札幌地方裁判所・高等裁判所では、2013年3月1日から来庁者に対する手荷物検査を始めました。
「
札幌高等・地方裁判所庁舎(本館・別館)における入庁者の手荷物検査の実施について」
何と来庁者に対し、手荷物を開けさせ、その中を検査するというのです。その後、金属探知機を利用した検査まで行うというのです。
「まず、手荷物の中を見せろ!」 これが来庁者に対する対応です。
何故、このようなことが行われなければならないのでしょうか。
全国でも東京地裁に続いて2例目となります。
東京地裁は、オウム真理教の事件(実際に長野地裁では裁判官庁舎が狙われました。)を契機に金属探知機を利用した検査が行われるようになりました。東京地裁は今でも続けています。
札幌弁護士会に対しては、札幌地裁、札幌高裁から、このような手荷物検査を実施するという「通告」を受けたそうです。
まさに問答無用(但し、弁護士は、記章をつけていれば検査不要)。
このような手荷物検査を実施する理由、根拠が本当にあるのでしょうか。
札幌高裁の言い分
「
札幌の庁舎では職員や事件当事者に対する暴力行為などが繰り返し起こっており、利用者の安全を確保することが目的」(北海道新聞2013年2月28日朝刊)
2005年9月、札幌高裁では、訴訟当事者が法廷で裁判官を包丁で殺そうした事件がありました。
そのような事件の後、裁判所では、怪しいと思われる事件について個別に法廷に入る際に金属探知機のゲートをくぐるよう求めることがありました。
私もとある事件(高裁事件)で、書記官から「傍聴人の中に非常に怪しい動きをしている人がいる。裁判官が金属探知機を使うと言っている。」と言ってきたことがあり、同じ弁護団のメンバーが抗議をしていましたが(なぜなら、その怪しい動きをしていたと言われた方は、支援者の1人であり、顔見知りだったからです。)、結局、裁判が始まる時刻になっても開始されず、金属探知機は使用され、その後に開廷となりました。
この時の金属探知機の利用は、理不尽ではありましたが、先の殺人未遂事件があった後でもあり、裁判所が金属探知機を用いたいと言ってきた理由は理解できます。これを伝えてきた書記官の声もうわずっていました。本当に怖かったのでしょう。個別具体的な場面に限っての利用でした。
しかし、
今回、札幌地裁、高裁が来庁者全員に対し、行う手荷物検査は期限も決められていなければ対象も限定されていません。 最近においても、裁判官や書記官が狙われたという事件は聞いたことがありませんし、報道もありません。
一般的には、むしろ離婚事件において、DV夫による事件の方がよほど現実味があり、その現場になるのは家庭裁判所であり、庁舎は別です。
他の裁判所で実施するという情報もありません。札幌だけが、良からぬ人ばかりが来庁しているということになりますが、そうとも思えません。
このような手荷物検査を実施することは、来庁者に来るなと言っているようなものです。
裁判所は、訴訟当事者だけが来るところではありません。裁判は公開され、それは誰もが傍聴できるということになっています。それは憲法の要請でもあり、司法に対する国民の監視という意味があります。来庁者を遠ざけるということは、国民を遠ざけるという意味であり、裁判の公開原則からみても問題です。
ましてや、手荷物検査など無礼にもほどがあります。金属探知機ではなく、手荷物の中を見せろですよ。プライバシー侵害も甚だしいものです。
時代錯誤も甚だしく、札幌地裁・高裁はこのような手荷物検査は直ちに中止すべきです。
ところで、私がこのような手荷物検査を不快に思うのは、プライバシーの問題だけではありません。
国家権力が、国民を監視する一形態だからです。
その意味では東京地裁も同様です。札幌地裁の隣にある第三合同庁舎(検察庁や防衛施設庁、入国管理局など)では入場者の管理が行われていますが、これも同様です。やり方が札幌地裁・高裁のような手荷物検査ではないから良いというものではありません。
このような検査をする必要があるのかどうか、東京地裁もオウム真理教の事件があったからということですが、今なお続けられています。
オウム真理教の事件が理由ではないということです。
町中で、「特別警戒実施中」という札を見ることがありますが、あれと同じです。国民を絶えず、警戒中という状況に置くことによって、国民に対する治安対策を行っているということです。
このようなことをしても、国民の安全は守られません。むしろ、
知らず知らずのうちにお互いに疑心暗鬼となり、お互いを監視し合うという状況に陥らされてしまいます。 本来、必要のない手荷物検査を実施するということは(
実施しても効果がないと言ってもよいかもしれません。)、国民間の疑心暗鬼を煽る役割しか果たしません。
治安が悪化しないにも関わらず、凶悪犯罪が増えたと言っては警備強化の口実作りを行い、防犯カメラのようなものを設置していく、そして国民の行動を監視していくのが治安政策です。
これらは、共通番号制度(マイナンバー)と同じであり、国民監視という点で非常に問題です。
「
共通番号制度の問題点」
札幌地裁・高裁は、このような手荷物検査は直ちに中止すべきです。
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