司法制度「改革」は、2001年の司法審意見書の提言が出発点となり、法曹人口、とりわけ弁護士人口の激増と、その養成のための法科大学院制度の創設されましたが、弁護士の就職難、法科大学院における1000万円とも言われる高額なコスト(学費に在学中の生活費を含む)のもとで、
法曹志望者は激減しています。
このままでは法曹制度を支える人的基盤がなくなり、法曹制度そのものが崩壊します。
法科大学院の定員も4400人強ですが、現在の司法試験合格者数は2000名強。3回受験を認めれば、司法試験合格率が25%で「低迷」するのは当然のことです。
法科大学院の信者からは、司法試験合格率が低いのが問題だ、合格者数を3000名にせよ、などと血迷った主張がなされています。
もちろん、志望者激減の背景に司法試験合格率が低いことがあるのは当然です。法科大学院に行こうとするのは、法科大学院課程修了が司法試験受験資格要件となっているからで、それ以外の理由はないからです。
だから、司法試験合格率が低いのであれば敬遠されるのは当然です。
この司法試験合格率については、法科大学院間での格差が拡大し、その格差は年々、拡大しています。
合格率の低い法科大学院では、定員割れもしていますし、ほぼ「全入」のような状態(但し、文科省が競争率2倍を確保せよという指令があったため、2倍まで合格させている法科大学院が多数、現れました。)ですから、入学させるだけさせておいて、後は知らん、というような法科大学院を目指さないのは当然です。
しかし、法曹志望者の激減の問題は、個別の法科大学院の司法試験合格率の問題や敬遠されているという問題ではなく、全体として激減している、これが問題なのです。
そうなると、統廃合の前提としては、このような格差が広がり、底辺であえぐ法科大学院が取り潰しのターゲットになるのは、必然となります。
法曹養成検討会議(第5回)では、この統廃合の基準作りを始めると報じられています。
「法科大学院 削減基準案検討へ」(
NHK2012年12月18日)
しかし、このような統廃合で法科大学院制度が機能するようになるのでしょうか。
このNHKニュースでは、インターネット上の記事では記載されていませんが、補助金が削減された山陰法科大学院が紹介されていました。
地域の適正配置について、山陰法科大学院の関係者から強調されていましたが、司法試験合格率を前提にした統廃合を行えば、地方の法科大学院はまず生き残ることは不可能です。
他方で、日弁連は、適正配置に配慮すべきだ、だから首都圏の大規模の法科大学院の定員を削減せよと主張しています。
「
日弁連による「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」」
法科大学院の統廃合は、「実績」のある法科大学院と、地方の法科大学院の「利害」が対立するものになります。
しかし、この根底には法科大学院制度はどうしても維持するんだという結論しか見えてきません。
何故、法科大学院制度なのか、という根本問題については触れないままで(当初の理念が大事だということが声高に叫ばれるだけで、それ以上に語れることはありません。その理念も間違ったものです。「
法曹養成制度に関する特集(弁護士会会報)」)、法科大学院制度を守ることだけが自己目的化されています。
問題になる法曹人口問題も、この法曹養成検討会議の議論を見ていると、現状の2000名維持ということでの取りまとめが予想されますが、それに見合った定員に削減したところで、事態が改善されることはありません。
繰り返しになりますが、
1000万円の高コストを掛けてまで求める職種ではない、1000万円というコストが参入障壁になっているという根本問題が全く理解されていないところが、この法曹養成検討会議の限界を示しています。
仮に、司法試験年間合格者数を需要に見合った程度にまで削減し、1000名程度とするのであれば、もはや法科大学院課程修了を受験要件とする必然性はなく(1000名であれば司法試験による選抜機能は維持できます。)、しかも大幅な定員の削減が求められることになりますから、適正配置などは不可能になります。
法科大学院課程修了を受験要件とするならば、1000万円という高コストが参入障壁になっている現実を改善することはできません。これは合格率の問題ではありません。
合格後の収入が1000万円のコストに見合わない限りは、間違いなく敬遠されます。(現在、奨学金の返済に行き詰まり、その取り立てが社会問題になってきています。)
このままの現状を放置すれば、法曹志望者の激減により、法曹制度そのものが崩壊しかねない状況ですから、法曹志望者の回復ということからいうならば、
司法試験年間合格者数を1000名にまで削減
司法試験受験要件から法科大学院課程修了を外す これを行わない限りは、志望者の回復はあり得ません。
法曹養成検討会議のような法科大学院制度に利権を持った人たちの集まりでは、まともな改善案が出てくることはありません。
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