エンジンブレーキを使用するなら合図がなくて当たり前なのか

　エンジンブレーキについて考えるきっかけとなったのが、このツイートです。

走行中警察に止められてビックリしました。「迷惑運転してる」と通報あったらしくて...、詳しく聞いたら「エンジンブレーキで減速してブレーキランプ光らないから迷惑運転」だそうです。「エンジンブレーキかける時はブレーキランプで後ろに知らせろ」だそうです。
そんな通報ホントにあるんかよww pic.twitter.com/o5jApyyXWa

— フォース@オーディオ製作 (@ForceRize) March 27, 2023

　正直、人を小馬鹿にする姿勢があまりに露骨でこのような表現には全く共感しないし、実際のところ何も問題がなかったのかはツイートから全くわかりません。

　さて、ブレーキの合図をしなければならないのは、停車、徐行をしようとするときです。
道路交通法施行令21条1項
　徐行し、又は停止するとき。　その行為をしようとするとき。

　最初にエンジンブレーキを使用した場合、ブレーキランプはつきません。
　『－普及版－道路交通法　図解・注釈付』によると以下のように解説されています。
「「停止しようとするとき」というのが、「ブレーキを踏むとき」のみを意味するのか疑問の残る規定」

　そもそも合図とは他車などに自車の動きを事前に知らせることによって交通を円滑にすることが目的です。
　減速し停車ないし徐行するのであればそれを周囲に知らせることが必要です。
　私自身はエンジンブレーキを使用し、フットブレーキを使用しない場合でも軽くフットブレーキを踏み、ブレーキランプを付けることはあります。後続車に停車することを知らせるためです。停車するのであれば減速を始めるときにハザードを点灯させます。
　このツイート主がどのような場面でエンジンブレーキを用いたのかは不明だし、どのような使用の仕方をしたのかも不明です。
　従って、このツイート主の行動が100％正しいかどうかも不明なのです。結局、ただただ茶化すようなツイートであるためにそこがわかりにくいのです。


2023年3月11日撮影


　さて、エンジンブレーキの使用について①車間を空けていればいいんだから文句を言われる筋合いはない、というものと②坂道を下りるときにエンジンブレーキは使うだろというコメントをみました。
　これも100％正しいわけではありません。まず坂道の場合については問題設定が全く違うのでこの主張は誤りです。坂道でのエンジンブレーキは減速することを目的としているというよりは、坂道を下ることによって加速していく車の速度をフットブレーキを使わずに抑えることを目的としており、減速していくためのものではありません（但し、エンジンブレーキを使用した時点では減速する）。坂道ではエンジンブレーキを使用してもさらに使用しない場合に比べてゆっくりではありますが、坂道なので速度は加速していきます。
　これに対し、車間を空けていれば問題がないはずだというのもそれだけでは正しくはありません。
　不必要な急ブレーキは禁止（法24条）されていますが、エンジンブレーキであってもいきなり二速に入れたりすることによって急激に速度を落とすことは可能です。後続車両を煽っているとしか言えないような場合も想定できるわけです。
　もとより後続車両は当然のことながら追突するような運転はダメで、急ブレーキが禁止されていても後続車の注意義務は軽減されませんが（過失割合は修正される）、だからといって煽りのようなエンジンブレーキの利用には問題があります。

　いずれにしても周囲に予測可能な運転をすることが大切であって、エンジンブレーキだから点灯しないのは当然だ、だけではないことも知っておく必要があります。
　ツイートの話に戻りますが、警察官の指導はそうした意味合いがあったのではないでしょうか。



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