徳岡宏一朗弁護士の即時停戦論批判の誤り その２

　前回に引き続き、徳岡宏一朗弁護士の主張する停戦論に対する批判の検証です。
「【白井邦彦青山学院大学教授　特別寄稿】　再度「即時停戦・和平交渉による解決」を強く訴えます ー「今こそ停戦を」に賛同する一市民の立場からー」

５　以上のような理由から、ウクライナの主権者である国民が即時停戦を望まず、まだ抗戦を望んでいて、その意思を尊重するのは民族自決権・国民主権・国家主権という現代の国際社会の常識から当然であること

　ウクライナ国民が情報統制の元、強制的に動員されていることは周知の事実です。それを「ウクライナ国民」と言ってしまっているのはリベラレルを自称しているのに滑稽な主張です。
　その抗戦意思を尊重せよ、というのと武器供与は別問題。尊重せよ、というのであれば勝手にやっていればいいというだけのことになります。
　既に米国・NATOの代理戦争ということが明確になっているのにこうした事実すら認めないのが即時停戦論に反対する人たちの特徴です。代理戦争としての武器供与の当否の問題なのに、こうした「抗戦意思を尊重せよ」という問題にすり替えているのですから、政府以上の悪質なプロパガンダです。
「戦死者数を知らせない　現実を知らない　戦争に煽り立てる報道統制」

６　ウクライナがロシアを撤退するところまで押し返すと核戦争の危険があると即時停戦派は言うが、その危険を招いているのはプーチン大統領であり、批判すべきはプーチン大統領とロシアに対してであるし、ベトナム戦争でも何度もアメリカは核兵器を使うという威嚇をしたが、だからと言ってベトナム人民に抵抗はやめろとは言えなかったようにウクライナの市民に停戦しろとは言えない事

　ロシアの核兵器使用に対する楽観論というか無責任な発想です。
　ロシアが戦術核を使用しないという保証がどこにありますか。
　即時停戦論に反対する人たちは何故か、この問題を全く素通りしてしまうのです。
　いつものように「ロシアの核兵器使用に反対する」と言えば足りるとでも思っているようです。かなりおめでたい発想です。
　そこにはどうしたらロシア軍が撤兵するのかという問いに対して「ロシア軍が撤兵すればいいんだ」という問いに対して問いをもって答える愚かさがあります。
　ベトナム戦争についていえばこちら。比較対象があまりにずれています。比較すべきはキューバ危機です。
「ロシア・ウクライナ戦争で即時停戦は当たり前　とにかく戦争継続をしたがるのは何故か」


2023年3月10日撮影

７　国際社会も、国連総会で国連加盟国の４分の３という大多数の国が、ロシアに対して「即時・完全・無条件」の撤退を決議で求め、日本の衆議院でもロシアに即時撤退を求める非難決議が採択されているように、圧倒的にロシアの非を認めていること

　「即時・完全・無条件」なんていうのは最初に発する原則論。だからその後、どうするという視点が全くないのがこの意見の特徴です。
　現実の国際情勢についていえば、朝日新聞や北海道新聞でもそうですが、世界を分断しているという評価が常識的なものです。少なくない国はロシアに対する経済制裁に加わっていません。グローバルサウス問題にも表れているように、既にＧ７という枠組み自体が時代遅れとなってきていて、その求心力も失われつつあります。そうした現実を見ていない、見ないで「ロシア撤退が世界の声だ」と言ってみても意味がありません。徳岡氏は弁護士であるならば実務家として考えるのは具体的解決であるはずですが、全く抜け落ちてしまっています。
　法律相談の中で、法的請求が成り立つのかどうかという問題だけでは不十分で、それを実現できる手立てがあるのかどうかが重要です。
　悪徳業者にお金を持って行かれてしまった場合、現実の回収は困難で、それなのに「クーリングオフにより支払った代金は取り戻せます。返さない？　それは返さない悪徳業者が悪いのです。断固、批判しましょう」と答えていたらはっきりとずれています。
　諦めざるを得ない事案も少なくないのですが、諦めるという選択は、悪徳業者をのさばらせる、認めたことになってしまうからダメだということになるのでしょうか。取り戻すために徳岡氏は最後まで面倒みてくれるんだろうか。
　費用は？　そうですね。政府が援助してくれますかね？
　費用は降って沸いてくるわけでありません。
　日本がウクライナ資金援助のためとして増税に賛成しますか。

８　第二次大戦後のベトナム戦争やアフガン紛争を見ると、大国が小国に攻め入った場合、小国側が大国に抵抗し続けて戦況を有利にしないと結局和平会談も実現していないこと

　停戦合意には時間が掛かるということです。そんなことは当たり前です。
　誰かが即時停戦といったら停戦が実現するわけではありません。東大作先生の著作がとてもよい文献となっています。
「『ウクライナ戦争をどう終わらせるか　「和平調停」の限界と可能性』」
　現在、中国、トルコやブラジルなど停戦に動く国が増えてきました。ロシア寄りとされていますが、だからこそ米国・NATOが停戦に動けば、停戦合意は現実のものになります。まずは日本政府こそ対米追従を止めさせなければなりません。
　米国・NATOが動かない？
　という発想ならご自身が米国・NATOに追随しているだけです。
　という以上に米国・NATOはどんどんと武器供与しろという立場ですね。
　それでいて日本が武器供与するのがダメだという理由がわかりません。徳岡氏にとっては正義の戦争なのにです。憲法９条があるから？　だったら改憲しましょうよ、ウクライナに武器供与ができる限度の改憲でいいですから。



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