるのですから、そこには明確な回答を用意しなければならないはずです。「私は女」と言って女湯に入ってくる男は単なる性犯罪者であり変態です。その点を明確にしなければならないはずなのに、この文脈で読む限り、グレーのように見えてしまいます。
　さらには女性専用トイレなどをなくす、という方向も全く理解が得られるものではありません。
　トランスジェンダー問題解決のために男女別のトイレをなくしてすべて共用化すればいいという発想はあまりに乱暴なのです。

　差別禁止はとにかくやったらダメです。相互理解の大前提をぶち壊すことになるからです。上記水泳選手の例にもありますが、何か疑問を口にしようものなら糾弾されるようでは対立関係が激しくなるだけです。

　罰則を主張するような過激な人たちは決して正義ではありません。自分が正しいから従えという発想しかありません。それで生み出されるものは対立だけです。




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