警察庁が公表した道路交通法改正試案に対し、日弁連が意見書を出しています。
「道路交通法改正試案」に対する意見 私は、この日弁連の意見に概ね賛成ですが、無免許運転に関する意見については、疑問がないわけではありません。
警察庁の無免許運転罪の試案は、
現行「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」を「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に刑罰を引き上げるというものです。
日弁連意見書は以下の理由でこれに反対しています。
「
無免許運転にも,一度も免許を取得したことがない者と,免許を取得したこ
とがあるが失効した者では,その悪質性には違いがあると考えられる。」
「
2007年(平成19年)9月に施行された改正道路交通法において,酒気帯び運転罪の法定刑が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされているが,交通事故につながる危険性が定型的に高い酒気帯び運転と,そのようには一概にはいえない無免許運転行為の法定刑を酒気帯び運転の法定刑と同一に引き上げるべき合理性はない。」
それ以外にも述べられていますが、おおよそこの部分に集約できると思われます。
さて、この日弁連意見書の根底にあるのは、免許というものを技能・交通ルールの修得の点に偏重させていはいないでしょうか。
運転免許は、自動車を運転することの許可証であり、技能及び交通ルールの修得があることは運転を許可することの大前提ですが、それだけはありません。
(最近のオートマチック車であれば、車を動かすこと自体は非常に簡単です。交通ルールも、もともと運転免許の学科試験が二者択一の非常に簡単な問題ですから、実際の場面では、ほとんど役に立たないレベル(右折を始めてからウインカーをつける人も少なくありませんが、ウインカーをつけることの意味がわかっていないから、そのようなレベルの運転になるのでしょう。どのタイミングでウインカーをつけなければならないのかは学科試験でも出題されているのですけれど。答えは最後に載せました。)なので、運転免許取得水準自体が低く、一度も免許を取ったことがない人とどの程度の差があるのかとも言えます。もっとも、学科がどうしても合格できず、外国に行って国際免許を取得してくるという人もいるということを聞くと、それでも差はあるとういことなのでしょうか。)
飲酒運転など悪質な運転に対しては免許取消などの処分も科せられてるわけで、この場合にも、「運転を許可しない。」(正確には許可を取り消す)ということであって、このような場合に無免許で運転をすることは、技能がない場合に比べたとしても負けず劣らず悪質と言えます。
車は走る凶器であるということを十分に認識すべきです。許可のない者が扱うことは断じて許されないということでもあります。 免許取消は、運転不適格者の烙印を押されたのと同じなのですから、やはり、重罰を科することには大きな意味があると言えます。
飲酒運転の罰則が大幅に強化されたのであれば、それを担保する無免許運転罪についても大幅に罰則を強化するのは合理的です。
免許取消ではなく、失効者については、確かに免許取消案件よりは悪質性は低いかもしれません。
この点は情状で区別するのか、法定刑で最初から区別してしまうのかという問題はありますが、一律に悪質とまでは言えないので、何らかの対処が必要です。この視点からは、日弁連の意見書にも合理性があり、結論的には警察庁の試案は再検討が必要でしょう。
むしろ、これを機に車優先社会の転換が求められていると言えます。
「
危険運転致死傷罪に問題があるのか、車優先社会を転換せよ」
これまで、自動車運転に関する罰則が軽かったのは、車優先社会の思想そのものではなかったのかと思わざるを得ません。
自動車企業の利益も関わっていたことでしょう。
無免許運転罪の罰則強化だけでは足りません。運転免許取得の技能水準の引き上げ、免許停止、取消についてもさらに強化する必要があります。
それらを一体に改革してこそ意味があります。
参考 法文形式ですが、
教習所の教科書はきちんと書かれています。
道路交通法53条1項 車両(自転車以外の軽車両を除く。第三項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
2項 前項の合図を行なう時期及び合図の方法について必要な事項は、政令で定める。
道路交通法施行令第21条 法第53条第1項に規定する合図を行なう時期及び合図の方法は、次の表に掲げるとおりとする。
右折し、又は転回するとき。
その行為をしようとする地点(交差点において右折する場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から30メートル手前の地点に達したとき。
同一方向に進行しながら進路を右方に変えるとき。
その行為をしようとする時の3秒前のとき。
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