君が代斉唱 大阪府教委の口元チェックは明らかな憲法違反！

　先般、大阪府教育長の中原徹氏の君が代斉唱口元チェックの「指令」が各学校（学校長）に出されました。
　「口元チェックの中原徹府教育長や「維新」の権力を笠に着た人たち」

　このような君が代を斉唱しているかどうかまで監視し、それを報告させるなどというのは明らかに憲法違反です。

　先般、弁護士ドットコムでこの口元チェックに関する記事を書きました。
　「大阪府の「君が代」斉唱チェックはやりすぎ？ 弁護士に聞いた判断のポイント」（弁護士ドットコム）

　起立を命じることさえ、最高裁はその懲戒処分を戒告に止めているのですが、それがさらに「斉唱」にまで及べば、最高裁の判断基準からいっても憲法違反になることは明らかなこことです。

　ところで、仮にそれが府教委に対する管理職の「報告」に止まり、懲戒処分（戒告）を行わなかったとしたらどうでしょうか。
　その監視行為が憲法違反になることに変わりありません。
　以前、神奈川県教育委員会が起立していない教員を報告させ、その情報を収集していたということがありました。
「「君が代斉唱で起立しない教員の名前」 教育委員会が集めるのは許される？」（弁護士ドットコム）
　これについては最高裁は、思想良心の自由の侵害には当たらないとしています。
　単純化していえば、懲戒処分には至っていないからです。
　しかし、最高裁は、公的権力が情報収集することの側面を看過しています。
　公的機関が君が代に対してどのような態度を取ったのかという公安情報を収集すること自体、国家による思想統制につながるということ、常に権力によって監視されているということの重大性について判断がなされていません。

　他方で、大阪府教委が君が代斉唱のチェックを行い、それを報告させた場合ですが、最高裁判決の基準によっても個々人の思想への制約の程度が強くなることは明らかです。
　仮にそれに基づく懲戒処分がなされなかったとしても「報告するぞ」という圧力が加えることによって斉唱までさせるというのですから、その侵害の度合いは甚だしく、そのような口元チェックだけで憲法違反というべきです。

　もっとも現実には大阪府教委の場合には、「報告」では済まないでしょう。
　中原徹教育長の発想は、「起立」及び「斉唱」という職務命令の中には、声に出して歌うことまで含まれるという解釈だからです。
「起立斉唱のルールを作ったのは議会で、私は教育委員会の指示に従っただけ。ルールを守らなくてもいいというのは、教員の世界の古い慣習。過激すぎるというのは感情論だ。」（国歌不斉唱　口元「監視」）

　口元の監視は、「起立斉唱」のルールに従っただけというのが中原教育長の持論なのです。
　中原氏が拠り所ににしているのが、この条例
「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する 条例」（2011年6月13日）
　そして、大阪では、橋下前大阪府知事がことあるごとに、君が代で起立しない教員については「クビ」という言葉を繰り返していました。
　最高裁判決が2012年1月に出され、懲戒処分に関する一定の基準が示された後もその基準に明らかに反するような処分が大阪では行われています。
「不起立９教諭を懲戒処分　体罰４教諭も　大阪府教委」（産経2013年3月12日）
「男性教諭８人を戒告処分にし、平成２４年春の入学式でも不起立だった女性教諭（６０）を減給１０分の１（１カ月）の懲戒処分にした。起立斉唱を定めた「君が代起立条例」制定後、減給処分は初めて。」

「国歌斉唱不起立　処分不服で府を提訴　大阪地裁」（産経2013年9月24日）
「奥野さんは昨春の卒業式で国歌斉唱時に起立せず府教委から戒告処分を受けていたが、今春も同様に起立しなかったところ、前年の不起立も考慮して減給１０分の１（１カ月）の懲戒処分を受けた。」

　大阪府教委のこのような懲戒権の濫用を見る限り、大阪における口元チェックは、単なる報告に留まらない可能性が高く、現場の教員も同じような認識だと思われます。教員に対する力による統制ばかりが目立つようでは、教育現場が荒廃していくことは必至なのです。


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