自由競争とはほど遠い悪徳業者による暴利 何故、裁判所が契約の拘束力を認めるのか 裁判所の姿勢も問われている

　世の中には悪徳商法と言われるもので満ち溢れています。
「高額請求のロードサービス横行　ネット広告で格安うたい後から上乗せ」（毎日新聞2023年5月15日）
「ネット上では格安をうたいながら、出張サービス後にさまざまな名目で代金が上乗せされるものだ。ドライバーの不安な心理につけ込む手口だが、こうした商法そのものの違法性を問うのは現状、容易ではない。専門家は、取り締まりを可能にする法改正やネット広告の規制強化の必要性を指摘する。」


「高齢者宅に押しかけ、激安で不動産売買　市場価格の3分の1も　15日に弁護士が無料相談」（弁護士ドットコム）

　本当に悪質です。人間のクズでなければできない所行です。悪徳商法の本質は、消費者から暴利をむさぼる、しかも自らやっていることが暴利であり、その相手が断れない、あるいは欺されているを知りながらそこにつけ込むことを最初から想定していることです。
　そしてこうした悪徳商法をやっている連中は、「人間のクズ」と言われようが全く意に返さない人たちというの特徴です。このように言われてもむしろ褒め言葉として大笑いできる人たちです。

　何故、このような悪徳商法が蔓延るのでしょうか。
　最初の毎日新聞の記事に違法性を問うのは容易でないという指摘があります。
　ここが問題なのです。裁判所に持って行くと、両当事者が合意したよね、ということで契約の拘束力を認めてしまうことが一般的です。ここに契約法理の大きな落とし穴があります。
　契約法理は私的自治の原則、つまり私人間の合意は対等当事者によるものなのだからそこに契約としての拘束力を認めるという考え方を基礎にしています。
　そしてその後ろ盾になるのが国家であり、その実現を担当するのが裁判所（司法）です。
　対等当事者なんだから嫌だったら断ればいい、この発想が帰結になります。
　契約の拘束力を認めるのはそれが資本主義社会を支えるものだから。それによって企業（商人）は取引に予測可能性を持たせることができ、それを前提にさらなる取引を行うことができる、そうした自由競争の担保になるのが私的自治の原則という考え方です。
　これは士農工商を基礎にしたお米を基軸とした経済から明治維新以降の貨幣を基軸とした経済に移行するとき、士農工商を廃して対等を擬製したことに始まります。
　対等という名の下に労働者はいつでも首が切れ、労働時間に制約なく働かせることができるというまさに奴隷労働を合法化するものでもありました。
　労働分野では種々の規制法ができました。何よりも日本国憲法に労働基本権、労働三権が保障されるという画期的なものとなりました。


2023年3月10日撮影


　しかし、取引分野は規制は遅れに遅れています。訪問販売法（現、特商法）や消費者契約法、景表法、割賦販売法などの規制はありますが、全くと言ってよいほど不十分。
　むしろ悪徳業者が幅を利かせているという状況です。
　契約法理の予測可能性ということであれば、悪質業者は相手から暴利を貪るということでやっているわけだから、その際の予測可能性など全く法的保護に値しないわけです。それはそうでしょう。わかっていてやっているわけですから。
　しかし、この契約法理が独り歩きしている裁判所ではなかなか常識が通じないのです。契約法理にとらわれすぎなのです。
　規制立法の強化だけでなく、裁判所も変えていかなければなりません。

　いずれにしてもインターネット上の広告で探すのは止めるべきでしょう。
　こう言っては何ですが、残念ながら弁護士広告もその１つです。
「「借金減額診断」の広告ダメ？…どの選択肢も「結果が同じ」、弁護士会が指導」（読売新聞2022年11月7日）



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