自動車依存社会のつけ 高齢者による事故

　現代社会では移動手段は自動車が主流となっていますが、元々、それは政策的なものであり、自動車産業を潤すことがその背景にあります。
　道路行政は、必要性があるのかどうかもわからないままにきれいになっていきました。
　しかし、他方で安全対策は置き去りです。
　交通戦争と言われていた時期に比べれば死亡者数自体は減少に向かっていますが、それでも年間4,400人という死者数は、この現代においては驚異的な数字です。しかも重傷後に死亡した人の数は含まれていませんし、それ以上に重傷者の数は多くいます。
　未だに4,400人もの人々が落とさなくていい命を落としたということでもあります。
　先般、起きた若者による自動車事故は、未だに高級車だ、スポーツカーだなんて言っている時代錯誤からくるものであり問題外なのですが（繰り返される自動車による事故とスポーツカー）、それとは別に高齢者の運転による事故もやはり見過ごすことのできない問題です。
　先日も高齢者による逆送により多くの負傷者を出したと報じられています。
「軽乗用車が一方通行逆走、７人けが　東京・江戸川」（産経2013年9月29日）

　高速道路の逆走と異なり、町中の一方通行路の逆走です。人が飛び出してきたりすることなどは当然に認識した上での運転でなければならないはずであり、ブレーキ痕が全くないということ自体に問題の根の深さを感じさせます。
　高齢者の運転では、70歳以上になれば紅葉マークをつけることが義務づけられており、周囲の自動車は、幅寄せや無理な割り込みが禁止されています。高齢者の運転に対する配慮ということになりますが、果たして、それだけでよいのかということも問われます。
　対自動車関係では、周囲の車の配慮によって高齢者による運転が可能だったとしても、対歩行者との関係では、歩行者が高齢者の運転の自動車に配慮してくれることはありません。
　高齢者といえども自動車を運転する以上は、歩行者に配慮しなければならない側なのです。
　そのためには、とっさの時には急ブレーキを踏み、人に接触することを避けるだけの技量がなければなりません。運転者がとっさの危機に対応できないということも実は非常に大きな問題なのです。

　元々、教習所で習う運転技術は動かすことと止まれることであって、危機的場面に遭遇した場合は全く想定した訓練は全くありません。要は止まるための訓練は全く皆無です。これ自体が非常に問題です。
「危険運転致死傷罪に問題があるのか、車優先社会を転換せよ」
　運動能力が低下したのであれば車を運転してはならないし、そもそも危機的状況に耐えうる能力がなければ車の免許を与えること自体が間違ったことなのです。
　つい先日も自動車を運転していたら、前に高齢者が運転する車（紅葉マークはついていませんでした。）があり、40キロ規制の道路を30キロで走行していました。当然、その後は車の列が出来上がります（二車線ではないので追い越しも不可能。）。
　その車自体は道路上では「安全」かもしれませんが、そのような速度であれば急な事態（子どもの飛び出し）に急制動が可能なのでしょうか。私にはそのようには思えません。

　もっとも高齢者から車を取り上げたら高齢者の移動手段はどのように確保されるべきなのかという問題があります。

　元々、高齢者による運転の問題が放置されてきた原因は車を売れることを最優先してきた車優先社会があり、その反面として公共交通機関網をずたずたにしてきたということがあります。
「ＪＲ北海道の危機の根源は労働組合潰し」
　地方（過疎地）の疲弊に拍車を掛けてきたこの地方切り捨て政策と、都市部においても交通弱者に対する配慮がないままに自動車優先政策を推し進めてきた結果でもあります。
　高齢者が車を利用しなくても移動可能な社会こそ目指すべき交通政策です。
　そうなれば高齢者も快く免許を返上できるでしょう。
　また車に価値観を置いた社会の発想の転換こそ必要なことなのです。


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