政治的活動を敵視する人たち

　2012年12月7日、国家公務員法違反（政治活動の禁止）に問われた事件については、1人については無罪（東京高裁の無罪判決に対する検察の上告を棄却）、もう1人については、有罪（罰金10万円、被告側の上告棄却）としました。

　どちらも、休日の職務とは関係のない時間帯、場所で行われた政党機関紙の配布行為です。
　唯一の違いは、有罪判決は課長補佐、無罪判決は係長という立場の違いです。
　しかし、その程度の違いが何故、異なる結論を導くのかという程度のものであり、本来、どちらも無罪判決となって当然の事案です。

　最高裁がかつての猿払判決を事実上、「緩和」して1人に無罪判決を出したこと自体はよいとしても、未だ公務員の政治的活動を原則禁止することが当然という姿勢は、まだまだ日本が民主主義において発展途上であることを示しました。

　しかも、問題なのは、立件に至る過程です。
　無罪判決となった堀越事件では、以下のように報告されています。
（堀越事件ホームページより）
「裁判の中で、堀越さんを二四時間監視するため、多いときは一日十一名の警察官が車四台、ビデオカメラ六台をもって尾行し、その行動を盗撮し、延べ二百名もの警官が動員されていたが暴露されました。」

　公安警察の並々ならぬ決意があります。これは特定の団体であればこそです。そこまでして、反体制的なビラ配布を取り締まりたいのかというものであり、この国に思想・良心の自由はあるのか、表現の自由はあるのか、というものです。
　今回の最高裁判決によって、国家公務員法が限定的に解釈され、「無罪」となりましたが、公安警察による上記のような「捜査」が行われれば、政治活動は必ず萎縮します。
　最後は無罪になっても、ビラ配布の時点での公安警察による現行犯逮捕は可能だからです。

　2012年12月8日に、選挙ビラを配布するためにオートロックのないマンションに立ち入った運動員が逮捕されています（住民が取り押さえ、警察に引き渡されたという事案。）。
　これについて、東京地裁立川支部は、勾留請求を却下したとあります。
「都知事選ビラ配り、男性を釈放　裁判所が勾留認めず」（朝日2012年12月12日）
　東京地検が勾留を請求したこと自体、言語道断であるし、そもそも住民から引き渡されて以降、3日も身柄を拘束していたことも問題です。
　裁判所の判断は、先の最高裁判決が意識されていたであろうことは推測できますが、検察庁や警視庁は、未だ古い公安体質に凝り固まっていることが示されています。
　このような体質を見る限り、先般最高裁判決自体、「違憲」と言えないという意味では、まだまだ発展途上であるということでもあります。

　なお、そのマンションの住民も、ひどいレベルです。選挙ビラ（法定ビラ）の配布すら容認できないというのもどうかと思います（しかも、個人宅ではない！）。例え、自分の支持しない候補の選挙ビラでないからといって、騒ぎ立てること自体、自分だけが正義というような人なのでしょう。どこの世界にもこのような人はいますが、どんな時代でも寛容性は持っていたいものです。

　このような不寛容の延長線上にあるのは、表現の自由の制限です。
　自民党の憲法改正草案は、基本的人権の天賦人権思想を否定し、しかも、人権の制限については、「憲法12条　（略）公益及び公の秩序に反してはならない」とあり、「公の秩序」の名の下に制限（禁止）を容易にしようとしています。
　公安警察と自民党の憲法改正草案、このようなものがまかり通るようになったら、戦前の暗黒時代の復活です。



ブログランキングに登録しています。
クリックをお願いいたします。


にほんブログ村


人気ブログランキングへ