ロシアのベラルーシへの戦術核の配備は核拡散防止条約（ＮＰＴ）に違反するのか

　ロシアは、ロシア・ウクライナ戦争の手詰まり感、NATO諸国による戦車の供与などを前にベラルーシへの戦術核配備を行うこと、ベラルーシも承諾するという状況です。
　しかし、このベラルーシへの戦術核配備は核拡散防止条約に違反するのでしょうか。理屈としては核兵器をベラルーシに譲渡するのではなく、すべてロシアが管理しているのだから違反するものではないというものです。
　これは米国・NATOがとってきた理屈です。核兵器保有国は核拡散防止条約を前提にすればNATOでは、英国、フランスのみが保有でき、その他の国は保有ができません。
　現在では、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに配備されているそうですが、それを正当化する理屈が管理は米国だからというものです。
　プーチン大統領はそれをこの間、ずっと核拡散防止条約違反だと批判してきました。
　ところが今回、同じ理屈でベラルーシに配備したというものです。


2023年3月11日撮影

　このロシアの行動に対して、前言と違う、矛盾だという批判を社説などで読みました。
　しかし、それって全く説得力がないなと思います。
　自分がそれはダメだと言ってきたものなんだから、ということなのですが、あくまで核拡散防止条約はそれぞれの合意に基づくルールです。
　それぞれの解釈が違う、というのであればその解釈の違いを当事国が埋めなければなりません。埋める前に米国・NATOは核配備を行ってきたということになります。
　条約であり合意に基づくものである以上、米国・NATOがそれがルールだというのであれば、それをロシア側が行っても、それ自体は矛盾でも何でもありません。
　ましてや米国・NATOがロシアの行為を前言との矛盾だと批判するのはそれこそ自己矛盾です。
　ベラルーシへの核配備がダメで、ドイツやトルコならいいという理屈もわかりません。フィンランドが自国への核配備を欲していますが、これも正しいのでしょうか。日本でも右翼議員たちが核保有はできなくても核共有だなんて言っています。
　要は核配備がダメなんです。ロシアだけでなく、米国・NATOも同じなんです。
　ところがマスコミの批判は、結局、「ロシアだから」みたいな論調なんです。
　米国・NATOはよくてロシアはダメ。
　この間、一貫してこの論理が横行しています。
　核兵器についていえばそもそも核拡散防止条約自体が核兵器の独占のためのものであり、お話になりません。既に北朝鮮、イスラエルも保有していると言われていますが、正義の核と悪の核があるのですか。
　核兵器を持っていい国とダメな国があるのは何故ですか。

　それ以上に軍事同盟も同様です。米国・NATOという軍事同盟が何故、存在しているのですか。米欧中心の秩序を守るためであって、自国防衛が目的ではありません。
　「ロシアだから」という発想は戦時体制に組み込まれてしまったの同じです。
　自身が気づかないまま、「ロシアだから」というな発想になっていないかどうか、よくよく考えることが必要です。
　右翼はともかくリベラル派という人たちの中も気づかないままなのか、気づいているのかよくわかりませんが、「ロシアだから」の発想になっていることを憂慮します。




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