北海道教育委員が札幌聾学校の日本手話潰しに奔走した経緯 体罰から無視によって児童を追い詰める卑劣さ

　札幌聾学校問題では、何故、北海道教育委員会が全国に先駆けて日本手話による教育を宣言し、始めたにもかかわらず、その後、すぐにも日本手話教育を敵視し、口ではやるやると言っていながら何もせず、意図的に日本手話を使う教員に嫌がらせをし、日本手話ができない教員をわざと日本手話クラスの担任して児童をいたぶるようなことをしてきたのか、わからない部分もありました。
　背景に予算問題があることは最初から明らかでした。日本手話クラスを廃止できれば年間１億円もの人件費が削減できます。
　では何故、これだけ予算を使う日本手話での授業を始めようとしたのか。
　札幌聾学校では２００８年から日本手話ができる教員養成が始まりました。そのときは人件費とは別に予算２５０万円まで計上されています。

　そのきっかけはろう児に対する教師による体罰事件が明るみになったことです。今般、この新聞記事を渡され、私にとってすべてがつながりました。
　２００７年８月、男性教諭が女子児童を足で蹴るという体罰が露見しました。

「放課後、数人の児童が教室で騒いでいたところ、静かにさせようとした男性教諭が女子児童の左足のひざ上をけり、頭を拳でたたいた。女子児童の足には５センチ大のあざができた。」

　女子児童を蹴るとはあまりにおぞましいものがあります。体罰というよりは教師による暴力です。
　児童に言うことを聞かせるため言葉を用いることなく、最初から暴力により屈服させようとしたわけです。それはもはや教育ではありません。
　児童の側は何故、教師に暴力を振るわれたのか全く理解できないのは当然で、全く人間扱いをされていません。
　校長は定年まであと数年あったにも関わらず、退職（辞職）しました。
　事態の深刻さと当事者の対立の激しさがありました。
　背景には聾学校では口話教育が絶対のものとされ、手話が禁止されたことにより、教師と児童との間のコミュニケーションが取れないことへの相互不信がありました。保護者たちは、手話による教育を強く要求してきました。それにもかかわらず、札聾側が断固として拒否してきました。
　実際には口話教育などがうまくいくはずもなく、言葉が全く通じない教師側と児童、保護者との間で激しく対立していたわけです。
　そのような中で教師の側にもストレスが溜まり、暴力事件にまで行き着くことになります。この件以外にも暴力も露見しました。これをきっかけにして道教委や札聾の姿勢が批判されました。
　その結果、道教委はコミュニケーション手段として手話を導入すると言わざるを得なくなったわけです。
　しかし、それは道教委の本心ではなかったわけで、不祥事により導入せざるを得なかったということでしかなく、実際には日本手話を敵視するという道教委の姿勢（方向性）を変更させるものではなかく、それが現在にまで続いているということです。
　早くも２０１３（平成２５）年には保護者からの手話教育の充実を求める最初の申入れが保護者からなされており、その後もそうした申入れが続いていくことになります。
　この時期には既に道教委は日本手話による教育を段階的に消滅させるための意図的なサボタージュが始まっていたと言えます。
　このようなやり方を選択したのは日本手話による教育の充実を道議会で宣言してしまった以上、今さら手話による教育を廃止するという方針撤回は不可能という判断があります。手話が言語として承認されているという時代背景もあり、そもそも暴力事件の「反省」をきっかけに日本手話教育の導入が決めたはずなのに、正面からの廃止を宣言することは時代に逆行することからもマスコミからも叩かれるのは必至だったからです。

　体罰がダメならろう児や保護者を無視すればいい。

　道教委、札聾にとっては簡単なことであり、日本手話に堪能な教員の養成、及び確保を止めつつ、表面的には二言語クラスの教育を推進しているふりをする、というやり方はあまりに露骨でした。
　道教委、札聾は、一切の養成、確保を止めてしまいました。
　口話教育時代は、ストレスは教師側も児童側も酷いものでした。それが教師による暴力事件にまでなっていきます。
　しかし、現在は違います。ストレスは保護者や児童にしか生じません。教員側はろうの児童に通じようと通じまいと手話もどきで対応していれば足りるからです。ろうの児童は何を言っているのかわからないし、自身が発する日本手話も教師には通じない。しかし、教師はそれでも時間さえ過ごせれば良いわけです。それに文句をいう親は無視すれば良く、学校側も教員も「努力しています」と答えれば保護者をあしらう方法として完璧だというわけです。
　鼻で笑っていたことでしょう。道これほど人を馬鹿にした対応はないのですが、道教委という権力の後ろ盾があるから平気でできるのです。
　自民党の和田義明議員が道教委に申し入れた際、「人事に口を出すな」と言われたことが紹介されています。
「シンポジウム第二弾　「ろう児の学習権を考える」　和田義昭衆議院議員から考えるもの　道教委の姿勢が問われる」
　そこにあるのは強権姿勢だけです。

　その結果、他の学校に転校していったろう児もいます。原告児童たちのようにストレスから学校に行けなくなってしまい、休学に追い込まれた児童もいます。
　このようなやり方は、教師による暴力事件とどこが違うというのでしょうか。
　言葉が通じないことへの苛立ちから暴力事件を引き起こした教員。児童が言っていることを理解しようともしない、理解できる能力も持たない教員が平然と授業を受け持ち、その児童らの精神を蝕むやり方の本質は全く同じと言えます。

　露骨なのが、今般、原告となった児童たちへの道教委、札聾の報復処置です。
　原告らの保護者は、２０２２年３月、道教委、札聾に申入れを行いました。
「北海道札幌聾学校の日本手話クラスの存続を！（ホームページ）」

　その保護者の子のクラス担任に日本手話が全くできない教員を当てたということは極めて露骨な報復です。
　これがどれだけ児童たちの心を傷つけたのか、自分たちの目的のためであれば、児童たちの心が傷つこうが学校に来れまいが、関係なく平気でこのようなことができる教育官僚たちのやっていることは人としてどうなのかと思います。
　ろう者、ろう児に対する差別意識がなければ、このような所行は人としてできるものではありません。
　これが道教委、札聾による日本手話潰しの実態です。



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